BUMP OF CHICKENの楽曲って、タイトルの付け方が良いなあと思う話
BUMP OF CHICKENのメジャーデビューは「ダイヤモンド」のリリース日である、2000年09月20日になる。
本日は、「ダイヤモンド」をリリースしてから23周年となるわけだ。
ということで、せっかくなので今日は、BUMP OF CHICKENの話をしてみたいと思う。
個人的な好きなテイストのBUMP OF CHICKENの話
とはいえ、BUMP OF CHICKENの話は何回もしてきているので、今回の記事では、自分はこういうテイストのBUMP OF CHICKENの歌が好きなんだよなー、という軸で話をしてみたいと思う。
ところで、自分が好きな傾向の楽曲って何だろうか。
改めて問い立てて考えてみたとき、歌詞の中ではそのことに直接的には触れないのに、タイトルが「何の歌か」を示している歌が好きだなーとぼんやりと思った。
例えば、「K」。
この歌は黒猫と絵描きの物語を描いた楽曲である。
2番までは三人称視点で黒猫と絵描きの物語を描いていくが、2番のサビが終わり、Dメロに入ると、歌の視点が黒猫に移り、「俺」の一人称で物語が進むような作りになっている。
そこから、最後のBメロでは再び「彼」という言葉を使い、三人称に歌の視点が戻ったり、その後は再び「俺」という言葉を使って一人称で物語を描いたりと、視点の行き来をしながら、物語は終幕へと向かうことになる。
ただ、最初の段階ではタイトルの意味ってどういうことかわからない作りになっている。
でも、歌を最後まで聴くことで「K」というアルファベットの意味がわかり、歌の輪郭が一気にくっきりとすることになるのだ。
この歌詞そのものとタイトルの共犯関係の感じが、良いなあと思うわけである。
BUMP OF CHICKENの歌って、総じて独特の視点で言葉を描くため、歌を色んな解釈で聴くことができる。
んだけど、タイトルによって、その方向性を定めながら聴くことができる作り方になっているし、多くの楽曲でタイトルがその歌詞の核心をつく言葉になっていることが多い印象なのである。
例えば、「夢の飼い主」。
この歌は犬っぽい視点で描写がなされる歌であるが、その犬っぽい視点が夢の比喩の中で作られたものがタイトルで明示される構成になっている。
もちろん、色んな物語を想像しながら歌詞を楽しむことができる。
んだけど、タイトルでは「夢の飼い主」と明示することで、歌のテーマとしては夢の飼い主(そして、夢という生き物との関係性)を軸にした楽曲であることがわかるわけだ。
BUMP OF CHICKENだからこその歌の視点と比喩の感じ、そして、タイトルでしっかりテーマを明示してみせる。
こういうテイストのBUMP OF CHICKENの楽曲に、よりぐっときてしまうのである。
例えば、「イノセント」。
この歌も「イノセント」のことを比喩にして言葉を紡いだもののように感じる。
イノセントを失った人、というよりも、イノセントそのものが主人公になっている感じなのが良くて、その温度感もタイトルに反映されている感じがするのが良いという手触り。
なお、「ray」や「Butterfly」になると、タイトルにも少し仕掛けを加えている印象。
タイトルで直接的にテーマを言及するのではなく、もうひとつタイトルの中にレトリックを織り交ぜている感じがして、さらに歌の中で持つ想像力を奥深くしている感じなのが良い。
「ray」は、確かにrayそのものが軸の歌ではあるんだけど、じゃあそのrayって何なのか?というところまでさらに想像力を膨らませて聴くことができる。
だからこそ、より歌の中の想像力が鮮やかになるのだ。
「Butterfly」は<涙は君に羽根をもらって>というフレーズがあるから、Butterflyというワードにひもづく対象として<涙>を据えて聴くこともできるんだけれど、でも別の想像力を歌の中にも用いることができて、その鮮やかさや多様さが歌の面白さを深くしている印象なのである。
歌詞の中ではそのことに直接的には触れないのに、タイトルが「何の歌か」を示している歌が好きだなーとぼんやりと思った、と冒頭に書いたが、こういう想像力をもって歌が聴けるのは、BUMP OF CHICKENの人が<人物>のことを直接的に歌わないことが多いから、というのもあるのかもなーと思う。
バンドによっては、感情移入がしやすいように、具体的な人物を主人公にする歌を歌うことも多い。
でも、BUMP OF CHICKENの歌はそういう想像力とは異なる想像力が働いている感じがして、それがより内面に刺さる印象を受けるわけだ。
そういう諸々を踏まえた集大成的な楽曲として、自分はいつも「流れ星の正体」を推したくなる。
この歌は、色んな意味でBUMP OF CHICKENだからこそが詰まっている歌のように感じてしまうからだ。
この歌、よくよく聴くと、確かに流れ星の正体を直接的な言葉で表現することってない。
んだけど、でも、ずっと流れ星の正体が歌の軸になっている。
自分は毎回そこにBUMP OF CHICKENのこれまでの楽曲そのものを代入しながら歌詞を捉えてしまうんだけど、そこに代入できる想像力によって、この歌が持つ感動が鮮やかになっていく、という面白さが宿っているように思うし、テーマもそうだし、歌が持つ想像力や、歌詞とタイトルが持つ共犯関係の感じにもぐっときてしまうのである。
まとめに替えて
思う。
そういう楽曲が持つ想像力の使い方という点において、BUMP OF CHICKENって「ダイヤモンド」の頃から「SOUVENIR」に至るまで、変わっていないーと。
常に変わらない想像力をもって、その折々のテーマやトーンで歌を紡いでいるんだなーと感じるわけだ。
だからこそ、歳月が変わって変わる部分も目につく中で、それでも変わらないものを感じて、いつまでも生み出す楽曲にぐっとくるんだろうなーと思うわけである。
変わるけれど、変わらない、そんなBUMP OF CHICKENの良さ。
そんなBUMP OF CHICKENの良さを改めて噛み締めながら、出社をはじめる、そんな1日の始まり。
関連記事:BUMP OF CHICKENの「Sleep Walking Orchestra」に震えている
関連記事:BUMP OF CHICKENの「邂逅」が突き刺さる件