Aile The Shotaの「月見想」の話。蔦谷好位置とタッグで紡ぐ魅力。歌詞、ボーカルに触れて

自分の好物として、王道・感涙・ストレートバラードというものがある。Aile The Shotaの「月見想」はそういう己の好みに真っ直ぐに突き刺さる魅力を持っている。この記事では、そんなAile The Shotaの「月見想」を書いていきたい。

楽曲構成・サウンド軸

Aile The Shotaの「月見想」は、約3分50秒のバラードだ。シンプルながらも起伏を丁寧に描く楽曲で、淡々としたメロパートと、ダイナミックに突き進むサビのコントラストが気持ち良い。

そう。

この歌、しっとりした冒頭のAメロがめっちゃ良いのだ。ピアノで紡ぐ繊細な音楽世界の中、低音で柔らかく包容力を演出する流れ。そこに、たまらない感動を覚えることになる。季節をテーマにした4部作のうちの秋をテーマにした作品ということで、ピアノだったりアコースティックギターだったりと、しっとりとしたサウンドの冴え渡り方が絶妙なのだ。蔦谷好位置のアレンジが見事だし、二人で共作しながら作品を詰めていったからこそボーカルとサウンドの溶け込み方が絶妙であるよなーと思う。

楽曲に対する没入感が絶妙で、「月見想」=秋だし、秋=「月見想」くらいの雰囲気が楽曲全体から漂っているのだ。歌詞を観ずとも、秋の夜長の景色が浮かぶというか。歌詞を飛び越えて、歌と音で楽曲の景色を作り上げる感じ。この感じは、「月見想」だからこそ味わうことができる深みの世界であるように感じる。

ボーカル軸

何より今作、心を惹かれたのはAile The Shotaのボーカル。

ボーカルの緩急があまりにも見事なのだ。もともとAile The Shotaは色んなタイプの楽曲を謳いこなす印象だけど、こういうデリケートなボーカルとまっすぐに向き合ったときの破壊力がえげつないんだなーということを実感する。かすれるように、消え入りそうなボーカルを繰り出したときの温度感。あるいは、多重にボーカルを展開したとき、暖かくて、でも秋が忍び寄るからこそのひんやりとした感じ。余白すらも歌にしてしまうような余韻を残す感じも含めて、ボーカルが果たしている存在感があまりにも大きいのだ。

歌詞軸

そして、ボーカルが素晴らしいからこそ、失恋が軸になっている進む歌の物語が映画的な色合いを帯びていく。

あなたを失うくらいなら
自分を殺してもいいよ
大切にしてくれるのなら
いっそ壊してくれてもいいよ

という冒頭もかなりパンチがあって、このフレーズにどういう感情を込めるのかで、歌の方向性ががらりと変わるようなインパクトがあるけれど、Aile The Shotaはそこに絶妙な温度を与えるからこそ、美しい景色を作り上げることになる。内面を赤裸々に語るようなフレーズも多いけれど、丁寧かつ繊細にボーカルを刻むからこそ、幻想的に歌の世界が作り上げる。

だからこそ、

「愛してる」の代わりに抱きしめてほしかった

で終わる物語も、ただただ切ないだけで終わらず、不思議な余韻を残しながら歌のドラマが終幕する心地を覚えるのだと思う。蔦谷好位置がいて、Aile The Shotaがいるからこそ、できあがった世界観だなーと感じずにはいられないわけだ。

まとめに替えて

つまり、そんなAile The Shotaの「月見想」にぐっときたんだよ、というのがこの記事の結論。

いやね、Aile The Shota、こんな一面もあるのか、こういう表現力もあるのか、と改めてぐっと引き込まれた次第。

次の冬の作品も今から楽しみである。