前説
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ここにきてブレイクする余波しかみせていないSurvive Said The Prophet(以下、サバプロ)について書いてみたい。
人によっては、今、もっとも勢いのあるラウド系のバンドという認識なのかもしれないこのバンド。
確かに勢いはうなぎのぼりで、サタニックや京都大作戦など、出演するフェスの数も増加している。
今後のロックシーンを引っ張るひとつのバンドであることは確かだと思う。
が。
あまり積極的にサバプロを聴いてない人からしたら、どうせよくいるラウド系なんでしょ?という認識なのかもしれない。
あんまりよくわからないけれど、ちょっと前のワンオクとか、coldrainみたいな、なんかそっち系なんでしょ?くらいの認識しか持ってない可能性もあるような気がするのだ。
どういう枠組みでそのバンドを捉えるのかは自由ではあるけれども、サバプロを単に○○の後続みたいに捉えるのはもったいない気がする。
とはいえ、確かにサバプロの良さを言語化するのは難しい。
だって、油断したらカッコいい以外の言葉が出てこないから。
でも、せっかくなので、この記事ではなるべくその辺りのことにチャレンジしながら、書いてみたいと思うのだ。
そもそもサバプロって何系なの?
確かに曲によってはラウド系の要素が強いし、ラウドに分類されがちなバンドが持っている要素は一通り抑えている。
だけど、サバプロの特徴って、安易にラウド系みたいな言葉では括れないところにある。
この歌はHONDAのCMにも使用された「Right and Left」である。
何もバンドのことを知らない人が聴いたら、イントロのギターの音色はオシャレバンドのそれだと思うだろうし、あまりにも綺麗な英語の発音は国内バンドのそれとは思わないことだろう。
英語の発音の良さに関しては、それだけボーカルが英語に堪能であることを示しているわけだけど、ポイントなのはこの楽曲が、国内のロックバンドがやりがちな、聴き手への「変な媚び」が楽一切入っていないというところにあると思うのだ。
どういうことか?
これは、このバンドの海外バンドっぽさと繋がる話なのかもしれないけれど、例えばSiMやベガスなんかは、ベースとして当然音のかっこよさがあるものの、なんだかんだで、フェス好きな、暴れることが好きなライズキッズに刺さるフックみたいなものが忍ばされなように思うのだ。
ここで拳を突き上げましょうねとか、ここはツーステしようねとか、ここはウォールオブデスだね〜みたいな、言葉にならない「お約束」が音に落とし込まれている感じがするのだ。
でも、サバプロの楽曲には、そういう「変な媚び」が一切ない。
単純にかっこいい音と、かっこいいボーカルがそこにあるという感じで。
良い意味で毅然としていて、どっしりしているというか。
それがこのバンドの、いかにも海外バンドらしい感に繋がっているのではないかと思うわけだ。
また、サバプロは楽曲の幅が広い。
ラウド系に括ることができないって言ったのはまさにここにあって、先ほどの「Right and Left」だけでも、それがよくわかると思う。
この歌がある種のオシャレナンバーなのだとしたら、サバプロの場合、硬派な音がゴリゴリに攻めてくるナンバーだって、もちろんたくさんある。
「Network System」というこの歌。
この歌は間違いなくヘビィなナンバーで、重ための音とエモーショナルなボーカルに一発でやられる、そういうかっこよさを持つ楽曲である。
この楽曲でも、まるで海外のロックバンドのような印象を持つのではないかと思うのだ。
歌と演奏が上手いからそう聞こえるという前提にあると思うが、この歌のポイントは、音がシンプルであることと、余計なフックを入れていないことにあるのではないかと思っている。
日本のロックは良くも悪くも歌に情報量が多い。
目まぐるしく展開が変わり、ジェットコースターのようなスピード感でサビの高揚感に誘ってくる。
けれど、サバプロはそうした態度はとらない。
比較的シンプルに整理されたバンドサウンドが、聴き手の心に突き刺してくる。
シンプルな音のかっこよさを突き詰めているからこそ、洋楽っぽさがにじみ出ていると思うのだ。
また、メンバーの音楽の趣味やルーツ、影響を受けたものを調べていくと、とにかく海外のロックバンドを丁寧に聴いていることがわかる。
しかも、わりとメンバー全員、ルーツは近いところにあるので、良い意味でブレることないアウトプットができるているのかなーと感じる。
また、2018年にリリースされた4枚目のアルバムである「s p a c e [ s ]」は、米国でレコーディングをしており、プロデューサーにKris Crummettを起用している。
こういうところにもこだわっているから、なおのこと、音が国内バンドのそれを超えることになるのかなーと感じる。
要は、チャンネルの合わせ方が海外のそれなのだ。
とはいえ。
じゃあサバプロが単なる海外のパクリバンドなのかといえば、当然そんなこともなくて。
先ほど紹介した二曲だけでもにじみ出ているかもしれないが、サバプロの音楽ってどこか哀愁のようなものが漂っている。
聴くとどこかノスタルジーな気持ちになるというか。
これはサバプロの音楽が、BPMを上げて疾走感を持って駆け抜ける音楽というよりも、むしろバラードやミディアムナンバーが多いところに起因しているように感じる。
じっくりとメロディーと向き合って音楽を聴くことができるからこそ、音に宿る哀愁を存分に堪能することができるのだ。
メンバー自身も、そういう目に見えない美学みたいなものに気を使っているように感じていて、2017年にリリースされた3枚目のアルバムのタイトルが「WABI SABI」(=侘び寂び)であるのも、そういう理由なのではないかと勝手に思っている。
要は、洋楽的な音を、きちんと日本バンド的感性できちんと解釈しなしている、というわけだ。
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圧倒的苦労人
シンプルにサバプロの良さを表現するなら、かっこいいという一言になってしまうんだけど、そもそもサバプロがそのかっこよさにたどり着けたのは、彼らがたくさんの苦労を経験したからにほかならない。
サバプロの歴史は、2011年頃から見ることができるけれど、これでも8年の歴史があるわけだ。
もちろん、メンバーの多くはサバプロを結成する前からも別のバンドで活動している。
つまり、個々のバンド歴を数えたら、かなりキャリアを積んでいることがわかるのだ。
また、サバプロは結成してからもなかなかメンバーが定着しなかった。
ライブをたくさんこなしても、メンバーが抜けて、またイチから音を合わせていくという作業を何度も繰り返したバンドだった。
まさしく、バンド名にあるように、Surviveを繰り返してきたバンドなのだ。
そして、バンドを止めることなく、メンバーが変わることになっても、イチからやり直し、実直に続けることを行なってきたからこそ、サバプロの音は、どこまでも硬派で研ぎ澄まされたものになったのだと思うのだ。
ぽっと出のバンドではない強度こそが、サバプロの最大の魅力なのかもしれない。
そんなことを思う。
まとめ
この「Fool’s gold |」なんかは、デスボとクリーンを綺麗に使い分けられている美しくも切れ味鋭いナンバーだ。
エモさと荒々しさが同居して混ざりあったような歌で、サバプロの良さが詰め込まれた素敵な楽曲だと思う。
とはいえ。
サバプロは間違いなく「今」進化しているバンドなので、しばらくしたら、また彼らは新たな境地にたどり着いている可能性が高い。
おそらくこのバンドは国内のロックシーンだけではなく、海外でもその名を轟かせると思う。
それだけは、間違いないと思うのだ。
というわけで、サバプロをまだ聴いたことがない人は、このタイミングで、ぜひに。
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