マカロニえんぴつの「なんでもないよ、」の歌詞が持つ文学性

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最近一番ハマっている楽曲は何ですか?

こう問われると、簡単に返答するのは難しい。

世の中に良い歌がたくさんあるからだ。

どんどん自分の記録を更新するような楽曲に出会うことになる。

でも、あえて今一曲するとしたら、自分はマカロニえんぴつの「なんでもないよ、」を挙げたくなる。

理由はいくつかある。

元を辿れば、単純に曲が好きだからとか、何度もリピートしているからとか、そういうシンプルな話になる。

でも、なぜ好きと思うのかとかリピートしているのかというところまで踏み込むと、この歌はマカロニえんぴつにしかない美しさを感じるから、という答えをすることになる。

どういうことか。

この辺りについて、簡単に言葉にしてみたいと思う。

本編

予想を飛び越えていく展開の妙

メジャー・デビューしてからある程度楽曲をリリースすると、そのバンドの型って見えてくると思う。

そして、型ができるからこそ、あえてその型から距離をあける曲を作ったりもするんだけど、本質的にその型が軸足になっていることが多い。

んだけど、マカロニえんぴつって、その型が独特なのだ。

確かに恋愛ソングを歌っているイメージが強いかもしれない。

はっとりだからこその言葉遊びが炸裂している歌をイメージする人も多いかもしれない。

でも、楽曲そのものの「型」について話を進めると、意外とこれぞマカロニえんぴつ、っていうイメージは聞き手によってバラバラな気がするのだ。

ロック色が強い歌にマカロニえんぴつらしさを見出す人もいれば、ポップなテイストが強めの楽曲にマカロニえんぴつらしさを見出す人もいるだろう。

でも、それがマカえんの芯を食っているかといえば、そんなこともない・・・・。

なぜなら楽曲ごとに色合いがまったく異なるからだ。

「なんでもないよ、」だって、ありそうでまったくなかったタイプの楽曲であることに気づく。

生音と打ち込みのバランス感が絶妙なのと、バンドサウンド先行しないでゆっくりと音を積み上げていく感じ。

マカロニえんぴつだからこその展開だよなーとは思うんだけど、じゃあこんな歌、マカえんの過去曲にあったかといえばそんなことはないような気がして。

独特のバランス感と美学で、今までのマカえんとは異なる楽曲を構成していることに気づくわけだ。

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サウンドよりも言葉が印象的に響く

今作って楽曲構成や音の積み重ね方に相当な<攻め>を感じる。

一方で、それ以上に存在感が強いのが、はっとりの歌であり、はっとりが紡ぐ言葉なのである。

ただ、勘違いしてはいけないのは、この歌はよくあるメロディー重視のしっとりソングなのかといえばそんなことはなくて。

この歌の言葉が際立っているのはサウンドの作り込み方や展開のさせ方が絶妙だからこそ、ということ。

会いたいとかね、そばに居たいとかね、守りたいとか
そんなんじゃなくて ただ僕より先に死なないでほしい
そんなんでもなくて、ああ、よしときゃよかったか
「何でもないよ」
会いたいとかね、離さないから離れないでとか
そんなんじゃなくて
そんなもんじゃなくって、ああ何が言いたかったっけ
「何でもないよ」なんでもないよ、
君といるときの僕が好きだ

つくづく面白い歌詞である。

サビで、ここまで徹底的に逡巡してる歌詞というのも珍しい。

色んな思考が頭にうずまき、その考えをなんとか言葉にするけれど、手につく言葉はきちんと自分の気持ちを言い表した言葉ではなくて、何度も「そんなんじゃなくて」と打ち消していく、そんな思考の流れに<リアルさ>を感じる。

歌詞って使える言葉や述べられる単語が決まっているから、端的にズバリな感情を言い当てた言葉で気持ちを伝えようとする。

でも、マカロニえんぴつの「なんでもないよ、」はあえて、そこを回避する。

人の思考ベースで歌詞を考えるならば、そもそも本来的にはそういう思考のうずまき方こそがリアルなのかもしれない。(最初から考えとして答えが出ているものをずっと考えるなんて珍しい話だし、グダグダ考えるものほど、答えが出ないものだったりするわけだ)

それ故、言葉としてはまどろっこしいはずなのに、端的じかつ雄弁に語るような歌よりも、想いが浮き彫りになっていくのだ。

伝えたい想いというのは、実際のところ本人にしかわからない。

でも、伝えたい想いを、どれだけ他の人に伝えたいと思っているか、ということは伝えることができるはず。

そんな「伝えたい」という意志そのものを「伝えたい」、という切迫さが、マカロニえんぴつの「なんでもないよ、」にはある気がするのだ。

そのある種真っ直ぐな感じ、伝えることを諦めているようでいてまったく諦めていないような感じに、自分はぐっときてしまうのだ。

だからこそ、最終的に「なんでもないよ、」と言っているはずの歌なのに、全然その言葉が何でもないと言っているようには思えなくて、何も伝えていないはずなのに、何かを雄弁に語っていることに気づかせてくれるわけだ。

この感じにゾクゾクしちゃうし、惹き込まれてしまう自分がいるのだ。

だからこそ、「なんでもないよ、」にぐっときつづけている自分がいるのだ。

まとめ

とはいえ、この歌の受け止め方は人によって違うと思うし、その芳醇さこそがこの歌の面白さであるとも言えよう。

とにかく自分的には<言葉そのもの>がぐっときたんだけど、言葉そのものに惹かれるのって自分的にはけっこう珍しかったりする。

それだけこの歌が持っている<伝えたい>の熱量がとんでもないのだと思っている。

なんにせよ、良い歌なので、末永く色んな人に聴かれてほしいなあと思わずにはいられない。

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