繊細描写で心を掴む、情緒系ソング特集

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前回、当ブログで下記記事を掲載した。

記事リンク:<等身大 せつな系の日本語ギターロックがキテいる件>

上記はテレビ朝日系の音楽番組「musicるTV」と連動して行った企画記事である。

今回、その第二弾として<繊細描写で心を掴む、情緒系ソング>という特集を行うことになった。

取り上げた楽曲や解説(?)については、番組内でも行っているのだが、番組の場合、尺の都合で全てを取り上げることが難しいので、番組内の内容を補足する形で、取り上げた楽曲の紹介をブログ内でも記載させていただくことにした。

よければ、番組と合わせて楽しんでもらえると幸いである。

それでは、どうぞ。

繊細描写で心を掴む、情緒系ソング

フジファブリック 「赤黄色の金木犀」

フジファブリックはどの歌も風景描写が丁寧で、その風景描写から微妙な感情の揺れ動きを表現するのが秀逸なバンドである。その中でも、「赤黄色の金木犀」は秋が持つ感傷的な空気を切り取りながら、やるせなさや胸が詰まるような感情、空気感を絶妙な形で落とし込んでいる楽曲である。

冷夏が続いたせいか今年はなんだか時が進むのが早い

影が伸びて解らなくなった

など、夏から秋へと変化していく場面のひとつひとつに、内面に宿る確かな感傷をのせながら描いてみせることで、聴き手の中に宿る情緒に揺さぶりをかけていく。

かつ、この歌ってテンポやメロディーは穏やかな歌ではあるものの、何とも言えない迫力を宿しているのも特徴で。

メロとサビで表情が変わるボーカルの温度感あったり、Dメロで魅せるオルタナ感のある躍動したバンドサウンドが、哀愁が漂う楽曲でありながらも、色んな感情に揺さぶるをかける楽曲になっている。

きのこ帝国 「金木犀の夜」

きのこ帝国はシューゲイザー的な轟音で魅せる楽曲が多いが、「金木犀の夜」は澄み切ったサウンドと洗練されたボーカルで、うっとりとした気持ちで聴くことができる楽曲になっている。

歌の中でベースに描かれるのは男女の恋愛模様。

ただし、この二人の付き合いはおそらく過去のものになっていることが予感できるフレーズが並べられている。

二人の思い出の記憶のトリガーとして<金木犀の香り>を象徴的に置きつつ、思い出のエピソードとして<深夜のコンビニのアイス>というワードを登場させることで、夏から秋が深まる中、それこそ<金木犀の香り> が漂う季節までの移り変わりに<何か>があったことを予感させるフレーズ展開になっているのが良い。

そして、色んな感情を想起できる楽曲でありながら、佐藤千亜妃が透明感のある歌声で美しい旋律を歌い、バンドがしとしととした温度感でサウンドを重ねていく構成なのが良い。

andymori 「1984」

メロとサビのコードは原則変わらずシンプルで、テンポも穏やか。時にホーンセクションがサウンドを彩るが、アコースティック・ギターが軸になっているこの歌は、牧歌的な響きを持っており、落ち着いた気分で聴くことができるミディアムナンバーである。

余計なものが鳴っていない楽曲であるからこそ、ぐっと歌の世界に入り込むことができるのも特徴だ。

この歌、特徴的なのは「歌の視点」から感情を示す描写が一切ないことだ。<泣いていた>というフレーズがあるが、それも第三者の様子を描いたもので、歌の視点の言葉ではない。代わりにあるのは、

5限が終わるのを待ってた

真っ赤に染まっていく公園で自転車を追いかけた

赤い太陽

5時のサイレン 6時の1番星

上記のよう風景描写である。

具体的かつ想像的な景色をどんどん積み上げていき、どこかノスタルジーな世界へと誘わせてくれる。

具体的な感情を示すことはないが、ノスタルジーのある風景描写が情感に揺さぶりをかけていくし、まさしくこのテーマを雄弁する楽曲のひとつであるとも言える。

インナージャーニー 「少女」

物語調で構成されたこの歌。”少女”という登場人物が歌の主人公ではあるが、少女自体の視点ではなく、あくまでも”少女”を第三者視点で描く構成をとることで、物語感だったり歌が持つ文学性が際立っている印象。

この歌の作詞を手がけたカモシタのインタビューを読むと、『「少女」は移民や難民の子供たちのことを思って作った曲なんです』という言葉を確認することができるが、それを踏まえる/踏まえないに関わらず、ひとつひとつの描写が丁寧かつ色んなものに置き換えてきくことができるようになっており、サビでは核心に迫るようなフレーズを味わうことができる。

進めよ少女よ

染まらず生きろよ

そのまま生きろよ

上記のワードは、そのまま意味で素直なメッセージとして受け取ることができるし、テーマが明確だからこそ、聴き手の内面にある情緒にも揺さぶりがかかる印象。

また、歌詞やメロディーを軸にしたアレンジも味わい深く、透明感のある音色を軸としながら、イントロから少しずつ足し算をしていくバンドアンサンブルが心地よい。

さらに、楽曲のアウトロではバンドサウンドが激しくなることで、淡々とした道のりだった少女のこれからの道のりに、色んな展開が訪れることを予感させるような構成になっているのも良い。

まとめにかえて

・・・というわけで、今回は「繊細描写で心を掴む、情緒系ソング」というテーマでいくつか楽曲を紹介させていただきました。各楽曲の紹介のポイントは、3つ。

・とにかく風景描写が丁寧
・何気ない風景描写から、様々なことが連想させる=情緒に繋がる
・歌詞が情緒だと、ミディアムなテンポ感との結託の攻撃力が高い

上記のような感じになるのかなと勝手に思っている。少なくとも、今回紹介した楽曲には、そういう要素があったのではないかと思っている。

ぜひ一度、描写の内容やその描写が”何”を描いているのかに着目しながら音楽を聴いてもらえたら、より音楽の面白さの幅が広がるのではなかろうか。

・・・・さて、これで記事としては終わりなんだけど、一点告知があって、なんとmusicるTVとタッグを組んで音楽イベントを開催することが決まった。

題して、musicるライフ。

10月22日に東京・Shibuya WWWで開催なんだけど、メンツはあるゆえ、Chevon、MOSHIMOと強強なので、行けそうな方はよかったらチェックしてみてくださいな。

https://eplus.jp/sf/detail/3976260001-P0030001P021001?P1=1221

では、今回はこの辺で。

ではではでは。

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