Official髭男dismの「Sharon」に漂う感動の考察
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2024年も色々新譜を聴いて思ったんだけど、もし「この歌、美しすぎて涙を流してしまいそうな美しさを感じるランキング」みたいなものを作るとすれば、自分はこの歌をかなり上位にランクインさせると思う。
それが、Official髭男dismの「Sharon」だ。
なぜ、そう思うのか?
いくつか理由があるんだけど、掻い摘みながら、言葉にしてみたいと思う。
イントロの感じ
まず、自分はイントロを聴いて、なんとなく「アポトーシス」を頭によぎらせた
鳴っている音の感触が似ているという感じもあるし、歌を幕開けさせるにあたってのイントロの立ち位置にも似ているものを覚えた。
日常のようなささやかさもあるし、ドラマ的な壮大感もあるような絶妙な音色。
別に「Sharon」がダイレクトに「アポトーシス」とイコールに結ばれる歌ではないと思うが、少なくともイントロに触れたときに<あ、ここから名曲が始まるぞ>感は通じている印象を受ける。
メロディーの綺麗さと、でもベタではない感じ
「Sharon」はメロディーが美しい。
聴いていて、素直にそう思う。
鍵盤のシンプルな伴奏が映えるので、そう思う。
仮にシンプルなアレンジでも映えるのはメロディーの強度があるからこそだし、「Sharon」のメロディーもそういう力強さを覚えるわけだ。
Aメロ→Bメロ→サビの流れも秀逸だし、Aメロで淡々とした雰囲気を作り上げたと思ったら、サビでがらっと歌のモードを超えて、一気に求心力を上げるあたりにも、「Sharon」のメロディーの底なし感を覚える。
とはいえ、90年代のポップス的なすぐにメロディーが頭に残るキャッチーさがある場合、どこかしらに歌のベタさを覚えるケースも多い。
似ているメロディーの歌がある、みたいな話ではなく、歌の構成に既視感を覚えるという意味において、ベタさを覚えるケースも多いわけだ。
でも、自分目線において、「Sharon」にそういうベタさを覚えない。
特に印象的なのは、Bメロの扱い方。
この歌のBメロの流れは、かなり独特だと思う。
というよりも、こういうAメロとこういうサビに挟まれるメロディーとして、このメロディーをBメロに持ってくるなんて・・・という面白さがあるわけだ。
Bメロは当然サビに繋ぐためのブリッジ的な意味合いが強い。
なので、Aメロが淡々としている場合、急にサビで派手になると、構成的にめちゃくちゃになってしまうので、事前にメロディーに揺さぶりをかけるような立ち位置になることが多い。
もちろん、「Sharon」のメロディーにもそういう要素はある。
あるのだが、それにしてはBメロの入り方があまりにも独特なのだ。
“調”に変更を加えることで、歌として次のフェーズに進んでいることがわかるが、メロディーの流れとしてはどちらかというナチュラル寄りであるところが、まずポイント。
さらに言葉を詰め込むことで、メロディーのテンポに独自感を与えている。
普通Bメロってメロディーの起伏を際立たせるため、どちらかというと、スキマが際立つケースが多いが、「Sharon」においてはむしろAメロ寄りも言葉の情報量を増やしている印象。
結果、Bメロが歌の中で独特の存在感を与える。
2番においてはサビに繋げず、Bメロ終わりで間奏に入る流れになっているが、これはBメロの存在感が際立つからこそできる流れだと思うし、この歌の象徴的な流れのひとつであるようにも思う。
こうやって歌を聴き込んでいくと、耳心地の良いメロディーというベースはありつつも、良い意味で秩序を壊すような要素を添えており、それがよりメロディーにインパクトをもたせ、感動に誘う楽曲になっている印象を受けるのだ。
優しいようで、際立つバンドサウンド
こういう優しい歌の場合、極限までバンドサウンドは歌の邪魔をしないという選択もある。
そういうバランスを取れるバンドこそが、老若男女を選ばないヒットソングを世に放ってきた印象だ。
Official髭男dismにおいても、歌とアレンジのバランスにおいては自覚的ではあると思うが、その一方で、ちゃんと誇張するべきところではそれぞれのサウンドが躍進するのが良い。
例えば、サビに入る前の1番のBメロ後半ではわりとギンギンにギターが鳴っているし、1番サビでベースとドラマがハマったときの重厚感は、Official髭男dismのバンドとしての4人のバランス感を気持ちよく感じさせる瞬間のひとつである。
Aメロにおける1番と2番の変化が鮮やかなのも、リズム隊が生み出すグルーブの変化が果たしている役割も大きい。
良いメロディーがあって、目を惹く構成力があって、それを歌いこなす素晴らしいボーカルがいる。
でも、それ以上にバンドとして曲の色付け方がワクワクするからこそ、「Sharon」の感動が劇的なものになる。
そんなふうに感じるのである。
まとめに代えて
というわけで、「Sharon」がなぜ「この歌、美しすぎて涙を流してしまいそうな美しさを感じるランキング」みたいなものを作るとすれば、自分はこの歌をかなり上位にランクインさせるのか?という命題について、自分なりの言葉で口にさせてもらった。
そして、「Sharon」を聴いていて思ったのは、やっぱりOfficial髭男dismってアルバムの中に楽曲が並ぶことで、より歌の生命力が宿るなーということ。
これまで独立した作品として聴いていた楽曲のどれもが、違う刺さり方をしたため、そのように感じたのだった。
時間があればアルバムの感想も書きたいなーなんてことも思う、そんな夜。
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