スピッツ「醒めない」の歌詞の意味は?解釈と考察

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7月27日におよそ3年ぶりとなるフルアルバム「醒めない」をリリースするスピッツ。

今回はそのリード曲となる「醒めない」の歌詞についてみていきたいと思う。

この歌は自分たちを主人公に書いたみたいなことをマサムネさんが言っていて、「ミカンズのテーマ」なんか同様、自分たちのテーマソング色の強い歌になっているわけだけど、そういうことも踏まえながら歌詞をみていきたい。

作詞:草野正宗

1番の歌詞

覚えていてくれたのかい
嬉しくて 上ばっか 見ちゃうよ
やけに 単純だけど 繊細な生き物

主人公が誰かに「覚えていてくれたのかい?」と問いかけているわけだけど、これは今なおスピッツの歌を聞いてくれたリスナー、特にスピッツがロックに目覚めたときからスピッツのことを応援してくれているリスナーに対してのメッセージなのであろう。

こんな俺らのことまだ応援してくれてるなんてありがとうね、みたいなニュアンス。

で、応援してくれているの知ると嬉しくなっちゃって、少しでも大きなステージ立つように努力したりとか、試行錯誤して自信満々な新譜を色々リリースしたりとか、テレビに出てもっとたくさんの人に聞いてもらったりとか「上」を目指そうとしちゃうよね、というわけである。

ただ、ここで気になるのはスピッツのメンバーにとっての「上」ってなんなんだろうか。

武道館が目標とか、ミリオンセラーが目標とか(今の世の中なら無理だろうけど)、フェスのヘッドライナーをしたいとか、世界デビューしたいとか色々あると思うけど、スピッツの目標って何だろうか。

オリジナルアルバムよりベストアルバムが売れている現状を悔やんでいたから、オリジナルアルバムをもっと聴いてほしいという気持ちは強いだろうけど、あんまりこのステージに立ちたい、これだけのセールスを叩き出したいとか、このフェスのヘッドライナーをしたいとか、ワールドツアーがしたいとか、そういう欲望はなさそうなイメージ。

全然やらなかっな武道館ライブは2014年に突然やっちゃったから、その辺は謎だったりするのだけど。

まあ、「上」という言葉は、具体的な目標っていうよりも、見栄を張っちゃうとかそういう精神的なニュアンスの言葉なのかもしれない。

で、次のフレーズでは、スピッツのメンバー=単純だけど繊細な生き物、という図式を示す。

たしかに、マサムネ氏はその辺のボーカルより群を抜いて繊細だなあとは思います。

さて、歌詞の続きをみてみよう。

昼の光を 避けて 
ブサイクな 俺の歴史上
ギターは アンドロジナス
氷を溶かしてく

昼の光とは、表舞台のことであり、例えばテレビの仕事とかそういうことを指しているのだろう。

光のミスチル、影のスピッツと、昔の人はよくいったものである。

で、ブサイクな俺=スピッツのことである。

スピッツの歴史を遡れば、この29年間、極力表舞台を避けて、昼の光を浴びないような活動を続けてきた、といっているわけだろう。

ちなみにアンドロジナスとは、男女両性という意味である。

これをギターに置き換えるなら、スピッツのギターってすごく歪んだ音が多くてロックっぽいときも多いのに、「みなと」なんかではギターの音をクリーンな音にしている。

歪みとクリーンの両方の音色を使い分けてきたスピッツのギターの音は、まるで男女両性であるアンドロジナスみたいだと言っているわけである。

次に、氷とは何を意味するものだろうか。

おそらく、批判とか嘲笑とか「そんなの無理だよ〜」と外野から投げかける諦めの言葉とかそういう類のものなのだろう。

スピッツは、そういう大人の批判を音でねじ伏せて、(つまり氷を溶かして)ここまでやってきたんだよ、と言っているわけだ。

そして、サビである。

まだまだ 醒めない アタマん中で 
ロック大陸の物語が
最初 ガーンとなった あのメモリーに
今も 温められてる
さらに 育てるつもり

醒めないものとは、ロックに対する情熱、音楽に対する情熱である。

ここでスピッツが拘っているのは「音楽そのもの」というより「ロックである」ということである。

だから、ここでロック大陸という言葉を使うのである。

「俺たちはロックバンドなんだぜ」ということをここで表明しつつ、まだまだ俺たちはやるからな!と宣言しちゃうわけだ。

最初にガーンとなっな音楽とはブルーハーツのことだろうか。(確かにマサムネ氏、ブルーハーツにハマってた時代があったはずだ)

似合わないパンクスに憧れたけど、あのときの記憶を大事にして、今も音楽をしている。

その思いを大切にしながら、これからも俺たちは「ロック」をやっていくと言っているわけである。

サビの意味は単純だけど、ここで改めて宣言できちゃうスピッツの素直さと格好良さにただただ感服なのである。

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2番の歌詞

続いて2番の歌詞をみてみよう。

カリスマの服 真似た
忘れてしまいたい 青い日々
でもね 復活しようぜ
恥じらい 燃やしてく

最初のフレーズは、憧れのロックスターを真似てステージに立っていたと意味であろう。

マサムネさんにとってカリスマが誰かはわからないけど(この記事ではブルーハーツにしておくけど)、田村さんはメタル界隈のあの辺のバンドがカリスマだから、歯で弦を引き千切ったり、素手でドラムのシンバルを叩き付けたりしちゃうのである。

さて、似合わないパンクスを真似てたマサネムさんは、そんな過去を「青い日々」と形容しているわけだが、そんな日々を思い出せば、恥ずかしくなって忘れてしまいたくもなるよ、と歌っているわけだ。

しかし、ここで「けれど」と逆説でつなげる。

逆説ということはここからは反対の意味を歌うことの表れ。

フレーズをみてみると、冷めた態度とって音楽やるつもりなんて毛頭なくて、むしろこの恥じらいの過去をエネルギーにして、まだまだロックンロールやってやるぜ!と言っている。

要は青い日々なんて忘れつもりないから!なかったことにしてスマートな音楽しかするつもりなんてないから!と言っているわけだ。

次のフレーズをみてみよう。

任せろ 醒めないままで 君に
切なくて 楽しい時を
あげたい もっと 膜の外へ
なんか未知の色 探して
さらに 解き明かすつもり

この歌の「君」とはまさしくこの曲を聴いてくれているあなたのことであり、スピッツのファン全員を指した言葉なのである。

見た目からは草食系っぽいマサムネさんであるが、歌詞では妙に男らしくなる。

今でも応援してくれるファンにむかって「任せろ」と言えちゃうなんてめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。

そして、スピッツはこれからも楽しいだけじゃなくて、切なさも同居させた歌を届けるよと宣言している。

切なくて楽しい、ってのがどういうことを指すのか、スピッツの歌が大好きな人ならばわざわざ説明する必要すらない言葉であろう。

次のフレーズに出てくる「膜」という言葉であるが、これ自分の内側のことであり、「自分の殻を破る」という言葉における「殻」と同じ意味である。

要は新たな世界を広げるような価値観を与えたい、と言っているわけであろう。

未知の色を解き明かすっていってるが、要は保守的で面白みのない音楽なんてするつもりはなくて、「なんじゃこりゃ」と良い意味で驚いてもらえるような音楽をこれからとどんどん作ってくからねと宣言してるわけだ。

「みなと」のカップリングである「ガラクタ」なんてそれの真骨頂だったよね。

50歳を超えてもやる気満々だからね!30周年なんて通過点でしかないからね!とこれからのスピッツの活動は半永久に続くことをここで宣言してるわけだ。

そしてCメロである。

見知らぬ人が 大切な人になり
相性悪い占いも 余計に 盛り上がる
秘密の実 
運命を突き破り もぎ取れ

ファンだって音楽をきっかけにスピッツのことを知って、メンバーのことを大切な思うようになったわけであり、スピッツもライブでお客さんの姿をみたから、この人たちのために音楽を頑張ろうって思うようになったわけだ。

当たり前な話だけど、聴いてくれる人がいるからバンドは続けられるし、続けていく情熱も生まれるわけだ。

ファンはなによりもバンドにとって「大切な人」なわけである。

相性悪い占いとは、世間が持つ、あるいはファンがもつスピッツのイメージとは違うことをすれば「やめとけ」と言う人もそれなりにはいるけど、そうやって批判されるからこそ「やってやんよ」と盛り上がるといっているわけだ。

秘密の実とは、まだ出会っていないわからないワクワクとか、そういう類の言葉であろう。

運命という壁が立ちふさがっても、それを突き破って奪い取る覚悟で俺たちはこれからもやっていくから、といっているのだ。

マイペースに見えるスピッツだけど、まだまだ反骨精神剥き出しにして、他の人じゃできないことをどんどんやってやるよと言っているわけである。

そして、最後のフレーズ。

まだまだ 醒めない アタマん中で
ロック大陸の物語が
最初 ガーンとなった あのメモリーに
今も 温められてる
さらに 育てるつもり
君と 育てるつもり

そんなこれからのスピッツはファンであるあなたがいて成り立つものである。

だから、これからのスピッツの物語はファンであるあなたと育てていくものでもあるわけだ。

スピッツはまだまだ醒めないでロックな音楽作って演奏していくから、そんな俺たちに付いてきてくれるなら一緒に物語を作ろうね、と言っているわけである。

応援してね、ではなく、育てるつもり、と表現しちゃつのがマサネム語録だよなーと感服するわけである。

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