前説
2020年1月19日、大阪城ホールで開催されたスピッツのライブに行ってきた。
この記事では、そのライブの感想を書きたいと思う。
なお、記事中ではいくつかライブで披露した曲名を出すので、ネタバレが嫌な方は読むのを控えてもらうと幸いである。
本編
スピッツのライブに行ってきた
端的な感想を言うならば、今のスピッツの魅力が詰まったライブだった。
スピッツは33年目を迎えるバンドであり、メンバーも全員50歳を超えた大御所バンドである。
90年代にリリースした楽曲で、YouTubeの再生数1億を突破したことがある唯一のバンドであり、昨年はNHKの朝ドラの主題歌も担当している。
数字や経歴でみれば、これほどまでに“大御所”という言葉が相応しいバンドもいないと思うし、もはやレジェンドと言っても差し支えがないほどだと思う。
けれど。
スピッツのライブって、面白いくらいにそういう荘厳さみたいがないのだ。
メンバーはたんたんと曲を披露して、ときたま実にゆる〜いMCを挟んでいく。
実にリラックスした時間の流れの中で、楽曲を披露していくのである。
良くも悪くも、この年代のバンドにありがちな「偉そうな感じ」が一切ないのだ。
そう、すごくゆるいのだ。
いや、こう書いてしまうと、少し語弊がある。
スピッツのライブって確かにゆるい。
でも、単にゆるいんじゃなくて、かっこよさもあるのだ。
なぜか。
理由は明白で、バンドがめっちゃかっこいい演奏するからである。
そうなのだ。
スピッツって、演奏はめっちゃかっこよく、MCはめっちゃゆるい。
そういうギャップもあるのだ。
もっと言えば、スピッツって王道ポップスバンドってイメージの人もいるかもしれないが、ライブではゴリゴリに音をかき鳴らすロックバンドであり、初見であればそういうギャップも兼ね備えている。
そういうギャップまみれのバンドであるとも言えるのだ。
見っけツアーの話
今回のライブは「見っけ」というアルバムを携えたツアーである。
そのため、セトリの主軸は「見っけ」の楽曲にあるんだけど、合間合間にスピッツの過去の楽曲が披露されていく。
特にライブの前半では「ハヤブサ」以降の、ロック色が強い楽曲を中心に据えていたように感じた。
アルバム曲としては、「エスカルゴ」や「けもの道」や「点と点」などを選出して披露したのは、ロック色を意識したセトリを組みたかったからだと想定される。
序盤で見せつけられてしまうのだ。
スピッツってロック・バンドなんだぜって。
シンプルにバンドサウンドと、歌で魅了する、そういう類のバンドなんだぜって。
特にスピッツの楽曲で特徴的なのは、ほとんどの歌でアウトロがないことである。
そのため、ボーカルである草野が歌い終わり、メンバーが楽器をチェンジすると、すぐに次の歌が始まる。
余計な部分を削ぎ落とし、ロック純度が高いままで、ライブは進行されていくのである。
スピッツのライブがぐっとくるのは、こういう部分にあるのかもしれない。
名曲が多いスピッツ
スピッツって名曲が多いバンドである。
ライトな音楽好きでも「ロビンソン」「チェリー」「空も飛べるはず」など、いくつもの知っている曲が出てくると思う。
さらに上記3曲を目当てにして、ベストアルバムはしっかりと聴いているリスナーも多いだろうから、そこから派生して「渚」や「楓」のようなキャッチーなシングル曲にハマっている人も多いと思う。
また、スピッツのライブに何回か行ったことがある人なら「8823」や「俺のすべて」の流れがくると、アガらずにはいられないと思う。
つまり、スピッツのライブって、セトリ的な意味でも中だるみしないのだ。
もちろん、人によって好みはあるけれど、全てが名曲であり、どの歌を切ってもハイライトになる。
また、変に演出に依存することなく、バンドが持つ根本の部分で勝負するからこそ、ライブ中もずっとぐっとスピッツのライブそのものに引き込まれていくのだ。
スピッツのライブって、そういう凄さがある。
言葉にすればすごくシンプルなんだけど、だけどこの規模感のバンドでも簡単には真似できない業で、スピッツは大衆を魅了するのである。
ライブをみて、改めてそのことを実感したのだった。
今のスピッツのモードが反映されていた
このライブの始まりは「見っけ」という歌からだった。
そして、アンコールのはじまりは「醒めない」という歌からだった。
「見っけ」や「醒めない」の歌、あるいは近年のスピッツ側が発するコメントを読んでいると、スピッツがいま、何よりもこだわっているのは、バンドを続けていくことそのものであるように思う。
だからこそ、今回のセトリはバンドであるスピッツの良さがいかんなく発揮される歌が並んでいたのだろうし、単純にバンドとして演奏することが楽しい歌が並んでいたのかなーなんて思ったりする。
セトリにも、今のスピッツのメッセージが反映していたように思うのだ。
「見っけ」という言葉が示す先にあるのは、バンドをやってきたからこそのものだ。
30年以上同じメンバーをやってきて、バンドを続けて見つけたものが、「醒めない」であり「見っけ」になるというのは面白いし、そういうスピッツというバンドだからこそ紡がれる世界がそこにはあった。
いや、本当にね、スピッツというバンドは、メンバーが楽しそうに演奏するのだ。
「自分の演奏がファンにとどいているから笑っている」とかじゃなくて、そもそも。自分たちがバンドをやっていることそのものを全力で楽しんでいる。
そんなふうに感じるのだ。
ベースの田村や崎山なんかが顕著だけど、めっちゃ楽しそうに楽曲を弾いていて、しかもこのメンバーでやるからこそより楽しんでいるんだろうなーみたいなのが伝わってきて、それがすごく良いのである。
ただでさえ曲が良いのに、ライブがさらによく感じるのは、そういうところが大きく見えるからだと思う。
まとめ
この日のライブはMCも面白かったし、キュウソ好きならぐっとくるエピソードが盛り沢山だったんだけど、ライブを通してみるスピッツの良さを語るうえでは蛇足になるかなーと思ったので、カットしました。
一言で言ってしまうと、スピッツのライブってめっちゃ良かったという話である。
何にせよ、スピッツってポップでしょ?と思っている人がスピッツのライブをみれば、そのロックにがつーんとやられると思う。
今のスピッツ、やっぱりすごいわーって思うのである。
関連記事:死ぬまで聴けるスピッツ名曲16選