back numberの「怪獣のサイズ」に感じる”らしさ”と”らしくなさ”について

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back numberの久しぶりのノンタイアップ楽曲である「怪獣のサイズ」がリリースされたので、その感想を書いてみたい。

ところで、この楽曲はこれまでのback numberの楽曲とは違った”匂わせ”を行っていた。

突然、フェスのアーティスト欄などで表示されているback numberのアー写を怪獣に変えてしまったり、Youtubeのサムネイル画像を怪獣に変えてしまったり、Wikipediaを通じて楽曲のタイトルをしれっと公開してみたり。

これまでのback numberの楽曲とは違う匂わせを行なっていたので、もしかすると、これまでのback numberの楽曲とはまったく異なるテイストになるのではないかと思って、ドキドキしながら「怪獣のサイズ」を聴いたのだった。

すると、これが絶妙な塩梅の楽曲だった。

いつものback numberらしさもあるし、いつものback numberとは違う雰囲気もある楽曲だったのだ。

どういうことか?

順を追って説明してみたい。

back numberの「怪獣のサイズ」の話が紡ぐback numberらしさ

まずは、いつものback numberらしさについて。

この歌、あまりにも歌詞が清水依与吏すぎるのだ。

少なくとも、一聴して、自分はそのことを強く感じた。

普通、歌詞を見ただけではどのバンドの歌か当てるのは至難の業だと思う。

でも、「怪獣のサイズ」だったら、これまでのback numberのキャリアを踏まえて、もしかしたらそれができるんじゃないかと思うくらいに、この歌、清水依与吏節が炸裂しているのである。

冒頭だけでも、そのことを感じる。

ああ そりゃまぁそうだな
僕じゃないよな

これが冒頭のフレーズだが、もうこれだけで途方もなく清水依与吏節が炸裂しているように感じる。

清水依与吏は、胸のうちで呟くような口語的にフレーズな使い方が上手いと思っているが、「怪獣のサイズ」でも、それが随所に炸裂しているわけだ。

「ああ」とか「まあ」を枕にした上で、「そうだな」という言葉をもっていく、このリアルに心境を吐露している感じ。

そこから繋がる、次の「僕じゃないよな」というフレーズでも、清水依与吏らしさが溢れていて、秀逸である。

何よりこのフレーズだけで、僕という人物の解像度を上げてしまうし、完全に歌の視点を明確にしてしまう。

上手い映画監督だと冒頭の何気ない俯瞰のショットだけで主人公がどういう人で、どういう性格なのかを描いて見せたりするのだが、「怪獣のサイズ」のこのフレーズも、そういう秀逸さが際立っている。

ダラダラとフレーズを重ねる必要もなく、余計な描写を必要とせず、このフレーズだけで、「僕」という人物を完全に描き切って見せるし、back numberだからこその視点を的確かつ端的に表現してみせる。

この冒頭のフレーズだけで、自分はback numberの凄さを実感したわけである。

何気に「どうか そいつと不幸せに」のあとのフレーズが「ってそれは冗談でも」という重ね方にもback numberらしさが滲み出ている気がして、好きなフレーズになっているし、歌の中の感情の進め方が良いなあと思ってしまうのである。

なんせ、世の中には恋愛の歌ってたくさんあるし、同じような主人公が登場する歌ってたくさんあると思う。

でも、そんな”たくさん”の中でも、きっとこれらのフレーズを見ただけで「これはback numberの歌のはずだ」というテンションになれそうなほどの、キラーフレーズを随所に打ち込んでいるわけだ。

「怪獣のサイズ」、只者ではないなと思うわけである。

あと、内面でひたすら自分の本音を吐露していくという構図や一切背伸びをしたりカッコつけたりすることなく、歌の中ではどこまでも率直な言葉を重ねていく感じも良いのだが、そんな中で不意に「ゴジラ」や「カネゴン」というワードをさらっとぶち込む感じも良い。

何気にこういうフレーズが入っているのは、ノンタイアップソングだからこそだよなーと思うし、ノンタイアップソングだからこそのフレーズが楽曲のキーポイントで入っている感じなのも良いなあと思う次第。

back numberの「怪獣のサイズ」の話が紡ぐback numberらしくなさ

「怪獣のサイズ」のサウンドって、back numberの新境地感がある。

back numberの歌って、こういう主人公が出てくる楽曲はいっぱいあるけれど、いつものback numberだったら、そういう歌ってもっとドラマチックだったり、もっとゴリゴリにバラード調に仕立ててくる印象だ。

でも、今作は軽快なリズムで突き進む、ノリノリのナンバーになっている。

もちろん、back numberでもアップテンポの楽曲はいくつもあるが、そういう場合はもっとバンドな部分がしっかり出ていたり、ギターの音色が強めになることが多い印象だ。

でも、今作ってそういうアレンジに寄っているわけでもない。

パートごとに様々な音が鳴り、カラフルな色合いで楽曲が進行していく。

ホーンセクションが強い色合いを出してくる瞬間もあるし、ストリングスがそっと寄り添う瞬間もある。

とにかくサウンドが自由自在で面白みに満ちている。

この感じに、自分はこれまでのback numberとはちょっと違う部分を垣間見たのである。

清水依与吏の渾身のボーカル

あと、自分は「怪獣のサイズ」でめっちゃ好きなボーカルのパートがある。

それは、ココ。

馬鹿な僕も優しい僕も

ここの「馬鹿な」の言い方がたまらないのだ。

テキストで表記するなら、

ばぁーっかなあ〜ぼくも〜って感じなのだけど、「ば」と「ぼ」の破裂音を炸裂させる感じがたまらないのだ。

ネチっこい・・・というのとはちょっと違うけれど、でも溜めまくった何かを吐き出すように、音をかましている感じにぐっとくるのである。

サウンドは爽やかな感じだからこそ、ここの部分のボーカルの温度感に、ぐっとくる自分がいるのである。

まとめに替えて

「怪獣のサイズ」はback numberらしさも新しさも内在していて、とても好きだ。

改めてback numberの好きな歌に出会ってしまったなーと感じる自分。

これだけ「君」に対する想いをぶちまけている歌でありながら、君に対する描写よりも怪獣の描写の方が多めの楽曲になっているのも良いし、純粋にメロディーが洗練されているのも良い。

ほんと、新たなback numberのキラーチューンが生まれた心地なのだ。

ぜひまだ聴いていない人は聴いてみてほしい、そんな一曲。

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