Mrs. GREEN APPLEの「Soranji」と「私は最強」、なんだかエグい件

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バンドの活動が長くなってくると、作品のテイストが変わったと感じる瞬間って訪れる。

いわゆる初期曲と最新曲を比較して、バンドの変化を実感する瞬間ってあると思うのだ。

でも、思えば、これって当然といえば、当然のことだと思う。

なぜなら、バンドは生き物だからだ。

バンドを構成しているメンバーは成長もする。

考え方が変わっていくこともあるだろうし、大切にしている価値観や美学が変わることもある。

外側から刺激を受ける事柄だって変わるだろうし、関わるスタッフやチームの変化もバンドの変改に影響を与えるだろうし。

特に活動休止があったり、バンドのメンバーに変化が生じたりすると、なおのこと、だ。

そういう変化は加速することになる。

・・・・普通だったら。

でも、Mrs. GREEN APPLEって、そういう「普通」とはちょっと異なる変化を遂げている。

そんな気がするのだ。

というのも、Mrs. GREEN APPLEは活動休止を経て、メンバーに変化が生じたバンドだ。

そして、そこで明確な変化を遂げたバンドだ。

活動再開時は今までのビジュアルを一新した部分があって、良くも悪くもバンドの新章に突入した感があった。

故に、ここからどんどん他のアウトプットも変化していくのだと思った。

あの頃の余韻を残さないまでに。

でも、目に見える変化が鮮やかだった分、楽曲を聴いていると、こうも感じるのだ。

変わる部分ももちろんあるけれど、それ以上に変わらない部分があるぞ、と。

「Soranji」を聴いて、そんなことを思ったのである。

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本編

「Soranji」の話

Mrs. GREEN APPLEって、人によってはキラキラしているバンドと捉えるかもしれない。

確かにキラキラしている部分を強く提示する楽曲もある。

でも、それ以上に悲しみや喪失をまっすぐに歌にする印象のバンドだ。

「Soranji」もまた、そういう暗い感情に切実に向き合いながら、大森らしい視座で言葉をしたためた歌のように聴こえる。

これは実際に歌詞を聴きながら聴いてほしいが、そこで出会う暗さはどこまでもまっすぐである。

だからこそ、「我らは尊い」のフレーズの輝き方が尋常ではないのだ。

そして、ここでしたためれている言葉って、狙って書いた言葉というよりも、大森が純粋に感じて思ったことを歌詞にしている印象なのだ。

感動させようとか、共感させようというテンションの言葉ではない、とでも言えばいいだろうか。

この歌って「裏切り」と「大切が壊れること」も「アイロニー」も「ズタズタになった芯」みたいなネガティブなフレーズが出てくる。

対して、歌の表情をがらりと変えるトドメのフレーズが「尊い」なのだ。

きっと共感ベースの歌であれば、こういう歌詞構成をしないと思うような構成で、歌詞が出来上がっていることを実感するのだ。

そして、この言葉にこういう壮大さとゴージャスのアレンジとコーラスにしているのが印象的である。

とにかくたくさんの人に届いてほしいとか、バズればいいとか、マーケティング的に受けたらいいとか、そういうテンションで音を紡いでいる感じもしないのだ。

もっと全然別のところに大切にしているものがある、そんな気がするのだ。

歌詞にある通り「伝えたい」の温度感がただただ強いともで言えばいいだろうか。

100人いたら数人にしか届かないとしても、それでもよくて、届けるべき人に届けるように言葉を紡ぎたい。

そんな矜持を歌の中に、自分は感じてしまったのである。

ともかくも、でっかい絶望を目にしつつも、絶望のままで終わらない眼差しで言葉を紡いでいるその感じに、Mrs. GREEN APPLEの変わらなさを自分は覚えたのである。

「私は最強」の話

対して、「私は最強」は軽快なリズムメイクが印象的な華やかなナンバーである。

この軽快かつポップで弾けるメロディーラインにもまた、Mrs. GREEN APPLEらしい瑞々しさを感じてしまうのである。

大森ならではのハイトーンボイスと、高い技術力から繰り出される圧巻のバンドアンサンブル。

そして、ひとつの展開で押し切るのではなく、怒涛のごとくで表示を変えていくアレンジの力。

Mrs. GREEN APPLEの音楽が持つ魅力が凝縮したような楽曲展開にうっとりさせられるのである。

そして、気づく。

「Soranji」も「私は最強」もめっちゃ求心力のある歌だなあ、と。

まとめに替えて

Mrs. GREEN APPLEって確かに変化したバンドである。

その一方で、「Soranji」や「私は最強」を聴くと、バンドの変わらなさも同時に実感することになる。

思えば、Mrs. GREEN APPLEって常にそういうバンドだった。

想像もつかないような大変化をする一方で、ずっと変わらない魅力も解き放つバンドだった。

もちろん、変化のひとつひとつに思うところがある人はいるかもしれない。

好き嫌いで判断したら、ひとごとにその結論が異なることもあるかと思う。

でも、今作を聴いて、自分は改めてMrs. GREEN APPLEの音楽が良いなあと感じたし、このバンドにはこのバンドにしかない魅力で溢れていることを実感した。

良いなあと思う部分の、変わらなさを実感したのである。

そして、それをあえて三文字の言葉にするなら、「エグい」と感じてしまったので、こんなタイトルで言葉をしたためた、そんな次第。

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