Official髭男dismと「コンフィデンスマンJP」
[ad]
Official髭男dismを語るうえで、「コンフィデンスマンJP」のタイアップは絶対に外せないものであろう。
なぜなら、Official髭男dismがここまで出世することになったのは、「コンフィデンスマンJP」のタイアップを手掛けたことが大きいからだ。
過去にタイアップを手掛けた楽曲3曲。
「ノーダウト」「Pretender」「Laughter」である。
どの歌も、圧倒的なパンチ力を誇っている。
特に「ノーダウト」と「Pretender」は、Official髭男dismを語る上で絶対外せない名刺的な楽曲だし、これに異論がある人はいないと思う。
そんなOfficial髭男dismが2022年も「コンフィデンスマンJP」の主題歌を手掛けるというのだから、期待しないわけがない。
「Anarchy」はそんな超絶的な期待を背負って誕生した楽曲だった。
この記事では、そんな「Anarchy」の感想を書いてみたいと思う。
本編
「Anarchy」の話
アルバム曲含めて、Official髭男dismは昨年も色んな一面・カラーの楽曲をリリースしたバンドである。
アプローチできるジャンルとして、切れるカードは何枚もあることだろう。
昨年でも「アポトーシス」「Cry Baby」「ペンディング・マシーン」と、マジで<なんでもできる>を示したような一年だったと思う。
また、「ノーダウト」や「Pretender」あたりだと、<売れ線>や<流行り>にも目配せしながら楽曲を作っていた気がしなくもないんだけれど、昨年からわりと明確に<求められるテイストの歌>を作るというよりも、<自分たちが作りたい歌>への比重を大きくしたような印象を受ける。
というよりも、もともとやりたいことを音楽にしていたバンドだと思うけれど、その比重具合が変わったというか。
<やりたいこと>と<求められること>のバランスを変えて、国民的立ち位置のバンドになったけれど、<求められること>を優先して<やりたいこと>を諦めるつもりはないという意思表示をみせた・・・ということを感じるのだ(この辺は完全なる自分の偏見だが)。
ということを踏まえたうえで「Anarchy」を聴くと、あの「コンフィデンスマンJP」のタイアップでこういうタイプの楽曲を放ってくるとは・・・という驚きがあった。
もちろん、事前に<今回はこういうタイプの楽曲でお願いします>というある程度の発注があったとは思う。
その発注は踏まえながら楽曲を作ったとは思う。
んだけど、今までの主題歌と比べると、わりとさっぱりしているというか、聴いた感じの手触りがまったく違って、驚いたのである。
大きな違いは、バンドサウンドの置き方であろう。
言ってしまえば、今作はロックバンドとしてOfficial髭男dismが全面に出ている印象を受けるのだ。
イントロはベースとドラムの掛け合いで始まる。
潤沢に予算がかけられ、かつキーボードをサウンドの軸に置くことができるOfficial髭男dismにおいて、こういうアプローチでリズムの印象を付ける楽曲って、今まであまりなかったような気がする。
で。
そこから「Anarchy」はそこからギターを加えた、比較的シンプルなバンドアプローチのままで、メロパートに突入していくのだ。
パートが進むにつれて、少しずつ音を足していってサビへ流れ込むわけだけど、今までの「コンフィデンスマンJP」のヒゲダンなら、ここで一発藤原のハイトーンボイスだったり、ファルセットで魅了するパートを差し込む気がする。
が。
「Anarchy」では、あえてそういう余計な起伏はつくらず、比較的淡々とメロディーを紡いでいく。
言ってしまえば、今までのタイアップ曲よりも、サウンドもメロディーラインもシンプルなように感じるのだ。
映画主題歌であれば、もっとド派手な展開を作ったり、劇的なアプローチを組み込んでもいい気がする。
それこそ「Laughter」のような、壮大なバラード感を演出する方法だってあったわけだ。
でも、「Anarchy」の歌はそういう過剰な演出を省いていく。
Official髭男dismが持っているピュアなグルーヴで魅了していく面白さがあるのだ。
確かによく考えたらOfficial髭男dismって、安易に同じことはしないバンドだったよなーと思うし、楽曲をリリースするたびに違う類のワクワクを巻き起こすバンドだったよなーと思う。
先方の要望とすり合わせながらも、今のOfficial髭男dismのモードを巧みに音とメロディーに落とし込んだ結果が「Anarchy」という快作を生み出したんだろうなーと思う。
[ad]
「コンフィデンスマンJP」のタイアップだからこその部分
もちろん、過去のタイアップ曲との共通点もある。
「コンフィデンスマンJP」の主題歌の場合、猛烈に韻を踏んでグルーヴを生み出す楽曲展開を行うことが多い。
「ノーダウト」や「Pretender」も韻を踏んだ言葉遊びが印象的だったが、「Anarchy」も同様にそういう構成をとっているのだ。
メロディーの末尾だったり、メロディーの繰り返しは音を揃えて展開することが多いし、メロと音のはめ込みの気持ちよさを優先して言葉を構築している感触を覚える。
ポイントなのは、メロと言葉の当て込み方を優先はしているんだけど、そこに留まらなさそうな気がするひとつひとつのワード選び。
いや、このあたりは映画を観ていないので、作品の世界観を踏まえてどーのこーのは言えないんだけど、フレーズをみている限り、きちんと作品世界を踏まえた上での言葉選びな気もするのだ。
いずれにしてもワードチョイスの面白さが見事なまでに炸裂していて、このあたりの言葉選びひとつとっても、藤原だからこそのソングライティングが光りまくっているように思う。
「感情の大乱闘 治安の悪さと猿の徹夜は続く」
このフレーズなんて、普通に考えていたら出てこないワードだと思うし、メロディーのキメの部分でこういうフレーズが出てくるあたりが「Anarchy」の面白さのひとつであるように思うのだ。
まとめに替えて
「ノーダウト」や「Pretender」がOfficial髭男dismの名刺的楽曲になった。
しかし、それらの楽曲の焼き直しを作るつもりはない。
「Anarchy」を聴いていると、そのことを実感する。
ある意味、Official髭男dismの音楽センスがアナーキーだよなーと思わずにはいられない楽曲である。
関連記事:音域が暴走するOfficial髭男dismの「Laughter」の話
関連記事:2022年1月前半、バンド・アーティストの個人的な月間ベストソング
[ad]