ファンに怒られるかもしれないけれど、最初に「飄々とエモーション」ってタイトルを見たとき、僕はこう思った。
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フレデリックめ、ついにやりやがったな、と。
これは、完全にサカナクションをパクってきたな、と。
タイトルだけみたら嫌でも「さよならはエモーション」が頭によぎるし、最近のフレデリックはサカナクションのライブに寄せてきているイメージがあるし(個人的偏見)、飄々とエモーションのMVの、砂漠を歩く感じは「多分、風」が頭によぎるし(過剰反応)
まあ、聴いてみたらサカナクションと全然違ってたんだけどね。
というわけで、今回は飄々とエモーションを聴いてみた感じたの諸々を言葉にしていきたい。
「飄々」と「エモーション」
この歌、何が面白いって「飄々」って言葉と「エモーション」っていう、一見すると対立しそうなニュアンスの言葉を平然と並べているところである。
エモーションという単語をタイトルに使う歌は世の中にそれなりにあって、フジファブリックなら「自分勝手エモーション」、私立恵比寿中学なら「うれたい!エモーション」なんて歌を世に出している。
<自分勝手>や<うれたい!>という言葉がエモーションの前に付ける言葉として相応しいかどうかは微妙なところであるが、「飄々」よりはエモーションと親和性が強い気がする。
また、マンウィズのように、形容詞を付けてお茶を濁すようなことはしないで、アルファベット表記にして複数形で勝負するパターンもある。
前述した3曲はどれもこれもテンポの良い歌であり、エモーションという言葉に寄せていくかの如く、ノリの良い歌になっている。
が、フレデリックは少し様相が違う。
エモーションへの寄り6割、飄々への寄り4割くらいの按配で、不思議な温度感の曲を作り上げているのだ。
だって、頭のリズムがいきなり「デデデッデデ デデデッデデ」ですよ?
しかも、イントロだけじゃなくてBメロでも、この「デデデッデデ デデデッデデ」を押してくるんですよ?
エモーションってタイトルの歌は、歌詞も上げ上げなことが多いため、ノリやすさや激しさを強調する歌が多く、そのため早めのテンポとシンプルなビートを使いがちなことが多いのに、いきなり「デデデッデデ デデデッデデ」ですよ?
ノリやすいのかノリにくいのか、すごく微妙なリズムパターンなのである。
でも、この「デデデッデデ デデデッデデ」、聴いていたら確かに中毒になってくる。
元々フレデリックのメロディーって中毒性が高い歌が多いわけだが、リズムパターンにも中毒性を出してくるところが、フレデリックはヤバイ。
でも、もっともヤバイのは、イントロとBメロは耳に残りやすく特徴的なリズムである「デデデッデデ デデデッデデ」を使っているくせに、サビでは、びっくりするほどシンプルなビートをドラムが刻むようになることである。
サビだけじゃない。
そもそも、イントロで「デデデッデデ デデデッデデ」押しをしてきたくせに、Aメロはシンプルなリズムに戻っている。これがヤバイ。
まあ、イントロはアクセントある方がいいから「デデデッデデ デデデッデデ」っていうリズムをキメてきたのかな〜っていう気もする。
そして、Aメロは歌をたてたいから、アレンジもリズムパターンもシンプルなものにした、というのも納得がいく。
であるならば、だ。
歌とメロをたてるためにこのままシンプル路線でいくのかなーと思ったら、Bメロに入ったらいきなりまた「デデデッデデ デデデッデデ」ですよ。
速攻でシンプル路線を崩すこの圧倒的戦術。
そうか。むしろAメロが異端な位置付けであり、この歌は基本的にトリッキーなビートを刻むのが醍醐味の歌なのか。
ならば、もっともっとここからトリッキーなアレンジで魅せてくるのか。
そんなことを思ったら、サビでは今まで以上にシンプルなビートになっていくんですよ?ヤバくないですか、この歌。
これって、「飄々」と「エモーション」の二つのモードを使い分けていると取ることもできるし、二つのモードを丁寧に切り替えることで、曲世界を色濃く表現しているように思う。
トドメのヤバさは、2番のサビ終わりである。
2番のサビ終わりになると、いきなりジンガロング(合唱)タイムに投入する。
イントロの「デデデッデデ デデデッデデ」では想像も付かなかった境地に辿り着くのである。
ここで改めて思うわけだ。
ああーこの歌は勢いで押し切るとか、そういう歌なんじゃないんだな、と。
ちゃんと歌というか、ボーカルが土台にあって、そこで勝負していく歌なんだな、と。
これって、ライブハウスだけではなく、アリーナという大きなステージを意識したバンドだからこそ鳴らせる音であり発想なんだなーということが実感されるというか。
音自体が「未来に向かって俺たちはこうして行くんだ!」という意志が見えているからこそ、歌詞に書かれている、未来に向けてのフレーズひとつひとつが刺さるし、説得力を持つわけである。
あと、もうひとつ、この歌がグッとくるのは最後のサビの入り。
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ジンガロングタイムが終わり、Cメロに突入するタイミングで再びドラムがリズムをキープするんだけど、最初、ドラムはバスドラを打つだけの、もっともシンプルなビートを刻むところから始まる。
で、途中からタムを叩き始め、少しずつドドドドと音を大きくしていく。
一番のBメロで言ってた、「淡々と積み上げてきた感情」がピークに向かうかのように、クライマックスに向けて音のボリュームをピークにもっていくのだ。
これがフレデリックのエモーションだぞ!と言わんばかりに。
そして、ラストのサビにドカーンと入る。
いやー個人的にこの部分がすごく好きだったりするのである。
まあ、何が言いたいかというと、飄々モードとエモーションモードが巧みに入れ替わり立ち替わりすることで、他のバンドはもちろん、今までのフレデリックにもない、軽妙で痛快で、でもどっしりとした歌に仕立てたということ。
そして、二つのリズムパターン、二面性のあるパターンを覗かせるのが、この歌の最大の魅力のひとつだよなーと思うわけである。
タイトルにある通り「飄々」と「エモーション」を同居させた、他にはないフレデリックらしい歌だよなーということ。
他の楽曲について
飄々とエモーションは二つのビートが冴え渡ることで、飄々モードとエモーションモードを器用に使い分けているイメージの楽曲だったんだけど、今回のepはそういう二つの要素を綺麗に融和させているような印象を受ける楽曲が多い。
「シンセンス」はドラムの音に打ち込み感が漂うが、だからこそ、ギターのカッティングなんかが冴え渡る一作となっている。
かなりシンセもぶち飲んでいるし、ドラムも打ち込み感も全面に出ているから、下手をしたらバンドの音が埋没したり、そもそもバンド感がなくなる恐れもあるんだけど、そうはならないのがフレデリックの凄いところ。
音のバランスが感覚が優れている。
あと、飄々とエモーションはシンガロンタイムを作ることで「おお!!未来に向けて開いてきたな!」って感がある歌になっているんだけど、シンセンスは「 視覚 聴覚 触覚 嗅覚 味覚 直感第六感 研ぎ澄ませMUSIC」の部分でラップ感出してくるところで、新境地感をみせてくる。
それにしても、ep全体通して、全楽曲ドラムの質感を変えているのは、このepの特徴だよなーと思う。
全楽曲の空気感が違うように感じるのは、楽曲のテンポが違うからだけでなく、楽器隊が細かい部分でアプローチを変えているから、というのはすごく大きい。
こんなことできるしあんなこともできるんだぜ!っていうのはepでしっかり提示できちゃうところが、フレデリックの凄さである。
ただ全曲できちんと通底してある部分もあって、そのひとつが、どの歌も歌がしっかりしていることである。
シンセを容赦なくぶち込んでいるが、根本にあるのはメロディーであり、歌であり、ボーカル。
そんな意志をはっきりと感じさせるepになっている気がする。もともと、色んなセンスが抜群のバンドなのに、歌で魅力させるバンドになってしまったら、そりゃあアリーナ公演もソールドしますわって感じで。
これからの先も、フレデリックには期待しかないな!そんな気持ちにさせる、そんな素敵なepなのです。
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