go!go!vanillasの「SHAKE」の、我の道を突き進む感。

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どんなバンドも売れていく過程の中で変化していく。

特にインディーズからメジャーに変わる中での変化は劇的なものが多い。

あえていえば、高校までは田舎で純朴で過ごしていた人が、大学に進学して都心に住むことをきっかけに、いわゆる”大学デビュー”を果たしたみたいな。

それくらいに、劇的な変化を遂げるバンドが一定数いる。

それだけメジャーデビューをするということは大きなことだとは思うのだ。

たくさんの人が関わるようになるのだろうし、それだけ動くお金が大きくなるのだろうし。

ひとつひとつのアクションのスケールが大きくなることもあるのだと思う。

もちろん、メジャーデビューと一括りに言ってもバンドごとに異なる。

仮に凄そうなことを始めているように見えたとしても、外側からみるのと内側からみるのとでは、実態も容態も異なっていることだとは思うし。

でも。

リスナーの一人としてみると、メジャーになったタイミングで、何かが「変化」したと感じることが多いことは確かだ。

で。その「変化」って、肯定的なケースもあれば、えええええええそういう風に変化しちゃうの?大丈夫???と余計なお世話ながらに思ってしまうこともある。

そのバンドの良さがより活きるような形で、かつリスナーである自分視点で好きな部分がより拡張するように変化するのだったらいいけれど、場合によってそれとは違う方向に進んでいき、何ともいえない”量産型”になってしまうケースもある。

そういう意味でも、大学デビューも似ているのかもしれない。

周りに溶け込むファッションをしようとすれば、自ずとみんなと似たような服装をすることになるからだ。

本当の意味で服装で自分の個性を出そうものなら、浮いてしまうということも恐れも受け入れる必要がある。

音楽にも、多少なりとも、そういう部分があるように思うわけだ。

当然トレンドというものはあって、数値ベースでどういう音楽が受け入れられやすいのかを紐解けば、一定数の法則が見えてくる。

そして、全員が全員、その法則に飛びつけば、気がつくと量産型が生まれてしまうことになる。

いや、最初にその法則を見つけて、道を開拓していくのであればかっこいいし、一見するとその道を進んでいるように見えて、よくよくみると新しい道を作っているのだとしたら、それもかっこいいとは思う。

たとえば、パンクというジャンルができてそのシーンが成熟したとして、そこからポストパンクが生まれてこれまでの違う音楽性を確立して・・みたいな感じで、ひとつのジャンルができて、そこから色んなものが派生するのは見ていて楽しいし、それは素敵なことだと思う。

でも、どうみても、誰かが見つけた道にのっかるようにして、リスペクトなく、その利益だけを貪るような姿勢(のように見える)作品が「流行りの音楽」として登場すると、それはちょっとなあ〜〜〜と思うみたいな感じ。

まあ、そういう姿勢の音楽は一定数のバズは獲得できたとしても、大きな流れを生むまでのヒットにならないというか、そこにオリジナリティーを加えることができる人間こそが、本当の意味でトレンドを作ることができるのだとは思うんだけどね。

・・・前置きが長くなりすぎた。

今回の記事で書きたいのは、トレンドがどうとか、そういう話ではない。

メジャーになろうが、常に自分たちの最先端のこだわりを貫くバンドってかっこいいよな、という話である。

そして、go!go!vanillasもまた、そういう志を貫いているバンドだよなーという話である。

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go!go!vanillasの「SHAKE」の話

最新作である「SHAKE」を聴いて、改めてそんなことを思った。

というのも、「SHAKE」は彼らのインディーズ1stアルバムと同タイトルでもある。

今作は、ポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsに移籍第一弾シングルという位置付けでもあり、go!go!vanillasの新たなフェーズを示すために、あえてインディーズ1stアルバムと同タイトルにしたのかなーなんて、勝手ながらに思っている。

で。

「SHAKE」、良い楽曲だなあーと思ったんだけど、なぜそう思うのかと言えば、とにかく音が良い。

この「音が良い」という感じは、文章で言葉にするのは難しいんだけど、「SHAKE」を聴いていると、音の色に包まれるだけうっとりする聴き心地を覚えるのだ。

聞くと、今作はイギリス・ロンドンの名門スタジオMetropolis Studiosで、今作のレコーディングをしたという話らしい。そのエピソードからも、今作の「音そのものへのこだわり」を感じる。

演奏するなら日本でやろうが、海外でやろうが変わらないのではないかという人もいるけど、確かに国ごとに空気って違っていて、楽器が揺さぶる音の響きも変わる印象を受ける。だから、収音されたものを聴き比べると、言語化するのは難しい範囲で、音の色を違いを感じるのだ。

でも、コスパ史上主義の昨今で、こういうアプローチをするバンドって、ほとんどいない。

宅録でも良い音楽が作れるぜ!ミニマムな世界観で壮大な音楽が作るぜ!みたいなのが今のよくある形のひとつだと思うけれど、今作のgo!go!vanillasはそういう視点とは違う方向へ進んでいったわけだ。

どっちが良いとかはないと思うけれど、少なくとも、go!go!vanillasのこだわりは強く感じることができる。

どこで音を鳴らすかによって変化する音色さえも大切にする、そういう感度で音を作り、アレンジをしていることは確かだと思うからだ。

そして、生まれた音楽を聴いても、音の響きに何ともいえないトキメキを覚える自分がいるのだ。

これはどこでレコーディングしたとかそういうのとは関係なく、作品として触れて感じることであるのだが、それを踏まえたうえで、レコーディングはロンドンでしたという話を聞くと、より腑に落ちたという話である。

go!go!vanillasは色んなテイストの音楽を生み出してきたバンドだけど、共通しているのはトレンドは一旦脇において、自分たちの感度で「良い」と思う要素を作品に落とし込んでいるということ。

なんというか、自分たちがいる村では何が流行っているのか・・・みたいな内向きの視座で音楽を作るのではなく、外に目を向けて良いと思うもの、ワクワクするものをアレンジに落とし込んでいる印象なのだ。

「エマ」や「平成ペイン」のようにカントリー調のあるリフから展開されるリズムカルなロックは、go!go!vanillasのひとつの持ち味だった。

この頃でも、go!go!vanillasが生み出すサウンドって唯一無二だった。

今振り返っても、そういうビートメイクのバンドっていないよなーと思う。

そのジャンル性だけでもgo!go!vanillasの武器になるはずなのに、go!go!vanillasは「それ」に固執するのではなく、常に最先端を更新し続けていった。

だから、go!go!vanillasってパブリック的にこういうサウンドのバンドだよね、という要素が固まっても、良い意味でそこに執着することなく、自分たちの道を突き進んでいる印象なのだ。

別のルーツも参照しながら、自分の思う「良い」を更新していき、己のロックを研ぎ澄ませていく。

「SHAKE」は、今のgo!go!vanillasの感度が表現になった一曲だと思っている。

そして、自分の思う「良い」に妥協がないから、ぐっとくるのだ。

まとめに代えて

go!go!vanillasは、go!go!vanillasの美学でもって、作品を生み出す。

「SHAKE」を聴いて、改めて、そういう強い意志を感じたし、その美学に触れると、言葉にできない興奮を覚えた自分がいたのだった。

移籍したgo!go!vanillasは、きっとこれまでとまた違う世界観を生み出してくれるのだと思う。

今は、それが楽しみで仕方がない。

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