yutoriにインタビューを行った件〜『夜間逃避行』とこれからのyutoriの話
[ad]
以前から個人的に勝手に注目していたyutoriというバンド。
今年はツアーや大型フェスへの出演など、より意欲的に活動を行っていた印象を受けた。
そんなyutoriは、新譜として2023年9月に『夜間逃避行』をリリースしたので、そのタイミングでインタビューする機会をいただいた。
お話させていただくのは初めてだったので、バンドの馴れ初めからスタートしつつ、今回リリースされた『夜間逃避行』はどのような形で制作を進めていったのかというところを重点的に、お話を伺わせてもらった。
それでは、どうぞ。
yutoriというバンドの馴れ初めと今のyutoriの制作の話
──どういう経緯でこのメンバーが集まって、活動することになったのか、その馴れ初めから伺ってもよろしいでしょうか?
浦山:僕と古都子と内田に共通の知り合いのバンドマンがいて、その知り合いにメンバーを集めてもらいました。ベースだけいなかったので、古都子に部活の後輩だった太一を連れてきてもらい、4人が集まったことがスタートです。
──最初の段階では、本格的に活動しようとしてなかったという話も伺ったのですが、実際そういう感じだったのでしょうか?
浦山:そうですね。とりあえず、なんとなくでという感じでした。
佐藤:レコーディングを体験してみようっていう。
浦山:その一曲のプロジェクトという感じでしたね。
──その1回目のきっかけは誰主導だったんですか?
内田:きっかけで言えば、ボーカルですかね。
浦山:ただ、最初の曲は作詞作曲はその知り合いのバンドマンがやってくれて、編曲だけ自分たちでやったんですけど、そのときの主導はその知り合いのバンドマンがやってくれました。
──そこから、なぜ今のような形で活動するようになったのでしょうか?
浦山:一曲目を出したときにありがたいことにすごい反響があって、色んな方から「次が楽しみです」とか、ライブのお誘いをいただいたり、そのタイミングからちゃんと活動していこうという意識にたぶん変わっていった気がします。
──当時と今でバンドの関係性は変わりましたか?
内田:組もうって集まったときは初対面だったので、(当時と比べると)相当変わったのかなって思います。
豊田:談笑が増えたね。最初のレコーディングは、誰が誰だかわからなかったもんね。
佐藤:最初は古都子「先輩」だったのが、「さん」に変わったよね。
──技術的な部分では、どのような変化がありましたか?
内田:この間、制作合宿に行ったんですけど、その時に作り方を確立したというか。工程をちゃんと作ってやったら、めちゃくちゃスムーズに進んで。
豊田:あと、楽器隊が自分の家で録れるようになったしね、楽器の音を。それで、遠隔でできるようになったよね。
──最近のレコーディングはどういう形で進めているんですか?
内田:レンが作詞作曲をしていることが多くて、弾き語りでまず曲を作ってもらって、それをデモでもらうんですけど、とりあえず自分は最初はリードを入れずにコードを自分で弾いて、古都子は歌だけ歌って、太一はコードで弾いている音を弾いてっていうのをやって、レンは自分がわかっているんで、リズムを叩いてくれるっていう。
──なるほど。
内田:一回弾き語りからバンドアンサンブルに変えてくるっていう工程を組むと、曲の雰囲気がデモと変わって、この曲のやるべきかやるべきじゃないかっていう基準ができます。
豊田:あと、最初から難しくしすぎるというか、手を加えすぎちゃうと、あとから修正が効かなくなっちゃうから・・。
内田:なるべくシンプルで、弾き語りデモをバンドっぽく作るというところをわりと目指しています。
浦山:・・・っていうのを10曲とか片っ端から集めて、(どの楽曲も)「バンド化していく」っていうのをやって、最終的にそれをあとから細かくアレンジするというものが、工程として出来上がった気がします。
──事前に配信されていた配信曲である「煙より」「センチメンタル」「ワンルーム」「会いたくなって、飛んだバイト」も、その工程で作成されたということでしょうか?
内田:事前に配信されていた楽曲だと「会いたくなって、飛んだバイト」っていう曲はその方程式で作って、「ワンルーム」「センチメンタル」「煙より」は手探りでごちゃごちゃやっていたな、というイメージですね。
──ちなみに、どの楽曲が制作に時間がかかったとか、ありますか?
浦山:「会いたくなって、飛んだバイト」は、たぶん一番時間がかかりましたね。
──そうなんですね。
浦山:元々イントロとAメロは2年前くらいに書いていて、今回のレコーディングにあたってデモを漁っていたらこの楽曲の元となる楽曲があって、それが2021年2月と書いてありました。当時、この歌のサビが本当に思い浮かばなくて、良いものが出てこないので、一回手を付けないでいいやってなり。でも、この間の制作合宿のときに、新しくいっぱい曲を作っていると、全部似たような構成になったり、似たようなコードしか使えなくなったので、撮り溜めたボイスメモを見て、そういえば「バイト」(当時の仮タイトル)があったなあと思って、その楽曲に追加する形でサビを書いてみるかってなって、今の形になったので、できるまでは本当に長かったなあと。
『夜間逃避行』というepの話
──今回、『夜間逃避行』というepをリリースされましたが、作品の中で好きな楽曲は何ですか?せっかくなので、それぞれで伺えたらと思いますので、まずは内田さんから伺ってもよろしいですか?
内田:4曲目の「安眠剤」という曲ですね。yutoriの曲の要素が詰まっているなって思ってて。歌とかは今までにないロングトーンの、けっこう伸ばしたサビなんですけど、楽器面とかバンドのキメとかリズムに関しては、yutoriっぽさがけっこう詰まっているのかなあ、と。今までの曲の気に入った要素を詰め込んだイメージなんで、自分的には好きです。
──なるほどです。次は、豊田さんに伺ってもよろしいでしょうか?
豊田:ほんとは「安眠剤」なんですけど、被ってしまうので、・・・「ヒメイドディストーション」ですかね。
一同:でも、「安眠剤」が一番なら「安眠剤」で話していいんじゃない?
豊田:じゃあ、4曲目の「安眠剤」で、サビがけっこうロングトーンなんですけど、僕がけっこうロングトーンが好きというのもあって(好きですね)。また、サビがとにかく爽やかで、疾走感のあるバンドサウンドで、それに伴って、楽器たちの動きも無駄がないんですよ。
──ふむふむ。
豊田:いらないと思ったフレーズとか、無駄なことを削いでいて。(yutoriの楽曲は基本的に)ドラムとかもいつも難しいことをしているタイプなんですけど、それにしては(「安眠剤」は)凄いシンプルなフレーズが多くて、その分リードギターが印象的なメロディアスなフレーズを弾いていて、ベースはその楽器たちが動いていない、ボーカルもいないところで適度に動いて、他のフレーズを入れるみたいなことをしていて、とにかく無駄がなくて、弾きやすい曲だと思います。
──なるほどですね。では、浦山さんはいかがでしょうか?
浦山:6曲目の「もしも」です。yutoriになかったミドルテンポというか、ありそうでなかった感というか。自分が作詞作曲をしたんですけど、歌詞がけっこう実体験だったというのもあって。良くないんですけど、実体験の歌詞の方がメロディーを妥協したくないなって。
──ふむふむ。
浦山:実体験じゃないときは俯瞰して曲を書けるから、古都子が歌うっていうのを意識した上で歌詞とか書けて、そっちもそっちで好きなんですけど、実体験で書くときは本当に目線が俺でしかなくて、古都子が歌うということをあんまり考えないで書くから、「もしも」は一番自分の想いが込められていてそういう意味でも自分は「もしも」が一番好きです。
──なるほどですね。佐藤さんはいかがでしょうか?
佐藤:5曲目の「ヒメイドディストーション」がアルバムの中で一番好きですね。今までにないキャラクターが生まれたので、レコーディングが面白かったです。今までって個人的なイメージだと、曲のキャラクターが20代前半みたいだったのが、この曲では20代半ばあたりをイメージしていて。大人な女性の感じが今までのyutoriの楽曲にはなくて、いつかはそういう楽曲をやってみたいなっていうのもあったんですけど、19のときに挑戦することになるとは思ってなくて。新しい自分の引き出しを作れたような気がしています。
──楽曲によって空気とかテンションって違いますか?
佐藤:違いますね。レコーディングのとき、アロマを持っていくんですよ。今日レコーディングする曲はこの曲だから、このアロマかなって毎回違うアロマを選んで持っていってます。
──なるほど。では、「ヒメイドディストーション」には「ヒメイドディストーション」のニオイがあって、そこも楽曲の違いに反映されているということですね。ちなみに、今作のミニアルバムは今までのyutoriが入りつつ、新しい一面を魅せているものが多い、という印象でしょうか?
内田:でも、それで言うと、「ヒメイドディストーション」 に関しては、今までのyutoriと違うかな。抜けて一個、違う気がしますね。
豊田:デモの段階で、違ってたよね。
──今まで歌うことがなかったタイプの楽曲、ということですか?
佐藤:歌詞の頭にエッジを使うとかはあったんですけど、エッジ単体で使ってる場所があって、ずっとそういうことしたいなーって思ってたら、できました。
浦山:マスタリングが終わって、全曲通しで聴く作業があったんですけど、「ヒメイドディストーション」以外はけっこうyutoriっぽいなというか、新しいことに挑戦してる中でもウチっぽさが良い意味で残ってるというか。ちょっとずつyutoriって、こういう感じなのかっていうのが定着していってるのかなーっていう嬉しさがあったんですけど、流れで聴いてる時に、5曲目の「ヒメイドディストーション」だけは、やっぱり、なんかウチっぽくない異質があって。
一同:そうそう。
浦山:なんかあれだけ演奏した感なくない?
内田:誰の(作品の中に)古都子がいるんだろう的な。なんかyutoriじゃない誰かが演奏してるみたいな感じはあるよね。
──ちなみに、yutoriっぽさっていうところをバンドとしてはどう捉えてますか?
浦山:とにかくドラムがすげえ忙しそうっていうのが一個あるかなあ、と。自分がドラムだから(より意識するんですが)他のバンドの曲を聴いてると、Aメロやサビがずっと同じビートを叩いていたりすることがけっこうあるなあと、聴いていて思ってたんですけど、自分はせっかちすぎて、Aメロに8小節あるとしたら、4小節しか同じフレーズを叩けなくて、飽きちゃってしょうがなくて・・・って言うのがあって、(それが)疾走感に繋がってるのかなって思います。あと、ギターにも「らしさ」はあると思います。
内田:個人的には、(一番は)歌詞だと思っているんですけど、まっすぐに言っている歌詞だけど、実際は人に言うことじゃない歌詞というか、会話では出ない思ってることをそのまままっすぐに書いた歌詞、っていうのがyutoriっぽさかなと思いながらも、あとはメロディーがキャッチーで、演奏はわりと複雑というか、けっこう技量を詰め込んだことが多いなと思いながら、そのさっき浦山が言ってくれた「ギターかなあ」て言うのも、ボーカルの次に目立つように、邪魔せずだけど、空いているところを歌の代わりになるように作っています。
今後のyutoriの話
──それでは最後に、メンバーそれぞれの、今後の夢とか目標を伺ってもよろしいですか?
豊田:僕としては大人数の前、お客さんが多ければ多いほどすごい楽しく感じるタイプなんで、これからミニアルバムを出すからそのアルバムによってお客さんがちょっとずつ増えていって、フェスとかでも知ってもらって、よりたくさんの人に観てほしいなっていう想いがあります。とにかく本当にこのミニアルバムに期待して、皆さん、僕らのライブを観て欲しいですね。
佐藤:実現するかは分からないし、したとしてもだいぶ先になるかなとは思うんですけど、好きな本の主題歌を担当したいです。本の映像化とか映画化、ドラマ化されたときに曲を担当したいです。
──ちなみに(実現したいなあって思う)具体的な作品はあったりしますか?
佐藤:『闇と光』っていう小説があって、すごく好きな作品なんですけど、やりたいなーって、ずっと思ってます。
内田:(僕は)ライブのことになるんですけど、自分もやっぱり大きいキャパでやるときの方がテンションが上がって楽しいなって思うことが多くて。ワンマンでZeppに立ちたいなっていうのが、目標というか関門だなあと考えていて。ワンマンはそんな感じなんですけど、フェスも色んなものに呼んでいただいて、ちゃんと埋まってきている中で、自分としてはロッキン(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)に出たいっていうのが目標なので、そこを目標にして頑張っています。
浦山:みんなライブのことを言ってたから、自分は曲のことを言いますが、電子音だったりシーケンスを取り入れてみたいなあって思いますね。フルアルバムとかで曲をいっぱいどーんって出すってなったときに、サカナクションさんぐらいのシーケンスというか電子にめちゃくちゃ寄った曲とかやってみたいです。で、古都子のボーカルの補正を入れてみたりとか、色んなことをやってみたいです。
一同:鍵盤とかも入れてみたいし、ヴァイオリンとかの弦も入れてみたいし、ね。
浦山:フォーピースギターロックから抜けて、ちょっと壮大な音楽もやってみたいし。・・・まあでも、地盤は絶対にフォーピースギターロックっていうのはブレたくないっていうのもあります。
[ad]