King Gnuの「SPECIALZ」が魅せる何とも言えないギラギラ感
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変わってしまったバンドってたくさんいる。
ここでいう”変わった”というのは、インディーズ頃のギラギラした感じと、メジャーデビューしてキラキラした活動が増えた今とを比較したときに感じるバンドの「見え方」や生み出す作品性の話だ。
当然、どんなバンドだって年を重ねるごとに考えていることや大切にするものや優先順位が変わっていく。
最初はバンドメンバーだけが良しと思えば進めることができたアレコレも、バンドの規模が大きくなればたくさんのスタッフや企業の考えを擦り合わせながら物事を進めないといけないし、よりマクロな視点で意思決定をしないといけなくなる。
そういう流れの中で、自ずとバンドの「見え方」や「作品性」が変わるということもあると思うのだ。
その変化っていうのは良いこともあれば悪いこともある。
でも、ギラギラしたあの頃が好きだったという人ほど、どんどんそのギラギラが丸くなっていくサマをみていると、自分が好きだったあのバンドじゃなくなっていくんだな・・・と感じる人はそれなりにいるとは思うのだ。
King Gnuもまた、そういう側面があるバンドだと思っていた。
いや、King Gnuは比較的「変わっていない部分」を大事にしているバンドだと思うし、根底にあるバンドの持ち味は崩していないからこそ、ここまでバンドが大きくなっているとは思うのだ。
でも、やっぱり初期の頃にあったギラギラ感がマイルドになっていると感じる人は一定数いると思うのだ。
音楽性でも、初期のギラギラ感は突き抜けていた。
例えば、「Vinyl」。
もちろん、この歌にある魅力って全部今のKing Gnuに通ずるものだ。
井口に耳馴染みの良いハイトーンボイスとか。
妖艶でテクニカルなバンドサウンドとか。
エッジのあるサウンドに対比したキャッチーなメロディーとか。
どれもこれも、今のKing Gnuの楽曲にも通ずる魅力ではある。
が、言語化ではなかなか表現できない今のKing Gnuにはないギラギラが、確かに「Vinyl」が生み出す音楽世界には宿っているように感じる。
「Tokyo Rendez-Vous」でも、そんなことを感じる。
あえて言えば、今のKing Gnuは<上手すぎる>ため、どんなアレンジもスマートにやってのけてしまう。
でも、この頃のKing Gnuは演奏が上手いという前提がありつつも、この頃にしかない泥臭さみたいなものがあったのだった。
だからこそ、ミクスチャーなサウンドがよりリアリティーをもって耳に届いてきたのだった。
しかし、昨今のKing Gnuの楽曲はこの頃の作品と比較すると、全パートで洗練されたものをビンビンに感じるし、ずっと上手いと思っていた井口のボーカルだって比較すると、表現力にかなりの違いを実感することになる。
が、上手くなるに比例して、楽曲全体がマイルドになっている印象は受けてしまう。
また、よりKing Gnuの楽曲がポップな方向に傾倒したこともあって、あえて言えば楽曲から「不良」感がどんどん消えてしまったという部分はあるように思うのだ。
きっとここから先のKing Gnuの音楽も、良くも悪くもそういう眩しさを解き放ちながら、より間口の広いところを突き刺すようになっていくのかな。
そんなことを思っていたときに世に出たのが「SPECIALZ」だった。
「SPECIALZ」の話
冒頭の英語歌詞の部分から、なんだかいつものKing Gnuとは違う妖しさを炸裂する。
上手く言語化することができないんだけど、今作の冒頭は、ほんの少し、危険な香りがするような、そんな音のテイストを感じさせてくれるのである。
例えば、「逆夢」とかはイントロを聞いてもそういう妖しさは感じない。
良くも悪くも全年齢対象感の漂う、サウンドで楽曲が幕開けるわけだ。
でも、「SPECIALZ」はそういうポップスな手触りとは少し異なる雰囲気を醸し出してくれるのである。
月並みな言葉を言ってしまうと、少し初期のKing Gnuを感じさせる手触りになっている印象を受けるわけだ。
しかも、この歌、井口と常田のボーカルの交錯の仕方が絶妙で、光の闇のコントラストを絶妙な温度感で繰り出すのである。
だから、安易に<どっち>の面のKing Gnuになることもなく、でも、確かに妖しいサウンドがベースになって、穏やかなのにキレキレなビートメイクの中で、楽曲がグイグイ進んでいくのである。
まとめに替えて
原点回帰した、というのともちょっと違うし、かといって、まったくこれまでの楽曲とは違う新天地を切り開いた、という楽曲でもない。
King Gnuというバンドが持っているギラギラ感を、今のKing Gnuが綺麗に磨いて、今のモードとして差し出したような、そういう不思議な魅力を感じるのである。
これは、新しくリリースされるアルバム、凄いことになるんじゃないかと、そんな予感を覚えさせてくれる一曲にもなっている。
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