マカロニえんぴつの「悲しみはバスに乗って」、”次”の方向に向かいすぎな件
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今、若者に人気のバンドと言えば誰?という切り口で、バンドのことをヒアリングした場合、どのように答えるだろうか?
訊ねた人の数だけ、答えがあるとは思う。
「若者」と言っても、色んなペルソナを想定することができるし、「若者が聴いている音楽」の解像度だって人によってまったく異なるからだ。
でも、ライトな音楽好きでも理解できる”ベタ”な回答を行おうとすれば、名前が出てくるバンドはある程度は範囲を絞り込めると思う。
そういう前提上でこの質問に向き合うとすれば、おそらくよく出てくるバンドのひとつに、マカロニえんぴつが挙がってくると思うのだ。
確かにマカロニえんぴつは若者に絶大な人気を誇るバンドだからだ。
ヒット曲をいくつか出した結果、知名度も高くなったので、ライトなバンド好きでもその存在を認知している人は多いことだろう。
今、若者に人気のバンドと言えば誰?の答えとして、マカロニえんぴつの名前を挙げる人はきっと多いと思う。
ただ、「若者に人気のバンド」という切り口でバンド名を挙げる場合、ポジティブな意味合いも込めているケースも多い一方で、紋切り的な型に嵌めて答えているケースもある。
言ってしまえば、大きな枠組みでみていくと、今のバンドシーンにも何かしらの流行りがある。
で、その流行りの枠組みの中にいるバンドのひとつというニュアンスで答える人も、一定数いるように思うからだ。
確かに、人気と言えるバンドには、ある種の似たような特徴がある、とも捉えることができる。
ちなみに、これは今のシーンに限った話ではなく、昔からずっとあることである。
音楽メディアや音楽好きの多くは、少しでも話の見通しをよくするために、意図的に流行っているバンドの”共通項”を探り、そこからシーンを語ろうとすることがよくあるからだ。
まあ、この記事ではその流行の部分を明言したり、深掘りしたりは特にしないが、なんとなく、最近の流行りのバンドってこういうところがあって〜の認識を持っている人は一定数いるのではないかと思うし、人によってはマカロニえんぴつの音楽に、そういう要素を感じる人もいるのかもしれない、とは思う。
そして、その記事ではあえてそういう前提を踏まえたうえで、言葉を紡いでいきたい。
というのも、確かに今のバンドシーンに”ある種の流行”があるとして、マカロニえんぴつもそういう流行りの中で語ることができるバンドなのかもしれないとして、改めて、マカロニえんぴつって、そういう流行りとか括りでは語ることができない奥行きというか、奥ゆかしというか、そういうものがあるバンドだよなーと思うわけだ。
「悲しみはバスに乗って」という楽曲を聴いて、改めてそのことを感じた、というのがこの記事の話の始まり。
「悲しみはバスに乗って」の話
なぜそう感じたのかというと、サウンドの空気感がこれまでの楽曲と異なっているように感じたからだ。
これまでのマカロニえんぴつのサウンドは、”鍵盤も際立つギターロックバンド”な色合いが強いアレンジだった気がする。
でも、今作はこれまでのバンド像を意図的に解体する心地のサウンドで構成されている印象なのだ
鍵盤が紡ぐ和音の構成やリズムに、まず違いを覚えた。
とぅ、とぅ、とぅ・・・!
言葉にすると、こんな感じのリズムを鍵盤の和音が紡ぐんだけど、このリズムと音色がこれまでのマカロニえんぴつの楽曲とは違う色合いだったのである。
さらには、楽曲の土台を固めるベースや打楽器のリズムのタッチにも、そういう変化の色合いを強く感じた。
打ち込みっぽい空気感もあるし、でも、単に打ち込んでリズムを刻んでいるわけでもない音色もあって、端的にまとめてしまうと、これまでとは違うアレンジで楽曲世界を構築しているように感じたのだ。
でも、まったく違うジャンルにチャレンジすることで、全然違う音楽を生み出す・・・というわけではなくて、サビに至る頃には良い意味で「あ、これ、マカロニえんぴつの音楽だ」という安心感とGOODミュージックな色合いを感じさせる構成にもなっているのもポイントで。
穏やかなタッチなんだけど、めっちゃ攻めている歌であるし、めっちゃ攻めているんだけど、極端に枠外に出ているわけでもない温度感。
「悲しみはバスに乗って」のこの絶妙な立ち位置に、ゾクゾクする自分がいたのだ。
一見すると「流行」の範囲で括れそうなバンドの立ち位置なのに、生み出す音楽はまったく流行の範囲では括れない紛いない独自路線。
しかも、その独自路線はアンチ・流行とかではなく、きっちりマカロニえんぴつの音楽の中に内在したものであり、これまでのマカロニえんぴつの音楽が好きな人に刺さる立ち位置にもなっている感じなのが、自分的にぐっときたのである。
改めて、はっとりのソングライティングのセンスに脱帽する一曲になっていったのだった。
感覚としては初期のMr.Childrenが王道の恋愛ソングで若者の心をがっちり掴んでおり、恋愛ソングを歌うバンドというパブリックなイメージを与えつつも、気がつくと恋愛ソングのフリしたゴリゴリの哲学的な歌を歌っていた・・・みたいな変遷を感じるというか。
別にマカロニえんぴつの今作が哲学的とか、そういう話ではないんだけど、パブリックなイメージがある一方で、生み出す音楽はどんどん次のフェーズに進めつつ、でも、パブリックなイメージを持っている人も置いていかない進化を感じさせてくれた・・・という感じなのである、自分的に。
まとめに替えて
ということもあって、今度リリースされるアルバム「大人の涙」がどのような作品になるのか、楽しみで仕方がない自分。
・・・だし、マカロニえんぴつはここから更に飛躍するバンドになるんだろうなあと思う。
日本のバンド、しかも特定のジャンルのバンドだけを「参照」するバンドも多い中で、縦軸にも横軸にもアンテナを広げながらアウトプットを続けるバンドというところも魅力のひとつだし、ここからさらに楽曲の幅の広げていくんだろうなーとも思うし、そこも要注目だよなーと感じる。
なお、相変わらず歌詞や言葉選びも秀逸なんだけど、その辺りはこの記事ではあえて一切触れずに締めようと思う次第。
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