前説

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感想を書こうとしてすっかり遅くなっていた星野源の「折り合い」。

色々なことが重なり、政治的なトピックとして語られることにもなってしまった星野源。

そのトピックに引きずられながら「折り合い」を語る人も多い気がする。

確かにこのタイミングで「折り合い」というタイトルの歌を発表することを考えると、どうしても色んなことを考えてしまうわけだけど、この歌はそういう文脈だけで語ってしまうのは勿体ない一曲だと思う。

まあ、そもそも内実はバナナマンの日村さんの隠れ食いのエピソードが根底にあるのだから、この歌から無駄に「政治性」を読み取ろうとしている人は野暮でしかないんだけどね。

兎にも角にも歌の中で紡がれる物語なんて別にして、この歌はよりグローバル展開に舵を切った今の星野源ならではの楽曲であるように思うわけだ。

この記事では、そのことを書いていきたい。

本編

音の質感が絶妙

ひとつひとつの音の質感が妙にレトロである。

ベース音も打楽器の音も、その音の質感が絶妙だよなーと思う。

この歌が星野源の新境地感であるのは、各楽器の音の質感を巧みにコントロールしているからのように思うわけだ。

一般的な日本のポップスとは違う質感であることがわかるし、こういう質感に落としこんだのは、より星野源が自身の作品に対してグローバルな意識を強めたからのように思う。

様々なビックアーティストとのコラボ、海外進出も含めたサブスクの解禁など、完全により外向きに音楽を発していく意識を持っている今の星野源ならではの、アレンジであるように思うわけだ。

音の質感だけで、そういうメッセージを投じれてしまうところに、この歌の凄さが宿っているわけだ。

ラップをする

最近の星野源の作品はラップと距離が近いものが多い。

「折り合い」では、星野源が積極的にラップを行っているわけだけど、日本的な歌メロの殻を破るようなアプローチを節々に感じるわけだ。

メロディーラインだけで言えば、日本のライトな音楽層の評判はとりあえず無視して、自分が音楽的に大事にしたいことを優先しているような心意気を作品から感じるわけだけど、このアーティストであることに妥協しない感じがとても良い。

細かいところにこだわるし、売れ線の構造をなぞるだけの作品はつくらないぜ、という星野源の熱い闘志を作品から感じるわけである。

そういうクレバーなんだけど、ある種の熱さも楽曲から感じさせるところが、とても良いなーと思う。

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難しいけれど、難しくない

グローバルな意識が強い作風なので、音楽的な分析をしようとする海外の音楽を参照して語る方がよりクリアにこの作品が見えてくると思う。

言い方はよくないかもしれないが、この作品はある種の意識の高さも感じてしまうわけである。

でも、そういう練りに練ったサウンドを構築しているにも関わらず、歌のベースにあるのはバナナマンの日村のエピソードという、自分の周りの小さなエピソードが発端になっている感じがとても良い。

素朴だけど、クレバーである。

自分たちの距離感にある「生活」を歌っているんだけど、トータルの音楽性はとても深さがある。

そういう星野源ならではの凄さがこの歌には凝縮されているように思うのだ。

難しく語ることもできるんだけど、根底にあるのは別に難しさではないということ。

こういう眼差しは星野源ならではだよなーと思う。

まとめ

というわけで、「折り合い」って実は思っている以上に素朴でシンプルな曲なんだろうなーと思うのだ。

でも、そういう素朴な歌にも深みを作ることができる。

そういう凄さがこの歌にはあるというわけである。

オタク的な楽しみ方もできるし、もっとカジュアルに聴くこともできる。

聞き手みんなを楽しませようとする、星野源ならではのエンタメ精神が炸裂したような一曲である。

個人的には、そう思うのである。

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