なきごとにインタビューをしてみた件

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2023年はフルアルバムである「NAKIGOTO,」をリリースして、アルバムを引っ提げた全国ツアーを行うなど、精力的な活動を行なっていたなきごと。この記事では、そんななきごとに改めてお話を伺い、今年作品リリースやツアーを通じて感じたことと、そして、これからどんな企みを持って、なきごとが活動していくのか、という部分にスポットを当てながら、話を伺ってみた。

2023年のここまでのなきごと

──2023年1月にリリースされたフルアルバム「NAKIGOTO,」は2枚組みのアルバムでしたが、なぜ2枚組みでリリースされたのか、というところからお話を伺ってもよろしいでしょうか?

水上:去年の10月で4周年を迎えて、今一度なきごとというのがどういうものなのかっていうのを色んな人に知ってもらえるようなアルバムを作りたいと思っていて。そのときに、「あいからわず」っていう曲を書いたんですけど、その「あいかわらず」は、もともとあった曲の続編として書いた曲で、(そこから)今までのなきごとと今のなきごとを詰め込んだアルバムにしようと思いました。それで曲をだんだん盛り込んでいくうちに、これは1枚組じゃ足りないかもねと話して。2枚組にしようかっていうので、フルフルボリュームのフルフルアルバムになりました。

──なるほどです。A面の方に最新の曲が入っていて、B面の方に今までのキャリアを総括するような曲を収録したという分け方には、意図とか理由はあったのでしょうか?

水上:個人的にはA面にB面の曲を入れて、B面にA面の曲を入れたかったのが正直なところなんですけど。チームで相談をして、A面から聴いてもらうことの方が多いので、新曲たちはA面って感じで決まりました。曲順にはけっこうこだわりがあって。例えば、B面とA面の順番を反対に聴くと、なきごとが初めてライブでやった楽曲(「癖」)が1曲目になってて、冒頭で話したその続編(「あいかわらず」)っていう曲がその曲の続編になっていて。今までのなきごとを作ってくれた楽曲たちががーって並んでいって、新しい曲になっていって、(最後は)その続編で締めるっていう流れになるので、水上自身はそういう聴き方をしてもらいたいと思っています。

──なるほどです。ちなみに曲順ってお話があったんですけど、曲順はお二人で決めていくような感じだったんですか?

水上:二人の意見を主軸にしながら、チームの皆で話し合いながら決めました。

──ところで、ツアーを回ったあとに改めてアルバムと向き合ったとき、アルバムに対して変化とか違った捉え方とかあったりしましたか?

水上:アルバムが完成した時に、今までなきごとってこんなに曲を書いてきて、作ってきて、こんなにたくさん表現してきたんだなと思いました。各曲で聞いていくとジャンルとかアウトプットの仕方がけっこうバラバラだなと思っていたけど、バラバラの中にもやっぱり一つ軸があって、なきごとの曲だなってちゃんとわかるなって思ったのが嬉しかったです。

──ふむふむ。

水上:それを引っさげて、ツアーで13本回って、初めてツアーで回ったところとかもあったんですけど、アルバムがちゃんと届いてるんだなっていう感じがすごいして。曲を作った時の感情と、ライブで曲を歌う時の感情って一緒がいいと思ってたんですけど、だんだんそこがちょっとずつ変わってきていて。対目の前にいる人に対して歌えてきてる実感があって。故に、アルバムの内容の広がりが自分の中で出たっていうか。歌詞の意味だったり、曲の捉え方だったり・・・。なるべく3Dや4Dで届けたいじゃないですか、アルバムの内容物って。ライブで3D・4Dで届けられているから、(音源として)戻ってきたときに、ぎゅ!ってなるというか。

──ふむ。

岡田:一番古い曲で私たちが20歳とか21歳の時の曲から収録されているんですよ。で、最新では24,5歳の等身大の曲が収録されてるんですけど、アルバムを改めて聞いて大人になったなっていうのは思いました。奏でる音だったり、えみりの声だったり、曲の世界観や歌っていること、あとはそれぞれの楽器のアプローチ、全部を聴くと、また違った見え方ができて面白いなって思いました。そして、ツアーを回ることによって、曲への気持ちだったり、印象が自分たちの中でも変わったので、実際にツアーに来てくれた方は、今までそれこそえみりの言う2Dだったものが、ライブでその曲を実際に見たことによって、3D、4Dとして印象により残るようになったんじゃないかなって思います。

──それでは、ライブを披露するうえで、印象に残っている楽曲をひとつ挙げてもらうことってできたりしますか?

水上:ひとつに絞るのは難しいですね(笑)個人的には「ハレモノ」と「luna」っていう2曲になっちゃうんですけど。この歌はクリックにそのまま合わせて叩くと、曲が生きないところがあって。けっこうライブサポートメンバーは大変そうにしてるんですけど、音源を飛び越えた時の、楽曲が持つ力、めっちゃすごいなって思うことが多くて。特に「luna」って曲は、MCの前に岡田がギターのリバースディレイでフワーって感じで良い空間を作ってくれて、その上で喋ってから曲に入るっていうところがあったんですけど、そこがあるとだいぶその曲の聴こえ方が変わってきて。

──ふむふむ。

水上:あれはライブならではだし、直接生きることとか死ぬことっていうことについて歌ってる曲なんで、目の前に生きてる人間が口から音を出して歌ってるっていうことに、すごい意味がある曲になってるんじゃないかなって思えてきたりとかして。それはツアー回ったが故に思ったことだったんですけど。その2曲は特にライブで化けたんじゃないかなって思います。

──岡田さんは何かありますか?

岡田:私もその2曲なんですけど、同じ曲を出しちゃったらあれかなって思うので・・・。A面の最後の曲「あいかわらず」から、B面の1曲目の「癖」に繋がるところが良いみたいな話をさっきしたじゃないですか。アルバムのツアーでもそのまんま流れを再現していて、本当に「あいかわらず」が終わったって思ったら、息する間もなく「癖」に入るんですけど、CDで表現したかったことを、ライブでより的確に表現して伝えられることができていたんじゃないのかなって思います。

今回のツアーで感じた変化

──今年のツアーって、これまでのライブとお客さんの空気も違うのかなーって思ってて。声出しができるとか、よりリアクションを取りやすく空気的になっているとかあるのかなーって印象なんですが、ツアー回って、そういうことを感じる瞬間はありましたでしょうか?

水上:めちゃくちゃあります。っていうのも、今回自分たちの冠で全自主公演で回るツアーが初めてでした。それってなきごとがプレゼンツしているものなので、なきごとを好きな人がまずは来てくれるっていう。で、そこから対バンのお客さんが来てくれたりとかするっていうことだと思うんですけど。やっぱりアルバムを出して、ツアーもまわりますっていうので、多分大事なツアーなんだっていうのを理解して来てくれてる人がけっこう多い印象があって。

──ふむ。

水上:で、1月29日からツアーがはじまったんですけど、声出しの解禁ができるよーみたいになったのが、ファイナルへ向けてだんだん出せるようになっていく感じだったんですよ。1月29日ではギリギリどっちにする?みたいな感じの空気感がありましたし。そこから2月後半から3月ぐらいになって、場所によってはマスクしてたら声出していいよとか、そういう感じになっていって。そこから4月30日のファイナル、初めてのワンマンの時までには、マスクしていれば声を出してオッケーだよっていうところまで完全解除されたので、ファイナルに向けてだんだん熱量が上がっていったっていうのは目に見えてわかっていって。印象的だったのは、北海道(の公演)で。ツアーで初めて行ったんですけど、歌ってもらったんですよ、「憧れとレモンサワー」を。「歌える?」って聞いたのは私なんですけど、歌えるんだ!と思って(笑)。純粋にそこで感動して、自分がバンドやってなかったら北海道の人が自分のことを知ってくれてることなんてないと思うんですよ。初めて足を踏み入れた土地で自分たちの曲を聴いてくれて、自分たちの曲を覚えるまで聴いてくれた人が目の前にいるってことにめちゃくちゃ感動して。そこで、バンドってライブって音楽ってすごいってなって、そこから味を締めたように、毎回ツアーで「歌える?」って聞いたりとかして。みんなで歌えるって、すごい幸せだなって思いましたね。

岡田:コロナ禍に入って、わりとすぐか1年後くらいにクワトロ(渋谷CLUB QUATTRO)でリリースイベントをやったんですよ。DVDにもなってる公演なんですけど、観に来てくれてるお客さんもマスクしてて、どう感情をアーティストに伝えたらいいかわかんないし、アーティスト側もどう見てくれてる人に伝えたらいいのかちょっとわかんないし、その反応をどうやって受け取ったらいいかわかんないっていう状態だったと思うんです。あの頃に比べてだんだんこの状況にみんな慣れていって、マスクしながらも目だけで頑張って感情を伝えてくれたりとか、手振り身振りで感情を伝えようとしてくれたりとか。そういう方を見てアーティストも受け取る力がついたりとかしたと思うんですけど、その積み重ねがあったからか、マスクがある人もない人もめちゃくちゃ気持ちを伝えてくれるようになって、しかもなんなら声も出せるようになって、コロナ禍前より数倍みんな伝えてくれるようになったのかなっていうのと、アーティストも受け取る力が増えたんじゃないのかなって思ってて。こう言ったら変ですけど、コロナ禍に特訓されてきた人たちがいまようやく解き放たれて、音楽を全身全霊で楽しめるようになってて。よかったなっていうのを感じますし、音楽を好きでいてくれてる人が声を出して反応してくれるっていうことに対して、今まで以上にすごいありがたみを感じるようになりました。

水上:(今は)月に4,5本とかライブするのが当たり前になってきてたりするんですけど、コロナ禍前って月に1,2本ぐらいのペースだったんですよ。あのときってなきごとって活動し始めで、なんだこいつらみたいな、品定めをされるような目で見られてるというか、関係値がお客さんとまだできてないっていうところもあって、どこで手を挙げたらいいのかとか、そもそもけっこう私が尖ってたんで、別に煽らなくても好きなように楽しんでよっていうスタイルだったんで。手は自分が挙げたいときに挙げたらいいし、のりたいときにのったらいいし、好きにしなよっていうスタイルで、一緒にライブを作るっていうよりは、お互いが共存してるっていう感じだったんですけど、コロナ禍に入ってライブできなくなって、お客さんがわざわざライブハウスに来てくれることのありがたみをすごい感じて。その前って声出しとかするような空気感じゃなかったんで、一緒に歌おうみたいな曲とかもなかった。・・・が故に、コロナ禍に入ってから、じゃあコロナ禍が開けて、一緒に歌えるようになったらこういう曲を一緒に歌いたいなとか、ライブに来てくれるからには楽しんでもらえるようなライブにしたいなとか、この3年くらいで自分たちのライブの作り方とか向き合い方とかも変わってて。そこでやっと今声出しができるようになったとか、まだ完全に終わったわけじゃないけど、ちょっとずついいようになってきてて。一緒に声を出してほしいって思ってた時には声を出せない状態だったから、そういうので(お客さんと)一緒に乗り越えた、一緒に成長していってるなっていう実感があります。

──それで言うと今回のアルバムの話になっちゃうんですけど、ライブを演奏すること、この曲は割とライブ意識して作ったとかあったりするんですが、それとも曲を作る上ではそんなにスタンスとして変わらずみたいな感じなのですか?

水上:本当に曲によるんですけど、「D.I.D」とか、「パトローネの内側で」をリリースした時くらいから、だんだん一緒に楽しもうっていう空気感にわりとシフトチェンジしていった節があって。今回のアルバムで言うと、「私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることができない」とかは、みんなで一緒に手を叩いてライブで楽しめたらいいなとか、ライブでの楽しみ方はけっこう意識しました。

これからのなきごとについて

──一旦2023年の前半が終わって、ここから次の後半になっていくのかなと思うんですけど、直近でいうと決まってるフェスとかライブが軸で活動していくっていう感じですかね。

水上:そうですね。あとはおわらせたくないツアー。なので、フェスとツアーを今それに向けていろいろ準備を進めていってるような感じですね。2度目のワンマンもあるんで、ワンマン、何してやろうかみたいなのを考えてるとこです。

──今回はこういう企みというかプランを持ってやりたいとかあったりしますか?

水上:おわらせたくないツアーなんで、おわらせたくなくなるようなライブにしたいですね。まだまだ続けていたいって思えるようなライブにしたいです。

──なるほどです。岡田さんは何かあったりしますか?

岡田:前回のワンマンに向けて割と練習に入ったんですよ。なので、今回は前回のワンマンよりいい日にするためにもっと練習入って、あと個人でもたくさん練習して、あとはやっぱりギタリストなんで、機材、何に変えようかなとか、そういう企みがあります。あと、けっこう私、人見知りで、えみりも人見知りな方ではあると思ってて。その二人が作り出す音楽を聴くニンゲン’s(なきごとのファンの呼称)って意外と人見知りじゃないんですよ。

──そういうエピソードが何かあるんですか?

岡田:ライブ中とかめっちゃガン見してくれて、そんなに人の目をじーっと見れんのすごって思うんですよ。だから、なきごと人見知りなのに、ニンゲン’s、人見知りじゃないのすごいなって思って。あと、同時に負けたくないなって思って。

──お客さんにってことですか?

岡田:はい、見に来てくれてる人の真剣さ、まじまじっと見てくれてる視線に応えたいなって思ってるので、もっと視線とか姿で返事をしてあげられるようになりたいなって思ってます。

──なるほどです・・!じゃあ、改めて、これからのなきごとの今後の目標を伺ってみてもいいですか?

水上:これからっていう意味でいうと、なきごとがどんどん広がっていってくれたらいいなって思ってます。なるべくサブスクとかで気軽に音楽を聴ける時代だからこそ、ライブに足を運んできてもらいたいなっていうわがままもあって。それこそワンフレーズが流行る時代で、サビしか知らないとかワンコーラスしか知らないみたいな人も多い中で、私たちってフルコーラスで聴いてくれてる人の方が多くて。が故に伝えたいことの内容がすごい伝わってるって勝手に思ってて。だから、それ以上にこの曲をどういう風に解釈してくれてるのかっていうのは私個人すごく知りたくて、お互いすり合わせできたらすごい幸せな気持ちになる。ので、たくさんの人に知ってもらって、たくさんの人になきごとが届いてくれるような活動ができたらいいなと思ってます。

──具体的に、こういう会場でやりたいとかそういうのがあったりするんですか?

水上:今は目の前の決まっていることを着実に成功させたいっていうのがあって。私の性格がそういう感じの性格というか。例えば、ジャンケンで勝ったら1万円もらえるっていうのより、ジャンケンしなくても1000円もらえるんだったら、確実に1000円もらいに行きたいっていうタイプなんですよ。岡田はわかんないですけど。だから、私は着実に今はリキッドルームを成功させて、その前の対バンツアーの2本も成功させて、そこから次のステップに進めるようにしたいって思ってます。

──わかりました。じゃあ今の話を受けて岡田さんは何かありますか?

岡田:なきごとって今の事務所のmurffin discsにはオーディションで拾ってもらったんですけど、そのオーディションのライブ審査前にアンケートが配られて、「将来目指すところ」みたいな項目があったんですけど、その将来目指すところに2人で合わせて・・・まあ、えみりが書いてたんですけど、武道館を即完できるようなバンドになりたいっていう目標を書いていて。私はわりと目の前の目標を一個一個っていうよりかは、最終目的地を決めて、自分の年齢とか周りの環境も考えて、そこにたどり着きたいのであれば、いついつまでにこれをして、これをして、これをしてって逆算をしていくタイプなんですね。一個こなして、じゃあ次どこ行こう、一個こなして、じゃあ次どこ行こうってやってる時間がもったいないなって思っちゃうタイプなんで、決めて着実に最短ルートで通っていくみたいなタイプの人間で、まずはそのオーディション時に決めた、ずっと胸に思ってる武道館を目標に頑張っていきたいなって思ってます。

 

 

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