前説

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今年も色々ライブに行ったんだけど、先月にいった崎山蒼志のライブがすげえ良かったことを思い出した。

なので、その感想を踏まえながら、崎山蒼志のことを書きたい。

本編

この日のライブも基本はアコースティックギターを担ぎ、弾き語りスタイルで展開していた崎山蒼志。

本来、ギター一本の弾き語りというのは、死ぬほど手垢がついたフォーマットだ。

誰がやっていても、8拍子とか16拍子のリズムでコード弾きをしながら歌う、というのが一般的なスタイルになりがちだ。

弾き語りの場合、歌うことがメインであり、(細かなリズムやグルーヴの作り方に違いが出てくるけども)聴く者にとって、ギターが生み出す音にそこまでの違いを感じることは少ない。

ギター一本だけで、音楽的に大きな差別化を生み出すことは少ないように思う。

でも、崎山蒼志の弾き語りは、そういう常識を超越してしまう。

ギター一本で、ハードコアもエモもメタルもヒップホップもやってしまうような、そういうすんげえ弾き方を、アコギ一本でやってみせるのだ。

周到なストロークと、テクニカルで予測不能なリズムキープと、複雑なコード進行で、そういう「無茶」を実現させてしまう。

アコギの弾き語りというもっともシンプルな構成だけで、ここまで「他との違い」を見せつけてしまうアーティストってなかなかにいないと思う。

なお、技巧派にありがちな、音源ではすごいのに、ライブでは微妙・・・というアーティストともまったく違う。

そう。

ライブがすげえ良いのだ。

17歳であり、まだそこまではプロとしての場数を踏んでいないはずの崎山のパフォーマンスは、熟達したアーティストのそれであり、ライブの最初から終わりまで、ギターを弾くときの独特の緊張感と凄まじさが研ぎ澄まされていくのだ。

弾き語りだけではない魅力

本来であれば、フォークというジャンルに分類できそうな崎山の音楽は、ロックとしてもヒップホップとしても、なんならダンス・ミュージック的な要素すらも含まれた音楽としてカテゴライズできるような幅広さ、雑多さ、唯一無二さがある。

様々な音楽を咀嚼したうえで音を鳴らしており、それをギター一本で表現してみせるわけだ。

この「雑多な音楽」を「なるべくシンプルな音の形」に落とし込むところに、崎山ならではの凄さがあると思うのである。

そうそう。

この日のライブで個人的に印象に残ったのが、「仏様の歌をつくりました」って言って、披露された新曲。

新曲なので、楽曲を紹介できないので、説明が難しいのだが、ちょっとお経的な雰囲気を内包した、独特なノリの楽曲だった、と言えば少しはイメージできるだろうか?

ライブに行ったのがちょっと前なので、少し記憶がこぼれてしまっているところもあるが、いわゆる「音楽」とは違うリズム(お経的な要素)を取り入れた歌でありながら、それをきちんと音楽に落とし込んで歌として作り上げていた歌だったのだ。

端的に言えば、聴いたことがない感じの音楽だったのだ。

だからこそ、強く思ったのだ。

あ、崎山はもう次のフェーズに向かっているんだなあ、って。

驚くほど速いスピードで、先のジャンル音楽に誘うとしている意欲が垣間見られて、崎山の<音楽を楽しみ方の幅広さ>と<その貪欲さ>が随所に感じられて、とても良かったのである。

しかも、ポジションを取るための「新しさ」って感じではなくて、好きだからやる、という感じが見えたというか。

ややこしいことをすればするほど、その音楽愛と、その愛をきちんと自分で表現してしまう意欲が見えてきたとでも言えばいいだろうか。

とにかく、その音楽が、とんでもない快楽だったのである。

「並む踊り」というアルバムもすごく良かったんだけど、このアルバムはまだ崎山にとって序章でしかないんだよなーということを痛感させられて、今後、どんな音楽を鳴らすのかが楽しみで仕方なかったわけだ。

好みか好みじゃないかは置いといて、きっと崎山にしか作れない音楽を作るんだろうなーと思った次第。

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この日のハイライト

そんな崎山のライブ。

ハイライトはどこだった?と聞かれたら、やはりこの日ゲストとして出演していた諭吉佳作/menがステージに出てきて、この歌を披露したときだと思う。

この歌、ベースのトラックは諭吉佳作/menがGarageBand(というAppleのパソコンに入っている無料アプリ)で作っているらしいんだけど、アプリで作ったとは思えない豊かな音像と奥行きの深いアレンジとなっている。

諭吉佳作/menのセンスが爆発しているわけだ。

基本的に、諭吉佳作/menって変わったリズムを使いつつも不思議とそれを綺麗な枠組みにはめ込んでしまう、不思議な感性を持ち合わせている。

この歌自体はそこまで変則的なリズムを打つことはないけれど、キーボードとドラムの音が絶妙なリズムの中で美しく響くために、シックでジャジーな香りが色濃くなり、どこか遠くの世界に誘われるような気持ちよさを覚える。

元々、二人の声って独特で魅力的で、それぞれの声だけでも自分たちの世界に引き込んでくるような魅力があるんだけど、その二人の声が溶け合ったときの破壊力がとにかくやばいのだ。

わりと崎山の声って揺らいでいるから、人の声と上手く混じり合わないのではないだろうか?と思っていたけれど、何の心配もなかった。

二人の声が混じりと、その攻撃量がやばいのだ。

ある意味で、「混ぜるな危険」と書かれているカビキラーのような危険性をはらんでいる。

それくらいに、二人の声の攻撃力が凄まじいし、ユニゾンという名の凶器が空間を支配してしまうのだ。

きっとこの二人は音楽的にぐっとくるポイントが似ているのだろうなーと思うので、お互いが声を重ね合わせるときも、この二人だからこその波長の合わせ方をしているように感じるのだ。

だからこそ、お互いの良きところがより開花するように感じるのだ。

ライブで二人の声が重なったあの瞬間は、マジでやばくて失禁しそうになった。

いや、失禁はいいすぎかもしれないけれど。

でも、それくらいに心地よかったのだ。

まとめ

あと、やばいと言えば、この歌の紹介もしておきたい。

もう最初のメロディーラインで「なんじゃこりゃあ」感がすごい。

以降のメロディーラインもリズム割も、日本のポップスの常識を破壊するような並びで、本当にギリギリのラインでポップスとして成立させているような危うさがこの歌の圧倒的な魅力。

この歌のコラボ相手である長谷川白紙のセンスが爆発しているよなーと感じる。

インターネットが登場したことは音楽をビジネスとして捉えたとき、マイナスで語ることも多いけれど、こういった独特なセンスを持ち合わせた10代〜20代前半の人たちのセンスがさらに磨かれ、そのセンスに導かれるように、早々とお互いを引き合わせたことを考えると、インターネットも悪くないと思うのだ。

なんにしても、崎山蒼志のこれからが楽しみでしょうがない。

そんなことを感じた、崎山のライブなのでした。

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