YUKIの「さよならバイスタンダー」について書いてみたい。

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歌詞を考察するうえでの豆知識

まず、この歌はアニメの「3月のライオン」のエンディングとして起用されており、どうやらそのタイアップを受けてこの歌詞は書かれたとのこと。

また、この歌詞を書くにあたって、YUKIは原作のマンガを読み直したとのことで、マンガの主人公の桐山零に色々触発される形で歌詞は書かれていったのだとか。

とはいえ、アニメの作品をただなぞるだけのような歌詞を書いたのではなく、むしろ桐山零に触発されたことで、YUKIは自分の伝えたいこと、メッセージにしたいことが溢れ出たのだという。

むしろ、この歌は自分の言葉が直球になったと語っているのだ。

ちなみに「バイスタンダー」とは傍観者という意味の言葉だが、当初、YUKIはハナモゲラ語という、なんちゃって外国語で、ラララーみたいな感じで歌を歌っているときに出てきた言葉だそうで、意味ではなく音に導かれて「バイスタンダー」という言葉は生まれたとのこと。

ただ、「傍観者」いう意味を知ってからも、今、自分が伝えたいメッセージとこの言葉はリンクしており、むしろ生まれるべくして生まれた言葉であると実感しながら、この言葉をそのまま使用することに決めたのである。

そんなことも踏まえながら歌詞をみていきたい。

歌詞について考察

作詞:YUKI
作曲:飛内将大

川沿いを走る電車の音~あの娘がほしい

前半は景色を想起させるフレーズが並ぶ。

この歌詞の世界は、向日葵がうつむくような季節と、空が夕焼けになる時間帯であることがわかる。

そして、線路に近い川沿いを歩いている僕と君の姿を想像しながら、「ありがとう」の言葉で泣きそうになる僕の気持ちに思いを馳せることになる。

あの娘=君、と考えてみると、

あの娘が欲しいということは、僕は君のことが欲しいということだろう。

なのに、君から僕に伝えれる言葉は「ありがとう」という友達を相手にしている言葉だった。

それに傷ついてしまうということか。

冷蔵庫というのは比喩で、心の冷たいところというニュアンスであり、要は悲しむという感情は自分の温度の通わない場所に隠してしまったという感じなのだろう。

はないちもんめ、というフレーズはYUKIらしいが、はないちもんめという遊びは人を奪い合いの遊びである。

もしかしたら君はいま、僕以外の誰かのものなのかもしれない。

さよならバイスタンダー~あの娘に誓うよ

傍観者であることにさよならするという。

つまり、僕は当事者になり、何事も自分で道を決めて、自分の意志で進んでいくということだ。

未来は天国か地獄かわからないけれど、とりあえず君と笑って未来を一緒に生きたいというわけである。

本当はこわいけれど、誇らしさとか願いとか希望をもって、自分の決めた道を進むわけだ。

君が欲しいという感情も、傍観者をやめた僕だからこそ溢れ出てきた思いなのかもしれない。

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2番の歌詞をみてみよう。

錆びついて壊れてるシェルター~あの娘じゃあわからん

シェルターとは比喩だろう。

夢から逃げる場所がシェルターなのだろうが、それは錆びて壊れているという。

シェルターに入るということはバイスタンダーになるということだ。

けれど、それはできない。

隠れても頭隠して尻隠さずのように、要は上手く隠れることすらできないというわけである。

もちろん、夢を追うのは辛いことばかりだ。

才能の差を前にして悔しい思いをするし、汗が流れるほどの努力を必要とするし、それでも勝てるかはわからない。

でも、負けて悔しいという思いは宿る。

はないちもんめの歌詞になぞらえながら、その思いが歌われるわけだ。

はないちもんめは、取る側になったあとは取られる側にまわる。

やられてもやりかえすチャンスは訪れるから、その契機を待て、という話なのかもしれない。

さよならバイスタンダー~僕に誓うよ

当事者になるということは、辛いこともたくさんあるし、逃げ出したくなることもたくさんあるけれど、逃げはしないことをここで宣言するわけだ。

その足取りは無邪気なものであり、つたないように見えるかもしれないけれど、全部自分で決めて進むのだ。

いつか夜は明けるのだから。

大きな声で叫んで、また進め、という話である。

そのために、まずは自分で自分に誓えと歌う。

さよならバイスタンダー~誓うよ

僕の中で意志が固まれば、最後に伝えるのは君となる。

夢というのは、色んな類があるが、「あの娘を手に入れたい」のもひとつの大きな夢というわけだ。

守るよ、という誓い。

僕の全てを捧げる、という誓い。

君の人生の傍観者ではなくなって、君の人生の当事者になるという決心。

それは「好き」とか「愛してる」とか、そんな自分の思いを伝えることとはまったく違う。

覚悟の言葉なのだ。

そんな覚悟についてYUKIは歌いたかったのだろうと僕は思うのである。

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