前説
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ここ数年で、個人的にもっともバンドの中で高い評価をしているのは、Official髭男dismだと思う。
<高い評価>というよりも、楽曲の刺さり方がもっとも深いバンド、と言い換えてもいいかもしれない。
というのも、自分は2019年のベストソングではOfficial髭男dismの「ビンテージ」を一位にあげて、2020年は同バンドの「Laughter」を二位に挙げたのだ。
ブログを始めてから、二年連続でベストソングのトップ3位以内に名前を挙げたのは、Official髭男dismだけなのだ。
基本的に、自分は同じバンドを上位に連続で名前を挙げないのは、つまるところ自分が飽き性であり、(どちらかといえば)新しいものを好む性分だからである。
本来であれば、Official髭男dismだって、その例外ではないはずだった。
つまり、今までは<めっちゃ良い>という評価だったとしても、良くも悪くも少しずつバンドのカラーや音楽に慣れてしまい、いつしか<まあまあ良い>に変わってしまうはずだったのだ。
そう。
Official髭男dismにおいては<はずだった・・・>で終わってしまったということ。
Official髭男dismの「Cry Baby」の感想
過去最高のダークさ
Official髭男dismは、毎回違う一面を魅せてくる。
単純にサウンドの装いが違うという以上の違いを提示してくれる。
Official髭男dismにしかできない歌でありながら、その中で毎回違うカラーを魅せつける、とでも言えばいいだろう。
だから、自分のツボにドスリと突き刺さる音楽を生み出すのだ。
一昨年は「ビンテージ」、昨年なら「Laughter」で、それをやられたのだった。
とはいえ、あれからもう2年。
いい加減、今年はそういうこともないだろうと思っていたら、ものの見事に「Cry Baby」でそれをされてしまったのだった。
いや、マジでこの楽曲が、ただただ自分のツボなのである。
早速、鬼リピートの嵐となっている。
まず、「Cry Baby」が良いなあと思うのは、全体的なテイスト。
Official髭男dismって老若男女に愛される良い子ちゃんバンド、というイメージを持っている人も多いと思う。
<傷つけない笑い>だったり、<ポリティカルコレクト>という言葉と親和性のありそうなマイルドさを発揮することも多い。
たしかに、そういう要素もOfficial髭男dismの魅力のひとつではあると思う。
でも、今作はそういう<らしさ>にあぐらをかいた音楽は作らないぞ、という鋭さを感じるのだ。
端的に言えば、サウンドがどことなくダークな色合いを魅せるのだ。
躍動的で存在感を示すバンドサウンドから、その色合いがはっきりと滲む。
マーチングっぽいサウンドを取り入れ、不安感のある和音を鍵盤が奏でることで、よりその色合いが明確になる。
少なくとも、今までのOfficial髭男dismの楽曲にはなかった感触を「Cry Baby」は与えてくれるのだ。
しかも、それはサウンドだけに留まるものではないことに気づく。
鋭い歌詞
「Cry Baby」は歌詞も今までのOfficial髭男dismの楽曲にはない鋭さを持っている。
冒頭は<胸ぐらを掴まれて>という歌詞ではじまり、その少しあとには<お前>という二人称を使ってくる。
もちろん、これは主題歌となっているアニメの世界観を意識したワードチョイスではあると思う。
とはいえ、Official髭男dismの楽曲で、ここまで鋭いワードを使った楽曲も、そうはなかったのではないだろうか。
その後も、硬派で鋭さを持ったワードがたくさん散見される。
その使い方も絶妙で、Official髭男dismらしい眼差しを残しつつも、Official髭男dismらしいダークな世界観を鮮やかに彩っていく。
印象的なのは<腐り切ったバッドエンド>というフレーズ。
マイナスとマイナスのイメージの言葉を組み合わせ、それをどえらい角度で放り込む。
かなり存在感の強いワードも違和感なく楽曲に忍ばせているのも、サウンドと言葉の世界観のシンクロ率がどこまでも高いからこそ。
今作のOfficial髭男dismは、鋭さが今まで以上なのである。
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鮮やかなハイトーンボイス
でも、単なるダークソングになっているかといえば、そんなことはなくて。
Official髭男dismらしい中毒性が宿っているというか、ポップスとしての美しさも健在なのである。
この辺りは、藤原のメロディーセンスと、それを軽やかに歌いこなすハイトーンボイスが為せる技だと思う。
今作、ボーカルパートで特にグッと来たのが<忘れるな 忘れるなと>の部分。
ここのファルセットの使い方が、あまりにも美しいのだ。
ここだけでご飯3杯くらいおかわりできてしまう。
さらには、その後になだれ込む間奏の中でリフレインする「どうして」も、素晴らしい。
声の加工の仕方と、歌声に宿る切迫感。
この部分だけでも楽曲が中毒化する要因が詰まっている。
あと、<抉るような言葉を>というフレーズを歌っているときの<言葉を>の<を>を歌うときの切ない表情にも、ぐっとくる。
丁寧に聴けば聴くほどフレーズ単位で鮮やかに表情を使い分けていることを実感する。
マジ、声の百面相かよと言いたくなるほどに、ここぞのタイミングでここぞの表情を魅せてくるのだ。
だからこそ、歌詞の温度感に合わせて楽曲の世界に入り込むことができる。
ダークさをより切実に体感できるのは、藤原の歌声があるからこそ、と言えるし、ダークさで終わらせないのもまた、藤原の歌声があるからこそと言えるわけだ。
アウトロなしのエンディング
そして、余計な余韻を残さず、「リベンジ」というワードを歌い切るとさらっと楽曲が終わるところも良い。
間奏は長めに尺を使うけれど、お尻の部分は余計な尺を使わないバランス感もGOOD。
この歌はこの終わらせ方しかない、という形で綺麗に歌を集約させていくのだ。
まとめ
Official髭男dismは、とんでもないところまでやってきた。
改めて、そう思う。
思えば、今作はメンバーのアー写も世界観がはっきりと構築されていて、気合いの入れ方が尋常ではないことに気づく。
こんなの名作にならないわけがない。
なにより、「Universe」からの「Cry Baby」の振り幅に脱帽する。
やっぱり、このバンド、別格だよなあと思う。
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