この記事の一つ前に世代ごとにロックバンドの音の鳴らし方に違いがある、という話を書いた。
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そして、少しずつ世代ごとの音楽的な違いが顕著になり、そのうちにベテランがやっている音楽は古臭く感じてられるようになってしまい、少しずつ若者からスルーされてしまう現象が起こる。
ベテランは厳しい局面を迎えることになる。
その一方で、インディーズの頃は小さなライブハウスで切磋琢磨していたのに、他の同世代バンドとは比べ物にならない集客数を誇るバンドも現れてくる。
フェスではいわゆるヘッドライナーであり、客寄せの切り札的扱いをされるようなバンドである。
その中でも、90年代後半結成組ならBUMPの存在が際立つと思う。
逆に言えば、この時代に結成されたバンドで、今なお全国アリーナツアーが成立するバンドなんて、アジカンやエルレくらいではなかろうか。
昔の勢いなら行けたバンドでも、記念碑的な武道館ライブならソールドするバンドでも、全国のアリーナツアーの完売はなかなかに難しいわけだ。(そのアジカンだって、昔の曲はともかく、新譜はそこまで広い層に刺さっていない気がするので、少しずつ集客数に陰りは見えているが)
また、そのひとつ下の世代となる00年代始めの結成組となると、RAD、ドロス、サカナクション辺りが抜きん出た存在になっている印象。
(UVERやワンオクも本当はこの中に入るのかもしれないが、彼らは少し特殊な受容をされている気もするので、今回は別枠扱いとする)
フェスにおいては基本ヘッドライナーで、もちろん超満員で、ワンマンライブにおいてはどんな場所でやっても基本即日完売、アリーナくらいのキャパになって、ようやく即完は回避するレベルの集客数、という感じのバンドたちである。
若手バンドがどんどん勢いが出ており、メンバーの大半が30代後半に差し掛かっているバンドは軒並み集客数を落としている中、上記バンドに限っては集客数を伸ばしているわけだ。
そこがすごい。
ところで、彼らは他の同世代バンドと違い、なぜそれを達成することができたのだろうか。
ここを改めて考えてみたい。
やはりキーワードとなるのは「世代」という言葉だと思う。
おっさんバンドが集客数を落とす一番の理由は、昔はライブハウスにきてくれていたファンが結婚やら子育てやら、生活環境の変化のなかで「ライブにいくことから足を洗う」からなわけだ。
特に遠征するファンのおかげで地方公演もソールドしてたバンドなんかは、遠征ファンの「ライブからの卒業」における影響をモロに受けてしまう。
現状維持をするためには新規ファン(つまり、下の世代のファン)を獲得する必要があるわけだ。
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しかし、不思議なもので、演奏技術ならベテランバンドの方が圧倒的に上なはずなのに、まだまだ荒削りで「上手い」といえないけれど、熱量だけは確かにあるような、若手バンドに若者は魅了されがちなのである。
当然ながら、ベテランバンドで、若者をまったく魅了できないバンドは必然的にお客さんを減らしていく。
それでも、2000年代前半と違って、今はフェスシーンの活性化というものがある。(2000年代前半は今よりもCDが売れていたにも関わらず、今ならヘッドライナー級のメンツを揃えていたにも関わらず、フェスのチケットがソールドしないことなんてよくあった)
なので、比較的色んなバンドの演奏を聴くチャンス自体はある。
実際、ベテランバンドは軒並み集客数を減らす一方で、怒髪天のようにここにきて集客数を伸ばすベテランバンドもいる。
これは、フェスシーンの活性化が大きく影響していると思われる。
間違いなく、下の世代との接触機会自体は多いわけで、ここで若者たちの心を掴めることができるかどうかがバンドの命運を大きく握っている。
サカナクションやドロスはそれに成功したから、地位を築き上げることができたわけだ。
もちろん、ここでいう「世代」とは何も下の世代だけの話ではない。
より上の世代を取り込めているのか、というのもポイントとなる。
BUMPがすごいのは、家族ぐるみでファンとして取り込んだり、ライブハウスという文化には一切親しみのない人にも支持されていたりするところである。
メディア露出に積極的、というわけでもなかったのに、だ。
話が少し逸れたが、若手バンドマンでも2極化が生まれている。
いわゆるライブキッズにしか向いておらず、その層にだけ興味をもってもらうような音楽を作るバンドと、より広い世代に向けて届けることを意識して「マイルド感」を強めているバンド。
また、Suchmosのように、そもそもライブキッズよりも少し年配の方がウケが良いバンドの台頭もあったりして、そういう意味でロックシーンは面白いことになりつつある。
いずれにせよ、ただの一過性のムーブメントで終わらせてしまうのか、長く根強く支持されるバンドになるのかの違いは「世代を越えた需要」が大きなキーワードとなる。
じゃあどうすればそれが達成できるのか?という問いが生まれるかもしれないが、この問いに対して明確な解答ができるなら、僕は今頃レコード会社ででかい顔してマネージメントをしていることだろう。
が、ひとつ言えるとするならば、音楽的な雑食性と、変わりつつも芯の曲げないアイデンティティ、というのがキーワードになるのではないかと思う。
つまり、下記が重要となるわけだ。
・音楽的変化の貪欲さ
・アルバムごとにカラーが変わる挑戦心
・音楽的な要素が多重的(ジャンルの垣根の越え方と、邦楽洋楽問わないエッセンスの取り込み方)
・ビジュアルに対する意識の高さ(これは見た目とかだけの話ではなく、視覚的魅せ方すべてを含める)
・他のバンドにはない個性
エトセトラ。
平たくいえば、それは「成長」という言葉に言い換えられるかもしれない。
まあ、こんなことを言うと、売れてないバンドだって「変化」は常にしてるよ、という指摘が出るのかもしれないが、この「変化の仕方」がなによりのポイントであることは間違いない。
が、これに対するモデルをさらっと提示できるなら、それこそ僕はレコード会社ででかい顔してマネージメントしているわけで、これ以上具体的に述べるのは正直難しい。
まあ、この辺りの個別事象についてはまた以降の記事で少しずつ書いてみたいなあ、と思ったり思わなかったり。
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