ストレイテナーの「Next Chapter」の美しさ。歌詞、ボーカル、サウンドの話

ストレイテナーの「Next Chapter」の美しさ。歌詞、ボーカル、サウンドの話

もうね、エグい。

透き通りすぎ。観光客なんて滅多に来ないような、本当に自然が守られている土地の澄み切った海のような。

そんな透明感が、ストレイテナーの「Next Chapter」にはある。

精密かつ清新なバンドアンサンブルだからこそ生み出される、厚みがあるのに煩さを一切感じさせない音の集積。

熟達したギターロックバンドだからこそ繰り出される、かっこよくて、優しくて、温かくて、躍動感もある、そんな歌の心地よさがある。

楽曲構成とサウンドの核心

一般的に歌心があるバンドの歌って、サウンドが良くも悪くも「空気」になることが多い。

バンドサウンドよりもストリングスが存在感をもって、歌の邪魔をしないようにする感じ。

ストレイテナーの「Next Chapter」も、歌が軸を握っているという意味では、歌心がある。

けれど、ストレイテナーってそういう歌のインパクトが強い歌でありながら、サウンドも置きにいっていないところだ。

透明感のあるギターの音色は、オルタナティブなギターのリフを綺麗に彩る。

無駄なものは削ぎ落としつつも、ちゃんとギターとしての存在感を際立たせ、クリーンながらも歪みもきちんと持ち合わせたドライブを繰り出す。

さらに、この曲を根底から支えているのが日向秀和のベースとナカヤマシンペイのドラムであろう。

斬新なビートで紡ぐ歌というわけではないが、いやむしろ一見するとシンプルなビートメイクに見えるからこそ、リズム隊の存在感が際立つ。

クリーンで優しいフレーズの中でも、ふとした瞬間に地鳴りのような深い低域で曲の輪郭をはっきり描写するベースのトーン。

歌の邪魔をしないのに、ベースも存在感もきっちり示す境地に触れるたびに、このバンドのバランス感の素晴らしさを体感せずにはいられない。

ドラムにおいても、繊細なビートメイクで幻想的な歌の世界を丁寧に作り上げるが、この音の積み上げ方も見事で。

歌の世界観に温かみをどこまでも与えるのは、ドラムが丁寧かつ繊細にビートを刻むからこそ。

メロディアスでありながら、サウンドとしてのドラマチックさもあって、ストレイテナーにしか作り上げることのできない歌と音の世界を構築している。

歌詞とボーカル

とはいえ、歌の軸を握るのは、やはりホリエアツシのボーカルだ。

「与え合い」「許し合う」というような、人間らしい優しさを核心に据えながら、未来に視点を向けるような歌詞。

そんな視点にふさわしいトーンのボーカルで、美しいメロディーを紡いでみせる。

甘さもあるし、鋭さもある絶妙な温度感。

どんな世界も描くことができる技巧派な側面もあるバンドだからこそ、作り出せる歌の世界であるように感じる。

何より歌詞で示すメッセージが「素直」な想いだからこそ、歌に熱を帯びて勢いを生み出すようにも感じる。

「売れたい」とか「話題になりたい」の言葉じゃなくて、「これを歌いたい」が軸になる歌だからこそ、然るべき高鳴りを与えてくれるのだ。

アレンジと音像の特徴

Sterling Soundのランディ・メリルによる音作りも今作を語るうえで重要なポイントだろう。

やっぱりストレイテナーの音楽を耳に取り込んだときの、言葉にできない安らぎはマスタリングにも妥協なく、音を作り込んだからこその高揚感だと思う。

サブスク時代、どうしてもCD時代とはこだわり方が変わりがちな中で、派手ではない部分、職人的な部分にもこだわり抜きながら音を作り上げるストレイテナーのチームとしての素晴らしさを実感するのである。

まとめに替えて

「Next Chapter」は、今のストレイテナーのバンドアンサンブルがいかに円熟したかを証明する一曲である。

つくづくこのバンドの進化の仕方いいなあと思う。

ベースとドラムのグルーヴが美しくて。

ギターの表現力が天下一品で。

圧倒的なヴォーカルの温度感が絶妙で。

メロディーが何よりも優しくて研ぎ澄まされていて、言葉を包み込みながら歌の世界を作り上げる。

余計な装飾はなしにして、これが100点になるようなバンドとしての圧倒的到達点。

でも、きっとそれもまた「新たな章」のひとつなのだろうなあーなんて感じ、そんな夜。