フレデリック「SPAM生活」
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2014年3月リリースの、フレデリック初となる全国流通ミニアルバム、「うちゅうにむちゅう」収録曲。
代表曲である「オドループ」でフェスシーンを席巻し、メロディ、歌詞、声質、様々な面に孕む中毒性が注目されるようになる前の、バンドの原点ともいえるアルバムの実質のリード曲である。
「一色たんにもっともっともっとごちゃ混ぜにしたい生活です」「夢見ていたんだ ガールフレンドも浴槽で足を洗って踊りだすの」といった、フレデリック特有の言葉が独特なリズムとどこか不穏な空気感に運ばれていく。
サビの「死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方はしない」というフレーズは、まさにフレデリックと中毒性を結び付け、ある意味で「フレデリックらしさ」というのを感じる人も多いだろう。
受信者の意図を無視して送信されるスパムメールのように、退屈で一辺倒な生活は無差別に送られてくる。
それがスパムだと気付かずにリンクを開いてしまうと、死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方が待っている。
そんな「スパム生活」に侵されないことを誓う歌詞は「一つのジャンルに縛られない」バンドの自由な音楽性の指標にも取れる。
バンドの核が見える「SPAM生活」
リリースから5年経った今だからこそ、表現の仕方や音楽性のアプローチに変化を見せつつ、常に進化を成すバンドの核がこの曲から見えてくる。
そしてそれは、以後の「リピートして今までの関係も/全部リセットするわけないわ/全部背負ったまま(リリリピート)」、「もう過去だって今だって先だっていつだって愛していたい(TOGENKYO)」「伝わらない夜を越えて(飄々とエモーション)」、「まだ見ぬ街へ/君と逃避行(逃避行)」といった、この先への期待を含んだ歌詞に繋がっていくのだ。
また、基本的に暗喩表現が多いフレデリックの楽曲の中でも特に多く暗喩が使われているため、「とにかく不思議な曲」という位置付けにされやすい。
しかし「人生」「生活」といった、とても人間臭く、重い、正解が人の数だけ存在する題材を扱い、ここまで世界観に引きずり込んだまま、はっきりとバンドの在り方を主張することに成功している曲はそう多くは無いのではないか。
そしてまさにそれを証明してくれるのがサビの「死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方はしない」というフレーズであり、この先大きく広がることになる「フレデリズム」への布石を打つという意味で、強く「フレデリックらしさ」を感じる曲である。
筆者紹介
フレデリックと星野源をこよなく愛する都内の大学生。
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