前説
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星野源がサブスクを解禁したことで、より昔の曲にアクセスしやすくなった。
で、星野源って今でこそ国民的アーティストになったわけだけど、わりと「SUN」以前はまだサブカル的な立ち位置だったというか、必ずしも音楽好きは全員聴く!みたいな感じの音楽ではなかったように思うのだ。
逆にいうと、今となってはあまりにも国民的な人気になってしまったのでいまさら追いかけるのもちょっと・・・みたいな人もいるのではないかなーと思ったりして。
別に自分は昔から星野源を追いかけていました!ってほどの人間ではないけれど、せっかくサブスク解禁になって色んな楽曲にアクセスしやくなったんだから、今まで星野源が好きだった人も、まだ星野源を聴いてない人も、このタイミングでみんな聴いちゃおうぜ!ということである。
で、このタイミングにあやかってドサクサにまぎれて、俺が好きな星野源もお伝えしようという魂胆なのである。
星野源のアルバムはちょうど5枚で、各アルバムから2曲紹介したら10曲。
「名曲10選」ってタイトルはいかにもな音楽ブログっぽいし、数字としても区切りが良い。
ということで、そのノリで紹介していこうと思います。
では、どうぞ。
ばかのうた
ばらばら
サビと同じメロディーのマリンバで始まるこの歌。
SAKEROCKではギターとマリンバを担当していた星野源だからこその音作り。
そして、何より歌詞の内容。
タイトルにもあるように「ばらばら」であることの素晴らしさを歌っている。
ふつうのポップスなら、ひとつになろうよということを歌うんだけど、そこに対する否定がある。
しかも、単に否定をするんじゃなくて、だからこそ手をつなぎ合える希望も提示していて。
これって「恋」「Family Song」のような代表曲とも通底している価値観だと思うんだけど、星野源ってマイノリティーであることも、マジョリティーと同じ「ひとつのあり方」として認めあう視座がはっきりとあるように感じる。
単に耳障りの良い言葉を並べた大衆ソングなのではなく、目に見えづらい排斥されがちな人たちも視界に入れながら、それを並列して歌にしていく。
そういう素晴らしさがあるように思っていて。
で、星野源の原点である「ばらばら」でも、それが歌われている。
くせのうた
ファーストアルバムの代表曲みたいな位置の曲で、チョイスとしてはベタでしかないんだけど、やっぱりこの歌は外せない。
この歌でもマリンバが存在感を示しているんだけど、この時期の星野源はあんまり音をカラフルにしておらず、弾き語りでライブをすることが多かったこともあって、一人でライブをしても映える曲が多い。
だから、シンプルにメロディーラインとフレーズがすっと入り込む歌が多い。
星野源の優しい歌声に寄り添ってしまう。
エピソード
湯気
この歌は初期の星野源の代名詞である「くだらないの中に」のカップリングとして収録されていた曲でもあるんだけど、この歌はリズムに対する意識が面白い。
サビで強調するように入ってくるハンドクラップもそうだけど、全ての楽器がリズムを意識した音の鳴らし方をしている。
そして、独特のリズムを泳ぐ、弾き語りでも通用しそうなメロディー。
これは星野源が『YELLOW DANCER』で達成したテーマとも通ずる。
簡単にいえば、ブラックミュージックを下地にした音楽に、親しみの強い日本のポップス的の融合という星野源の企みがこの段階からでも堪能できるのである。
予想
シンプルなアレンジの楽曲に限ってキラーフレーズを忍ばせるのが星野源のやり口で、なんとなく爽やかで優しい感じの曲だなーと思っていたら、ふとしたタイミングでぐっとくるフレーズがやってくる。
この歌の最後にある<幸せになれ 僕は側でみてる 意外と近いんだ 遥か遠くても>。
これがすごく良い。
しかも、このフレーズが終わると余韻を残さず、さらっと終わるのもまた良いのだ。
星野源の人柄が出ているような歌。
ネガティブな歌詞であったとしても、ほっこりした気分になるのは、どこかその眼差しが温かいからだと思う。
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Stranger
パロディ
ホーン隊が存在感を魅せるにぎやかな一曲。
でも、サビが終わるとなぜか切ない気持ちになる不思議な一曲。
星野源の歌って音のバランスがちょうど良くて、アプローチとしては様々だとしても、決して「一度に鳴らす音の情報過多」にはならない心地よさがある。
この歌だって、もっとキラキラさせようと思ったらいくらでもできただろうに、どこか隙間も感じさせているというか、ブルージーな匂いも少し漂うみたいなところがあって、そこが良いのだ。
この歌もそんな歌のひとつだと思うし、ラララ〜の哀愁感がとても推せる。
ある車掌
個人的には星野源の声ってそこまで好みではないんだけど、不思議とバラードもめっちゃ聴けるというか、聞き惚れてしまうのである。
これは星野源が音とメロディーの両方にこだわったミュージシャンだからなんだろうけれど、面白いのは「ある車掌」みたいなシンプルめのアレンジの歌でもそれを感じられるということ。
かつ、歌詞も良いんだから本当に全本位で無敵だなーと思う。
美しいメロディーと、そのメロディーに見合う壮大で優しげな歌詞が魅力の一曲。
YELLOW DANCER
地獄でなぜ悪い
星野源のシングルだったらこの歌が一番好きかもしれないっていうくらいの個人的なフェイバリットソング。
地獄というワードを使った歌で、ここまで愉快で希望に満ちた歌にできるのは星野源だけなのではないかなーと思う。
あと、昔はけっこうその園子温(という映画監督の映画)が好きで、そんな大好きな園子温の映画に星野源が出ることになり、おまけに主題歌も担当することになったということで、当時はかなり嬉しくて公開して速攻で映画を観に行ったりもした。
そういう思い出補正もあって、すごく好きな一曲なのである。
Snow Men
ブラック・ミュージック色の強い「YELLOW DANCER」の中でも特にブラックミュージック色が強い一曲となっていて、リズムの刻み方や音の鳴らし方がとにかく気持ち良い。
今でこそ、ポップス成分も交えた横揺れソングって増えたわけだけど、間違いなくそこを開拓し、リスナーに馴染み深いものとして植え付けたのは星野源の「YELLOW DANCER」に収録されている様々な楽曲だと思うのだ。
耳を溶かされるような心地。
星野源だからこその一曲だと思う。
POP VIRUS
Pop Virus
この歌を初めて聴いたとき、星野源、まじでやばいところまで来たなーと思った。
音楽的な話をすれば、ヒップホップ的な要素やR&B的な要素も取り入れた歌って話になるんだろうけれど、要は日本のポップスとしては明らかに耳馴染みのないリズムパターンや、楽器の鳴らし方を何食わぬ顔で取り入れて、それを文句のつけようがないポップスに仕立て上げてしまうところにやばさを感じるわけだ。
しかも老若男女関わらず、聞き入ってしまうような大衆的な名曲に仕立て上げてしまう。
だからこそ、新作が毎回最先端になるし、当然焼き直しなんてありえなくて。
でも、変わっていく部分に聴き手のほとんどが納得していしまうという凄さ。
アイデア
一曲の中にアイデアを詰め込みすぎで、もはや暴力的なものすら感じてしまう。
しかも星野源がすごいのは、単に音楽的に素晴らしいだけじゃなくて、ミュージシャンならではの自己表現も徹底しているということである。
自分が表現したいことややりたいことがベースにありながらも、きっちりリスナーが聴きたいものも提示する。
このバランス感覚が素晴らしすぎて。
で、「アイデア」なんてその真骨頂なのである。
その辺りに関しては別記事にも書いているので、よかったら読んでみてほしい。
関連記事:クソって言いたい、星野源の「アイデア」評
まとめ
というわけで、結論、全て名曲ということで落ち着きました。
アルバム5作品でここまで様々な音楽ジャンルを横断し、かつアルバムごとにきっちり自分の音楽観を提示できているアーティストはそうはいないよなーと思う。
しかも、サブスク解禁に合わせてさらに音楽的に面白いことをやろうとしているのだから、目が離せない。
星野源だけは、間違いなくこれからも期待を超えてくるんだろうなーと思う。
それが今は楽しみだ。
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