ズーカラデルというバンドについて
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北海道出身のスリーピースバンド、ズーカラデル。
ズーカラデルというバンド名は、動物園から出る(ZOOから出る)という所から来ているらしい。
ズーカラデルの魅力とは?
飾らない。
それが彼らの音楽の真たる所ではないかと思う。
人って飾ろうとしがちだ。少しでも、かっこよく、きれいに見られたいと思う人が多いように感じる。
それは音楽にも言えると思う
ライブハウス育ちのバンドでも音を加工することが増えてきた。
エフェクトを使ってギターやベースの音を着飾ったり、バンドの核となる楽器以外の音も積極的に取り入れることも多い。
音を足せば足すほど華やかさが出るし、音もキャッチーになり、ノリやすくなる。
そして、そういう歌は、往々にして歌詞も綺麗すぎると感じてしまう。
だが、ズーカラデルの音楽にはそれがないのだ。
歌詞も歌も演奏も全てが純粋で、全く飾っていないのだ。だから、すーっと心に入っていく。
私が初めて聴いた曲は「アニー」。
ハマったきっかけとなったのは「ダンサーインザルーム」だ。
聴いた瞬間、良い音楽だと感じた。
スリーピースならではの楽器のサウンド。
シンプルながらも、一つ一つ丁寧に鳴らされている感じがした。
とても温かく、優しさに満ちている。
メロディーやサウンドはもちろんだが、私はズーカラデルの歌詞にとても惹かれた。
歌詞には、「僕」から見た「君」を歌っているものが多い。そこからは恋の感情も汲み取れるが、恋愛ソングという感じはしない。
それよりも、「僕」と「君」の2人の物語を見ているような感じがする。
つづられる僕の言葉は、驚くほど素直である。
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かっこ悪いと思ってしまうことや、恥ずかしくて隠してしまいそうなことも、ズーカラデルは素直に歌う。
素直に歌うと言うと、なんだか単純なことをしているだけのように聞こえてしまうが、それは違う。
人間の感情は複雑だ。
中には汚れた部分や矛盾した部分もある。
それを素直に表現するのは、かなりの技量と勇気を要する。
けれど、ズーカラデルは恐ることなく、そこに切り込む。
「ダンサーインザルーム」では<君が 悲しい時にも 僕は笑ってられるのさ やらしい夢を見たり>というフレーズが登場するし、「恋と退屈」では<期待はずれの僕は今日も 泣いてた時の君の顔 思い出して 安心しては 耳を塞ぐよ>というフレーズが出てくる。
この辺りのフレーズは、なんだかちょっとクズっぽさがある。
こういうクズっぽさも正直に歌詞にしてしまうところに、人間らしさが感じられて、好感が持てるのだ。
ズーカラデルの歌詞はこのように歌の主人公である「僕」の気持ちを、見事に描いてみせる。
だから、心にぐっとくるのだ。
また、「僕」から見た「君」の表現がとてもリアルだ。
君の姿が自然と頭に浮かんでくる。
どこか寂しさと切なさを感じさせる「君」は、とても魅力的だ。
不器用で、苦しみを抱えながらも、懸命に生きる2人はとても愛おしく、そんな2人の生きる世界はとても美しい。
きっとここまで純粋で美しい世界は、現実にはたぶん存在しないだろう。
いや、実際は存在するのかもしれない。
しかし、毎日色んなことに追われる生活の中で、そんな世界があることを、いつの間にか忘れてしまう。
ズーカラデルの音楽は、そんな世界を思い出させてくれるような気がする。
ズーカラデルの音楽にどこか懐かしさを感じるのは、そのせいなのかもしれない。
ズーカラデルのライブについて
この前とある対バンで、彼らのライブを初めて観た。
一切煽りがなく、MCでも無理に手拍子をしなくていいということを何度も口にしていた。
「自由に楽しんでくれ」というスタイルのライブだったので、ひたすら良い音楽に集中することができた。
特に「アニー」という曲では、心の琴線に触れてくる大好きなフレーズを聴くことができて、つい泣きそうになった。
「ねえ素晴らしくないけど 全然美しくないけど YOU AND I 泥だらけの僕らの世界を歌え 何度も」
ズーカラデルの飾らなさが詰まったこのフレーズにグッときて、泣きそうになってしまったのだ。
そんな飾らないフレーズを歌うズーカラデルは、ライブでも飾らない姿勢で、最後まで歌い続けた。
ライブハウスで彼らが作り出したあの空間は、とてつもなく平和で、美しかった。
それはズーカラデルが紡ぐ歌詞に似た、そんな美しさだった。
筆者紹介
ユニゾンがきっかけでバンドにハマった高校生。
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