
岡崎体育の「Suffer」「俺に告ぐ」の感想。歌詞もボーカルもユーモアの渋い件
岡崎体育というアーティストについて語る時、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「MUSIC VIDEO」や「なにをやってもあかんわ」といった代表作だろう。
音楽業界への痛烈な皮肉やユーモアセンスあふれる楽曲で注目を集める彼だが、その本質的な魅力はそれだけに留まらない。
そんなことを感じさせてくれるのが「Suffer」であり、「俺に告ぐ」という楽曲である。
いやね、マジで岡崎体育、ユーモアのエグすぎるわーって思った。
そろそろネタ切れでしょ?と思ったタイミングで、こういう角度の楽曲、放り投げるのか?という面白さがあるからだ。
しかも、ユーモア軸だけじゃなくて、楽曲軸としてもしっかりワクワクさせてくれるから強すぎるのだ。
本編
「Suffer」:疾走するカタルシス
この曲は、TVアニメ『まったく最近の探偵ときたら』のOP主題歌。
ポイントなのは、そのパンキッシュ色。
というのも、この楽曲の演奏・編曲にロックバンドdustboxが参加している。
dustboxの音楽が好きな人なら、この楽曲の痛快感、あまりにも刺さるものがあると思う。
英語も日本語もこのパンクなビートメイクの載せ方が絶妙なのだ。
あと、岡崎体育のボーカルの乗りこなし具合もエグすぎる。
パンクのコントラストが大好物な音楽リスナーもにっこりするような気持ちよさである。
メロディとリズムの軸
イントロからギターリフが炸裂。
ツービートで疾走感をもって、ゴリゴリに歌が進む。掛け声の挿入のタイミングも絶妙で、ライブで大盛り上がりする絵が、こんなにも思い浮かぶ歌もそうはないよなーと思う。
歌詞の軸
なのに、生活感と加齢臭が溢れまくる歌詞なのが良い。
だって、冒頭の
首痛い肩痛い
腰痛い膝痛い
という中年特有のボヤキが炸裂するんだぜ?
しかも、岡崎体育が歌うから妙にリアル。
夢を与えたり、現実逃避するのが音楽の魅力であり、力であり、魔法であると問う人も多い中で、あまりにも現実的。
よく考えたら、楽曲のタイトルも「Suffer(苦しむ)」なのがやばい。
こんなにも、壮大なフラストレーションを吐露する歌、今まであっただろうか?
サウンドがシャープでかっこよくて、ボーカルがどこまでもアグレッシブだからこそ、歌詞のトーンのギャップにおのずのユーモアが生まれる。
逆に言えばこういう歌詞なのに、どこまでも躍動的な生命力が宿っているのが良いよなーと思う。
アイデアだけがあってもダメで。
テクニックがあってもダメで。
華がありすぎてもダメで。
ユーモアとセンスと卓越した技術があるからこそ、成立する歌。
しかもライブパフォーマンスにも定評がある岡崎体育だからこそ、dustboxのサウンドと交錯したときの爆発力がえぐいことになるのだ。
「俺に告ぐ」の感想
「俺に告ぐ」もパンク色が強いナンバーだ。
エネルギーがあって、シンプルでキャッチーなメロディーにインパクトがある。
ただし、ビートは少しゆったりしているので、拳を突き上げてシンガロングできそうな空気感がある。
どっちにしろ、かっこいい。
でも、歌詞をみると、この歌もどこか現実的。というか、下手に背伸びをしたり、絵空事な何かを描くような感じではなく、岡崎体育の人がのっている感じがする。
だから、歌がイキイキするし、言葉が届く心地がする。
なお、後半にかけて、どんどんテンポが上がって終末に向けて駆け抜ける構成なのが個人的に好き。
まとめに替えて
結論。
岡崎体育。色んな意味で唯一無二。
演技力にも定評があるマルチなアーティストになってきているが、やっぱり音楽方面のクリエイティブやパフォーマンスも天才的。
そんなことを感じた、そんな夜。