いやー思うんですよ。こんな曲、クソです。クソ。バチクソにクソ曲ですよ。こんな曲。

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で、なんでこの曲が「クソ」と思うのか。

それをこの記事で書いていきたい。

朝ドラというタイアップでここまで押し出してくる我の強さ

この歌の1番の歌詞、わかる人が聞いたらわかると思うんだけれど、星野源の過去曲に登場してきたフレーズや、過去曲のタイトルばかりが使われている。

おはよう⇒『Crazy Crazy』
夢を⇒『夢の外へ』
湯気⇒『湯気』
生活⇒『生活』(SAKEROCK)

最初のフレーズだけで、これである。

本人も意図的に過去曲のタイトルやフレーズを盛り込んだと語っているが、天下の朝ドラのタイアップで、己の自己紹介をやってやろうと企む星野源の貪欲さが、まずクソである。

で、それは歌詞だけに留まらず、音にも反映されている。

イントロで鳴らされるマリンバはSAKEROCK時代の星野源を想起させるし、一番で鳴らされるエレキギターの音は、「恋」とかで聞こえてくる、星野源のアレンジでよく出てくるタイプの感触で、この辺りも過去の引用を意識しているのだと思う。

歌詞だけでなく、音でも、朝ドラというタイアップ作品でありながら、我を出しまくる星野源。

いやクソですよ。クソ。タイアップをなんだと思ってるんだと言ってやりたい。

そんなことを思って「アイデア」のMVみたら、マジでコーヒー吹きました。

我が出てるどころの話じゃねえぞ、と。

この歌、冒頭は、赤のパネル⇒黄色のパネル⇒ピンクのパネル⇒青色のパネルと星野源が移動していくんだけれど、これって星野源の近年の過去曲のジャケットの色になぞらえている。

『YELLOW DANCER』 ⇒『恋』⇒ 『Family Song』⇒「ドラえもん」という流れだ。

これは俺の歌だ。俺の過去作のアイデアを散りばめた歌なんだ。そういうことを、歌詞、音、映像全ての要素で訴えてくるわけだ。

ここまでくると、凄すぎて言葉が出てこない。

ちなみに朝ドラの主題歌って厳密にOA尺が決まっているので、イントロからラストまでの尺は決められたものにピッタリと合わせないといけないわけだけど、我を貫く星野源は、イントロもアウトロも何もかもをしっかりいれる曲を作ってしまったため、OA尺を大きくオーバーするものに仕上げてしまった。

当然ながら、全部を盛り込みつつも尺内に曲を収めようとするのは限界がある。

そんななかで曲を尺内に収める裏ワザとして生み出されたのが、朝ドラ主題歌のくせに異常に速いあのビート感だったのである。

つまり、あのテンポになったのも星野源が我を貫いたからというわけで。

いやーすごいよ。マジで。

ところで、「おはよう 世の中」という最初の1行目のリズム感もすごく面白い。

「お/はよう/よの/なか」というように、フレーズごとの休符の取り方が一般的なそれと比べて変わったもので、しかもひとつひとつの休符をたっぷり使う、すごく緩急をつけたものになっている。

バンドの演奏もこの歌と合わせるように音を奏でるので、余白の大胆さと爆撃のようなドラムが象徴的に響くAメロになっている。

そして、Aメロが休符を大胆に使うからこそ、Bメロのテンポダウン感がこの曲にアクセントを与え(おそらくこのテンポ感はアニソンの文脈を意識していると思われる)、サビの疾走感がより強調されるようにもなっている。

マジでこの歌、1番だけでも計算されすぎでしょ?っていう話で。

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そんな計算されまくった一番が前座になっているのがクソ

もう散々各所で語られていることだが、2番に入ると、途端にアレンジが変わる。

演奏していたバンドの生音は撤退して、Future Bass的なアレンジに変わり、STUTSをフィーチャーしたビートと、アナログ・シンセが音を埋めてくる。

星野源の「過去」にスポットを当てまくった1番とうって変わって、2番では今までの星野源の歌になかったような、新しい音を披露するわけだ。

つまり、2番で星野源の未来を見せる流れになっている。

アレンジは大胆に変えているけれど、違和感なくそれを歌に溶け込ませているところもニクいが、アレンジを変えたことに意味を持たせるべく、歌詞を一番と対比して綺麗に書き分けているところもニクい。(そして、上手い)

冒頭は、同じおはようという単語で始まり、次の「真夜中」というフレーズをきっかけにして、負の感情にスポットを当てるような歌詞展開が始まる。

ネガティブなワードをチラつかせ、内向的なにおいのするドロドロとした描写を鮮やかに行い、Bメロラストの「にこやかに 中指を」というフレーズで、この感情をピークに持っていく。

ここまで振り切った変化を行うことで、あれほどテクニカルに表現していたはずの1番ですら、ただの「お膳立て」に早変わりさせてしまうのだ。こんなんクソでしょ?

で、Cメロの弾き語りパートとラストのドラを鳴らして終わるエンドもなかなかにエグくて、マジでエグすぎてクソだ!って言葉しか出てこなくなる。(この展開にも全て意味を持たせているところが凄い)

要は、この歌は最初から最後まで一切手を抜いていないし、不要なものは何ひとつないし、変化をさせまくったり大胆なアレンジを施しているのに、全てが「計算」で行われ、ちゃんと全ての展開に意味と一貫性を持たせているから、すごく聴いていて気持ち良いし、感動までさせられるわけである。クソでしょ?こんなん?

なにより「アイデア」をどういうつもりで作ったのか?という星野源の想いみたいなものが、きっちりMVで表現されているところもすごい。

MVを見てみると、登場人物全員が喪服をきており、星野源のアイデアがひとつひとつ成仏されていき、ラストの白のバックで、新しい自分に生まれ変わるという、というコンセプトがあることがわかる。

ちなみにMVのダンスの振付をしているのは三浦大知なのだが、三浦大知は気を利かせて、ちゃんとダンスのなかに『香典を出す、お焼香、出棺、火葬場に棺を入れる、骨を拾う』という流れを振り付けの中に組み込んでいるらしい。

マジかよ。ダンスすらも作品の世界観を説明するエッセンスになっているのかよ。エグいよエグい。

ってか、歌詞、音、映像、何から何まで全要素が有機的に結び付き、その作品の世界観を掘り下げていくそれが何よりもエグい。

しかもそれをタイアップソング、しかもよりによって朝ドラという超お堅いタイアップのなかで実現させてしまうのだ。クソでしょ?こんなん?

まとめ

なーんて語ってたら、「アイデア」はマジで文句のつけようのない快作であることだけがわかったし、今年リリースした「ドラえもん」でも十分にエグかったのに、「アイデア」はそんなエグい「ドラえもん」すらも簡単に超えてしまうような快作であるというところが、もうクソだよなーって思う。

つまり、アイデアってクッッッッッソ名曲だよなーという、そういう話。

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