スピッツ「スピカ」の歌詞について書いてみたい。

作詞:草野正宗
作曲:草野正宗

この坂道〜突き進む君へ

坂道=人生と思われる。

この坂道は上り坂なのか下り坂なのかはわからないが、山はもうすぐ終わりであることはわかる。

おそらくもう年だよ、という話であり、バカらしい嘘とは「夢に向かって進む」とか「愛している」とか、そういう漫画が好きそうな青い言葉のことであろう。

大きな季節、とは具体的に何かはわからないが、生活に大きな変化を迎えることはわかる。

新社会人になるのか、結婚のどちらかではなかろうか。

素敵なコードでものすごい高さに上った先で出会うのは君なのだから、そういう門出感は出てくると思う。

言葉よりも触れ合いを大事にするのだから、なんとなく君は恋人的存在のような感じがする。

粉のよう〜続くのです

せつないときめきとは具体的に何だろうか。

今だけは逃げないということは、普段なら逃げてしまうということだろうか。

幸せは途切れながらも続くのはわかったが、マジメな夜に泣きそうなる辺り、この二人は単純なハッピーエンドを迎えるわけではないような予感。

マジメな夜というのは、イチャイチャとかはしないで誠実に顔を向き合わせてるようなイメージだろうか。

いずれにせよ、ふわふわした言葉を並べられたせいで、僕と君が何を考えているのか、はっきりしなくて、なんだかよくわからない印象を受けると思う。

一旦、2番の歌詞をみてみよう。

はぐれ猿で〜優しげな時代で

「猿」というモチーフはマサムネの歌詞にもよく登場する。

本能むき出しの人間、みたいなニュアンスで使われることが多く、その猿がはぐれているのだから、人とは違う道に生きたはみ出し者という感じだろうか。

そんなアウトローな人生でも、上手くいってれば明日も笑って生きられるよという話。

要は変わり者でもいいじゃん、と肯定してくれているというわけである。

確かに優しさに飢えたような時代に見えるけれど、優しい部分だってあるんだよ、僕たちが生きている世の中は、という話。

良いことばかりじゃないけど、かといって地獄でもない的な、そんな話。

確かに戦国時代とかで、はぐれ猿になってたら死んでたに違いない。

自分みたいなはみ出し者でも「いることを許す」のだから、なんだかんだで優しい時代なわけだ。

夢のはじまり まだ少し甘い味です
割れものは手に持って 運べばいいでしょう
古い星の光 僕たちを照らします
世界中 何も無かった それ以外は

ここに出てくる古い星というのが、タイトルにあるスピカを指しているのだと思われる。

スピカとはなんぞや?という人はググればいいんだけど、単純に言えば空に輝く星のひとつのことである。

ちなみにおとめ座らしい。(なんでスピカなのかはよくわかんないけど、音の響きが可愛いからのではないかと勝手に思ってる)

ところで、割れ物とは何だろうか。

おそらくこれは気持ちのことであり、繊細な心のことを指しているのだと思う。

君はすぐに傷ちゃうから僕が守ってあげるよ、って感じのニュアンスを「割れ物は手に持って運ぶ」と言い換えるのが、マサムネのセンスだよなあと思う。

夢の始まり=まだ少し甘い、ということは、夢に入ればだんだんと苦くなるということだろうか。

ここでひとつピンとくる。

これを結婚生活に置き換えれば、わりと問題はクリアに見えてくるのだ。

最初は甘い日々を過ごしていても、付き合う年月が長くなったり子供ができたりしたら、生活から甘さはなくなっていく。

けれど、この二人の結婚生活はまだ始まったばかりだから、少しは甘いのである。

少ししか甘くないというのは、結婚までのお付き合いが長かったのかもしれない。

「古い星の光が僕たちを照らす」というのは、この生活の輝きは(結婚という人生の輝き)は古い星がずーっと照ら続けた、どんな人にも起こりうるベタものであるということである。

でも、「世界中何もなかったそれ以外は」というフレーズにより、ずーっと昔の人間がやってきたことと同じことを僕らもやってるわけだけども、僕と君のベタならこのストーリー自体は、僕と君にしから作れない世界にかけがえのないものである、ということなのだと思う。

ベタだけどベタじゃなく、普遍だけど、特殊という感じ。

結婚生活ってそういうものなのだと思う。

南へ行〜彼方へ…

心の切れ端とは、浮気心だろうか。

結婚するのだから、そういう煩悩は捨てるぜ的な。

粉の〜続くのです

結婚生活と仮定すればサビのフレーズの意味も繋がってくる。

「幸せは途切れながら続く」という台詞は全てを代弁していると思う。

喧嘩することもあるし、ドキドキも色褪せるかもしれないけれど、やっぱり大切な人とずっと過ごすって幸せなんだという話。

マジメな夜に泣きそうになったのは、初めて僕が君にちゃんと「君のことが大切であり、一生幸せにするよ」という気持ちを伝えたからではなかろうか。

嬉しいはずなのに、なぜか涙が出ちゃうわけだ。

告白したのだから、そりゃあ「マジメな夜」と形容してしまうわけだ。

で、普段なら照れて目を晒す=逃げるような僕だけれど、今だけはそれをしないで、ずっと君を見つめるわけだ。

出会ってからそれなりに時間がたったから「ときめき」の形も変わってしまったけれど、今それが粉のように飛び出すし、舞うことで改めて僕らに降り注ぐわけだ。

要は、この歌はプロポーズと結婚の幸せについて歌った歌であり、ただ直球だと恥ずかしいから、マサムネが妄想と捻くれで、こんな歌詞にしたのではないかという妄想。

多幸感があり、アルバムの趣旨とずれるから、「ファイクファー」のアルバムに収録されなかったわけで(そのときには既にこの曲は出来上がっていたのである)、その判断も色んな意味で納得というわけである。

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