<星>を描き続けるBUMP OF CHICKENの話
7月7日は七夕なので、<星>を切り口にして話を進めてみたい。
ところで、<星>が楽曲によく登場するバンドであれば、誰を思い浮かべるだろうか。
人の数だけ答えがあるかもしれないが、自分的にはBUMP OF CHICKENの名前を挙げたくなる。
出世作である「天体観測」は、ズバリ<星>が登場する楽曲だ。
その他、「プラネタリウム」や「三ツ星カルテット」、「流星群」や「流れ星の正体」と、数え上げたらキリがないくらい、BUMPの楽曲には、たくさんの<星>が登場する。
ただ、BUMP OF CHICKENを語るうえで重要なのは、星を星としてきっちり認めつつも、実はその星はある種の比喩として機能している、ということである。
BUMP OF CHICKENの楽曲は歌詞が良い、と評価する人がたくさんいる。
では、なぜBUMP OF CHICKENの歌詞は良いのか、と考えるうえで、比喩表現の素敵さは重要だと思う。
「天体観測」だって、そうだ。
この歌は、単純に若い男女が天体観測をしている様子を描写したものではない。
いや、途中までは<本当に天体観測をしている人>を描写しているように感じられるように、言葉を紡いでいる。
が、ふとした瞬間に、<君と天体観測をしている>と思っていた主人公は、実は<君と一緒になんかいなくて><実は、天体観測すらもしていない>ことに気づく、そんな構成になっている。
物語的になっており、鮮やかに情景を思い浮かべられるように、歌詞が構築されている。
なのに、楽曲の中盤からは、歌詞を聴いて想像していた景色がまったくの<嘘>であることに気づくようになっており、その景色を反転させて別の何かを描いてみせることに気がつくわけだ。
BUMP OF CHICKENの楽曲は、終盤にかけて、ある種のミステリー小説のような謎解きだったり、とんでもない仕掛けが仕込まれていることがよくある。
だからこそ、驚きと感動が、半端ないのだ。
「天体観測」もまた、このトリックが見事な楽曲である。
「天体観測」は、ただの青春ソングではないからこそ、今なおたくさんの人に支持される楽曲になっているのかなーと思ったりする。
そして、この景色を転覆する中で、天体観測とは何を指しているのかとか、望遠鏡を通して覗き込もうとしているのは何か、ということを考察するなかで、ひとつの楽曲から色んなことを感じる素晴らしさと感動を覚えることにもなるのだ。
「天体観測」の場合、<2分後>というワードを巧みに使うことで、楽曲の中に内在する時制の食い違いをフラットにさせて、過去から未来(あるいは未来から過去)への時間の流れを丁寧かつ美しく描いているのも特徴である。
BUMP OF CHICKENの歌詞の秀逸さ
しかも、当時の自分からすると、この表現の衝撃はより半端のないものだった。
それまで、自分にとってサビの歌詞って<繰り返す>ものと思っていた。
ひとつの楽曲において紡ぐメッセージはあくまでもひとつであり、そのメッセージの核となるものはサビに記載するから、サビのフレーズは<繰り返すもの>になりがちだと考えていたからだ。
でも、BUMP OF CHICKENのフレーズって、そういう構成とはまったく違っている。
フレーズのひとつひとつに独特の意味合いを帯びせており、ひとつの楽曲全体が大きな比喩となって、真の意味(?)はその比喩の先にある、みたいなケースもたくさんあるわけだ。
「K」然り、「スノースマイル」然り、少しずつ言葉を積み上げるからこそ描くことのできる物語性と感動が、BUMP OF CHICKENの楽曲にはあるんだよなあ、というそういう話。
よくBUMP OF CHICKENは初期と今で変わったバンドだ、ということもあるけれど、こういうBUMP OF CHICKENならではの表現に関しては良い意味で変化を感じさせないと思っている。
一見すると●●のことについて歌っているように見えるけれど、言葉を丁寧に紐解くと▲▲のことを歌っているのではないか・・・みたいな表現の秀逸さは、今なお色褪せることなく、輝いている。
楽曲全体をひとつの比喩として表現する、BUMP OF CHICKENならではの美しさを実感することが、今でもよくあるのだ。
思えば、「なないろ」なんかもそういう楽曲だったよなーと思ったりするし。
まあ、何がいいたいことをいうと。
BUMP OF CHICKENが<星>を通して何を描こうとしているのかを考えるのかは、BUMP OF CHICKENの歌詞の美しさを考える上で、わりと重要だよねーということである。
まとめ
そして、七夕だからこそ、<星>のことを考えた時、改めて<星>を描き続けるBUMP OF CHICKENの凄さを実感したという、そういう話。
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