THE ORAL CIGARETTESの話
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自分がTHE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)をきちんと聴いたのは2013年にリリースされた「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」がリリースされた頃。
この頃は比較的正統派のギターロックって感じのバンドで、当時のバンドシーンのムードを抑えつつも、キャッチーで哀愁のあるメロディーがぐっとくるって感じのバンドだった。
少なくとも、自分もそういうイメージだった。
で、正直なことを言うと、曲は良いけれど、そこまではブレイクしないかなーとか勝手に思っていた。
なんというか、当時人気だったバンドと比べると、どこか暗さを感じてしまうバンドだったのだ。
声のテイストとか、歌詞の方向性とか。
当時は盛り上げ方だって必ずしも上手いバンドって感じではなかったし、この頃のロックシーンにあった騒いでなんぼ!のムードと、オーラルの暗さはそこまで迎合しないんじゃないかって思っていたのだ。
ブレイクした
オーラルは2014年にメジャーデビュー。
以後、リリースする曲はことごとくヒットする。
びっくりした。
ここまで売れるなんて思っていなかったから。
ただ、オーラルの特徴というか凄さって、楽曲ごとに対する大胆な色の変え方だと思っていて。
元々、オーラルはテクっているバンドだ。
メンバー全員がトリッキーで演奏力の高いため、楽曲に対して様々なアプローチができる。
そのため、他のバンドではできない世界観を表現できるし、「暗いけど美しい」とか「美しいのに破滅的」みたいな難しい美も表現してしまう。
楽曲の色だけでも明るいものから暗いものまで幅広いのに、オーラルの山中のボーカルはそれ以上に表現内容が幅広い。
人懐っこい声で歌うこともあれば、どこか無機質な声で歌うこともあれば、アダルティーな声で歌うこともあれば、エモーショナルに声を張り上げることもあるのだから。
この多様性はオーラルだからこその魅力である。
で、多様性の引き出しに「V系」のイズムがあるところも、オーラルの唯一無二性に繋がっているのだろうと思う。
そうなのだ。
初めて聴いたときは気づかなかったんだけど、オーラルの独特の暗さってこのV系のイズムが継承されたものだったんだなーと。
で、そのV系的センスが研ぎ澄まされることで、化け物のようなバンドになったんだろうなあと思うのである。
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オーラルの世界観は独特なものになる
あくまでも自分のイメージだけど、メジャーデビューをして、BKWを掲げていた頃のオーラルは「ライブキッズ御用達バンド」だった。
オーラルから入った若い音楽好きも多かったからか、SNSでは色々と悶着が起こることもあった。
ただ、オーラルがすごいのは、既存のバンド好きはもちろんのこと、他のバンドでは見向きもしなかった音楽リスナーも虜にしてきたことである。
これってライブハウス上がりのバンドではなかなかできる人がいない。
でも、オーラルはそれをやった。
しかも、若手バンドにありがちな「〜っぽい」という呪縛からすぐに抜け出し、自分からにしかできない音をすぐに鳴らし始めて。
そうなのだ。
オーラルは間違いなく、オーラルじゃないと作れないものを作り出している。
しかも、常に変化をためらわずに。
あえて比べちゃうけれど、例えばフォーリミの場合は「ライブハウス」と「アリーナ」のふたつの軸をいったりきたりしていて、そのふたつの価値観の中で自分たちをどう置くかみたいなことに(少なくとも)今までは腐心していた気がするのだ。
ブルエンはここにきてアゲハスプリングスをアレンジャーに入れることで、新たなサウンドの境地を切り開いているが、(これまでは)変化のスピード感が決して早くなくて、人気という意味では少し緩やかな部分があった。
それに比べてオーラルは、メジャーデビューした5年間だけで、とんでもなくカラーを変えていった。
だって、毎年オーラルみるたびに「また、すげえ変わったな・・・」と思わせられる、数少ないバンドなのだから。
今のこのバンドのセトリ、もうわからんわ・・・なんてよく言ったりするけれど、オーラルほどそういう言葉がつきものののバンドはいないと思う。
で、それは単純に新曲を出してセトリを更新していくからだけでなく、とんでもないスピード感で変化をしていき、他のバンドでは絶対にやらないようなパフォーマンスも、ためらいもなく取り入れてしまうからだと思う。
こんなバンド他にはいないし、このスピード感でそれができるオーラルってすごいと思う。
まとめ
でも、オーラルってただ唯我独尊、あるがままに進むっていうタイプでもない。
けっこうコンスタントに対バンライブをやっているのもそうだし、主催フェスでは先輩後輩関係なく色んな人を呼んでいるところもそうだし。
よくいわれる話だけど、たぶんオーラルって人懐っこいバンドで、周りの人を大切にしているバンドなのだろうなーと思うのだ。
ステージ上では、すげえきわどいパフォーマンスをしている。
けれど、ステージから降りるとめっちゃ周りの人を大切にしている、そんな気がするのだ。
単純に金で地位を獲得したアーティストとは違い、ライブハウスで削ってきたバンドならではの、暖かさを持っているバンドだと思うのだ。たぶん。
で、そういう根本があるからこそ、どれだけ変わり続けても、このスピード感が変わり続けても、たくさんの人を魅了しているし、オーラルの周りに人が集まるのだと思う。
そんなふうに僕は思う。
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