Mステについての前説
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Mステは1986年から放送された音楽番組であり、自分の人生よりも先輩の長寿音楽番組である。
音楽番組といえばまず頭に浮かぶのがMステだったし、Mステをきっかけにして色んな音楽を知ることができたところもある。
小学生の頃は同時間帯に放送していた「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」を視聴していたクチではあるんだけれど、能動的に音楽を聴くようになってからは、ほんと毎週、Mステを食い入るように観ていた。
好きなアーティストが出るときは特に食い入るように番組を観ていたものだ。
まあ、某事務所との忖度によってDA PUMPやw-inds.といったライジングプロダクション所属のアーティストが出演できないという不満はあったものの、お茶の間のスター、インディーズバンド、あるいは海外の大御所アーティストまで、バラエティ的な「余計なイジり」は排し、様々なミュージシャンが生放送特有の独特の緊張感を持ちながらも、圧巻のパフォーマンスを繰り広げる音楽番組は、まさに夢みたいな世界であった。
Mステの回想
そんなMステ。
自分の中で特に記憶に残っているのが二場面あって。
ひとつはポルノグラフィティなんだけど。
「幸せについて本気出して考えてみた」を披露するためにMステに出演したとき、演奏前のトークでボーカルの岡野昭仁が、自身の盲腸手術のエピソードを披露したのだ。
細かな内容やその時の空気感はもう忘れちゃったんだけど、わりと赤裸々に盲腸話をしていただけは妙に鮮明に覚えている。
で。
そんなポルノがいざ演奏のパフォーマンスに入ると、いつものように落ち着いたステージで迫力あるパフォーマンスをしていた。
んだけど、間奏(だったと思うんだけど)のタイミングで、その盲腸手術をステージで表現するかのように、岡野昭仁は股間あたりに手を持っていき、斜めに腕を動かしながら「剃毛」のパフォーマンスをしたのだ。
この頃は比較的ピュアだった自分としては、なんかやばいものを観てしまった気がして、妙なムズムズさを覚えたものだった。
自分のことじゃないのに、なぜか妙な恥ずかしさを持ったことを今でも覚えている。
そのとき一緒にテレビを観ていた母親は「なにあれ?ギターの弾く真似?」と言っていた。
母は天然だった。
なお、ポルノは自身のラジオ番組では、より過激な下ネタを嬉々として語っていることを知るんだけど、そのことを僕が知るのはもう少しあとになってからのことである。
Mステの話に戻ろう。
もうひとつ自分の中で記憶に残っているのは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTがMステに出演したときの話だ。
これは今でもネットで語り継がれている話だから多くの方も知っているかもしれないが、この放送では、当時一斉を風靡していたロシア出身のデュオt.A.T.u.も出演していたんだけど、彼女たちはオープニングのみ出演をして、以降の出演を拒否して楽屋にこもったまま出てこなくなったのである。
そのため、たまたまこの日生バンドで出演をしていたミッシェルが、急遽、追加でもう一曲演奏することになったのである。
あのミッシェルがMステに出演する!というところや、生放送によるトラブルで、このあとどうなってしまうんだろうという緊張感や、トラブルによって2曲目を披露したギラギタなミッシェルのパフォーマンス含めて、全てが記憶に残る伝説の放送回だったように思う。
そういう部分も含めて、Mステはワクワクする音楽番組だったのだ。
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現在のMステ
だがしかし、やがて自分は少しずつMステを観なくなってしまう。
それでも、放送時刻に家にいたらMステ観ることが多かったし、色んなアーティストが集う生放送の音楽番組だからこその独特の緊張感は、他の音楽番組にはない良さだったように思うのだ。
他の音楽番組とは違う魅力を持った音楽番組だと思うのだ。
けれど、ここのところはわけのわからん素人企画や、中身のない過去の振り返りに尺を使っていて、肝心の出演アーティストのパフォーマンスが「ついで」のような扱いになっていることも少ない。
行列できる法律相談所が、ただの芸能人のトーク番組になってしまい、「法律相談」がおまけになってしまったような変化をそこに感じてしまった。
音楽番組だったMステは、音楽も扱う番組に成り下がっているような気がしてしまったのだ。
そんなMステが放送時間を変更するという。
それに伴い、下記のような変更を行うことが、番組からは発表されている。
より楽しく、より豪華な生音楽番組」を目指してリニューアルし、番組ならではのスペシャルコラボやカバー、俳優やスポーツ選手といったゲストとアーティストのトーク、生投票システムなどの企画も予定されている。今回の枠移動に際し、小田隆一郎ゼネラルプロデューサーは「創業から33年にして訪れた初のお引越しを刺激的なチャレンジと捉え、日々、熱い議論を交わしています!
引用元:音楽ナタリー
時間帯が変わることになって、18歳未満のアーティストは生出演できなくなってしまうとか、金曜ロードーショーと放送時間が被って困ってしまうというところもあるのだが、気になるのは「より豪華な」という言葉の真意。
引用した言葉だけでみると、この番組でしか観ることできないパフォーマンスや、トーク時間の増大、生放送番組ならではの視聴者参加型の企画のことを指して「豪華」と表現しているようにみえる。
まあ、ただ粛々と音楽番組をやっていてはもう数字が取れないところまで来ていることは想像に固くないし、番組内で様々なトライをすること自体は悪くないと思う。時代の流れだと思うし。
が、今のMステの企画がことごとく寒いことを考えると、「より豪華な」の方向性があまりよろしくないものなのではないか?という懸念はどうしても沸き起こってしまう。
少なくとも、音楽好きにとっては、良い方向に向かうとはなかなか想像できない。
もちろん、比較的硬派な音楽ファンにもウケが良い関ジャムも、Mステと同じスタッフが関わっていることを考えると、必ずしもMステのスタッフ陣を無能と切り捨てるのは違うと思うし、あの時間帯の音楽番組だからこそ「音楽が好きでない視聴者」にも興味を持ってもらう番組作りをする必要があることはなんとなく想像できる。
でも、今のMステがただでさえ出演者の音楽を「オマケ」にしてしまっている現状を考えると、今後のMステが自分にとって面白い音楽番組になることはないのかなーと思ってしまうのだ。
憂いつつも期待したくて
変わっていくことを嘆いても仕方がないし、変わりながらもMステには末永く続いていってほしいなーとは思う。
色んなミュージシャンにとって憧れの音楽番組として、今後も残っていってほしいなーとは思うのだ。
けれど、放送時間を変えることで、より音楽が「ついで」になり、Mステが音楽風バラエティー番組に姿を変えるのだとしたら、
もにょる部分が消えることはないよなーと思う。
正直、今Mステを能動的に視聴している人ってどんな人なのかはわからないし、そういう視聴者がどこに面白みを感じているのかも正直よくわからないから、どう改変することが一番良いのかはよくわからない。
んだけど、音楽を好きな人にとって、Mステが大切な番組であり続けたらいいなーとは思うのだ。
「豪華」の方向が、そういうふうに向かってくれたらいいのに、と今はそんなことを思うばかりである。
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