今の時点でsumikaの魅力を再考してみる
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一応、このブログは定期的な更新を心がけているので、大型ロックフェスのメインステージに頻繁に登場するようなバンドについては、一度くらいは記事で取り上げていると思う。
なので、このバンドのことはもう記事にしたししばらくは話に出さなくていいかな・・・と思って、前に更新した記事をみてみると、あれから一年以上経っているのか・・・というケースも多かったりする。
自分自身の成長速度で考えてみると、一年なんてわりと「つい昨日のこと」のように思ってしまうし、会社で働いている身からすると、もう入社から●●年経ったのか・・・という事実はわりと恐怖でしかないんだけど、ことバンドと赤子においては一年の時間があれば、びっくりするほど変化していることが多い。
というのも、バンドは生き物だ。
一年での変化は、想像以上に大きいのだ。
特に近年は、YOASOBI然り、Ado然り、一年くらいの期間でがらりとその評価を大きく変えるアーティストが多い。
情報の浸透率みたいなものが年々加速しているからこそ、よりその変化をダイナミックに感じるのだと思う。
加えて、バンド自身の変化もさることながら、自分自身のバンドの見方も変化していくため、一年前はあんな記事を書いていたけれど、今だともうちょっと違った見方になりそうだぞ・・・ということもある。
前置きが長くなってしまったが、しばらくは<一度記事でピックアップしてみたこのバンドのことを再考してみよう?>なテンションで記事をしたためてみたいなあと思っている所存なのである。
で、今回紹介してみたいのが、sumika。
以前は、こんな記事でsumikaのことを取り上げていた。
sumikaのアルバム「Chime」の良いところと悪いところ
2022年は、片岡健太が初の書き下ろしエッセイ『凡者の合奏』を発売した年でもあるので、改めて振り返ってみたいなあと思った次第。
なお、『凡者の合奏』はbanbiの話もあったり、sumika結成のエピソードもあったりと、読み応えのある本だったりするので、sumikaというバンドをより深く知りたいという人は、ぜひ読んでみてほしい本である。(ブログだと、こういう時にAmazonのリンクでも貼るのが筋だと思うが、面倒なので、興味のある方は各々で検索してくださいな)
今までのsumikaの話
ところで、sumikaはどういうイメージを持たれているバンドなのだろうか?
人によっては、意見が分かれる部分だとは思う。
が、パブリックな印象で言えば、老若男女に受け入れられそうな雰囲気を持っているバンドなのかなあと思っている。
なので、ドラマや映画のタイアップソングにも安心して起用できそうな雰囲気を持っている。
確かに「フィクション」や「ファンファーレ」を代表するように、煌びやかなサウンドと疾走感のあるビートが印象的なナンバーを聴くと、sumikaっぽさを感じるリスナーも多いと思う。
ポップな濃度の高い歌と、パワフルな片岡の歌声。
そして、華やかさをもちながらもアグレシッブさを解き放つsumikaのサウンドが合わさったときの破壊力は確かに絶大である。
あるいは、「願い」や「本音」に代表されるように、ストリングスが冴え渡るドラマチックなバラードも、sumikaらしさが際立つ楽曲である。
というよりも、こういうフォーマットに楽曲を落とし込んだとしても、<ありきたりなバラード>になることはなく、sumikaらしさが通底する<映える>テイストになるのがsumikaの強さである、という言い方をしてもいいのかもしれない。
これは、sumikaらしい美しいメロディーラインと、綺麗な歌でもパワフルさが見え隠れしまくる片岡の歌声が成せる技なのかなあと思っている。
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2022年のsumikaの話
キャッチーな歌が多く、見た目も爽やかだからこそ、sumikaはパブリックとして老若男女に愛されそうなバンド、というイメージになるのかなあと思っている。
でも、見た目は爽やだろうとも、老若男女に愛されるバンドになろうとも、色んな意味でsumikaは<単に穏やかやなバンド>ではないということが『凡者の合奏』を読むことで感じられる。
sumikaというバンド名が持つ意味とその覚悟含め、その爽やかさ(っぽそう見える感じ)と内面に秘めた闘志は、実は表裏一体であることを知る・・・とでも言えばいいだろうか。
まあ、あんまりこのブログではエッセイではこう書いていたからこうだよね、みたいな話をするつもりなんだけど、一面性では語れないバンドだよなあということは言えるんじゃないかと思っていて。
それは、楽曲からも随時感じられるよなあと思っている。
特に2022年にリリースした楽曲を聴くと、そのことを強く感じる。
sumikaが2022年にリリースしたのは、「Simple」、「Glitter」、「The Flag Song」である。
この3曲、びっくりするほどどれもテイストが違うのである。
しかも、前項で述べたようなsumikaらしいフォーマットに落とし込んだ楽曲ではないように感じるのだ。
sumikaって、こういうテイストの歌であれば多数にsumikaっぽい・・・・と思ってもらえるサウンドを確立しているバンドだと思う。
故に、メロディーがどういう形であれ、サウンドをsumikaっぽいと思ってもらえる方向に舵を切っていくと、その破壊力は相当なものになるし、そっちの方が安パイだとは思うのだ。
でも、2022年のsumikaはそれをしていない。
いや、もちろん、楽曲ごとにこのサウンドが一番良いと思ったうえでのアレンジをしているのだとは思うんだけど、どの楽曲を聴いても<常のその先を目指すギラギラ感>を自分なんかは感じるのだ。
例えば、「Simple」。
この歌は、Simpleというタイトルでありながら、今までのsumikaの楽曲とはまた違う、シンプルとは異なるテイストを感じさせてくれる一曲である。
小川貴之が作曲を行っているということもあるのだろうが、イントロで聞こえてくる音のテイストがまずいつものsumikaと異なる印象を覚える。
しかも、楽曲は四つ打ちで進行していく。
いつものsumikaならここで、ライブで合いの手を入れたくなりそうなフックを入れてくるように思うのだが、歌詞を聞かせることを大事にしているからか、あえてリズムは一定になるように楽曲が構築されている。
そして、サビでの流れの切り方も独特で、最初はアッパーに盛り上げるのではなく、サウンドをぐっと絞って、浮遊感が生まれるような展開にしていく。
そして、あとからバンドサウンドが合流するようなアレンジを展開している。
言葉を大切にした構成をとりながらも、sumikaの新境地を感じさせる一曲になっているのだ。
「The Flag Song」も面白い一曲だ。
喜怒哀楽で言えば、怒の色合いが強めなアッパーなナンバーで、今までの楽曲とは明確に異なる色合いをみせた楽曲のように感じる。
「Glitter」がポップ色の強いナンバーだからこそ、「The Flag Song」の荒ぶる感じが際立つ構成になっているのだ。
“行儀の良いバンド”という評価があるのだとしたら、そういう評価とは逆にいくフレーズ選びをみせているのも特徴で。
色んな意味で切れ味鋭いフレーズをみせている楽曲である。
何が言いたいかというと、2022年のsumika、一切お気に入った感じがしないぞ、ということ。
どんどん攻めにいっている感じがするし、あえて言えば、<売れたらそれでしまい>とは一切思っていないことを感じさせてくれる楽曲なのである。
まとめに替えて
・・・とまあ、最終的にはsumikaの幅広さを語るような内容になったんだけれど、新しいを志向するって、なかなかにできることじゃない。
仮に新しいを志向したいとしても、イメージがなかったらそれはできない(納期だけは絶対にあるだろうから、それまでにイメージができなかったら、今までに作ったものを再生産するしかないわけだし)
また、やりたいことがあったとしても、そのやりたいことを表現する、バンドとしての技術がなかったらできない。
「The Flag Song」のような楽曲がさらりとリリースされているわけだけど、バンドとしての表現力が高いからこそ、「Glitter」のようなテイストも行う一方で「The Flag Song」のようなテイストも行えるわけで、この辺りはsumikaのバンドの演奏力の高さを物語っているともいえる。
そして、そもそも新しいを志向するモチベーションってけっこう大変というか、もし<欲>がなかったらそういうのってできないと思うのだ。
でも、sumikaって穏やかなバンドに見えて、内心のメラメラは凄いバンドだと思う。
だから、良い意味でもっともっとが尽きないし、だからこそ、新しい志向していっているのかなーと思っている。
2022年の今、sumikaを改めて振り返ってみると、このバンドの底なし感を実感することになるのでした、というそういう話。
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