Sexy Zoneの「Cream」で描くJ-POPの新境地

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J-POPってどういう音楽を指すのだろう、と考えることがある。

いや、もちろんJ-POPと一口にいっても色々あるし、ポップというのは間口の広い言葉で専門的なカタカナ用語よりも指しているゾーンが大きい。

なので、一口にこれがJのPOPだ!と宣言するのは難しいし、具体的な正解があるものではないと思う。

ただ、J-POPというのは時代とともに移ろいでいる概念であるというのは言えるのかもしれない。

それこそ90年代は小室哲哉の存在感が大きかったり、小林武史がアレンジを手がけた歌がメガヒットを生み出していることもあり、彼らの作家性がJ-POPの印象に大きな影響を与えた部分がある。

あるいは、ドラマのようなタイアップソングこそがたくさんの人の耳に届くことが多く、かつタイアップソングは尺が決まった中で音楽を作るので、特定のフォーマットが生まれがちで、そのフォーマットにこそJ-POPみを感じるというケースも多かったように思う。

ただ、たくさんの人に刺さる音楽こそがPOPの真髄なのだと捉えると、時代とともに刺さる音楽の方向性は少しずつ変わっていく。

今、当時の小室哲哉っぽい進行・アレンジの音楽を聴くと、きっと「懐かしい」と思う人が多いと思うし、下手をすると「古い」と感じる人も多いかもしれない。

これは、それだけ当時の大きな影響を与え、たくさんの人の記憶にその手癖が残っている現れであるわけだが、影響が大きかった分、今なおその記憶に引っ張られて時に「古さ」を感じさせる記号になってしまうのだ。

時代によってメガヒットを生み出す音楽家は変わるし、それに伴って、流行りのサウンドやリズムアプローチにもブームの移ろいが出てくることを実感する。

影響が大きいものであればあるほど、そのブームが過ぎ去ると、それは”当時の音”という覚えられ方をすることになる。

同じJ-POPという括りであったとしても。

前置きが長くなってしまったが、そう考えた時、2022年から2023年にかけてのSexy Zoneが描くPOPの描き方がどこまでも秀逸であるように感じるのである。

Sexy Zoneが描くPOPの話

2022年、Sexy Zoneは『ザ・ハイライト』 というアルバムをリリースした。

この作品は80年代を意識したポップソングがいくつも収録されている。

色んなアーティストに楽曲を提供されてもらっている作品だし、洋風ポップスもあればシティーポップもあってジャンルは多様ではあるけれど、どの楽曲も80年代の空気感を持った楽曲になっており、ジャケットもそういった要素を意識した作りになっている。

これが、Sexy Zoneが描くポップの独自性を際立たせている印象も受ける。

というのも、近年、多人数男性グループの多くは、わりと二極化に分かれることが多いと思っている。

そのひとつは、サブスクやSNS時代ということもあって、”世界”を距離の近いものとして捉え、”世界”を想定した音楽を生み出すことを志向するケース。

こういう場合は世界に進出することに成功した音楽として、K-POPを念頭に置いたうえで自分たちのダンスミュージックを再構築するケースが多い印象を受ける。

で、もう一方は、マーケット的な大きさから邦ロック的なイズムと距離を近づけるケース。

有名バンドに楽曲を提供してもらったり、バンド的な躍動的パフォーマンスを研ぎ澄ませていくケースが多いような印象を受けるし、最近はいわゆるフェスの場に出演することで、多くのお客さんを魅了させるケースが増えているが、こういう場合は邦ロック的なイズムを取り入れているケースが多い印象を受けるのだ。

まあ、上記は自分の勝手な見立てではあるし、完全に分けて考えるというよりは混在するケースが多いのだが、なんとなくそういう方向性を持ちながらアウトプットしているグループが一定数いるのではないか・・・と感じているのだ。

ただ。

勝手ながらに分析的に考えたとき、Sexy Zoneはそのどちらでもない、自分たちだからこそのポップスを生み出している印象を受けるのだ。

80年代に舵を切りながら統一したカラーのアウトプットを生み出した「ザ・ハイライト」 は、そんなSexy Zoneだからこそのポップスの集大成のひとつであるように思うのである。

そして、今後はこういった懐メロ路線で突き進むのかなと思ったタイミングで生み出したのが、「Cream」だった。

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「Cream」の話

単純に楽曲がとても良いと思ったということもある。

んだが、それ以上に良いなあと思ったのだ、「ザ・ハイライト」 で大きく揺さぶりをかけたタイミングで出したから、ということ。

どういうことかというと、「Cream」は回顧的なポップスに突き進むのではなく、最先端的なポップスとしての色合いも備えていて、そこに軸を置いているのが良いなあと思ったのである。

楽曲の提供者はiriとYaffle。

この共作というのが、良い。

特にYaffleは今のポップスのトレンドを押さえたプロデュースということもあり、その手腕がいかんなく発揮されている。

それこそ、iriの楽曲はもちろん、藤井風やSIRUPなど、様々なアーティストのポップスに今のJ-POPの風を送り込んでいるYaffleだ。

ポップスとして綺麗な体裁を作ったうえで、そこからちょっとずつスパイス的に様々な音を放り込むことで、良い意味で調和を崩しているのが絶妙なのである。

「Cream」は甘さとシティー感が内在しているポップスという装いだ。

そのため、雰囲気としてはボーカルは優しく響いていて、サウンドはちょっと懐かしさ含んだポップス感が香っている。

でも、そこで留めることはしない。

そこに、Yaffleが細かなエッセンスを楽曲に送り込むことで、より今風のポップスの空気感を生み出していく。

例えば、Aメロでは菊池風磨 → 松島聡 → 佐藤勝利 → 中島健人という流れでボーカルが紡がれるが、佐藤勝利のパートからボンゴっぽい音を挿入したり、エフェクトをかけたギターの音を挿入したりと、単に歌割りが変わる以外の部分でも楽曲にメリハリをつけていることが分かる。

細かくトラックを分断していき、各々の歌割りごとに細かく音の足し引きをしていく。

そのため、Sexy Zoneの各々のボーカルが際立つし、Sexy Zoneにしか生み出せないポップの具合が鮮明に浮き上がる。

・・・というのもあるし、「ザ・ハイライト」 をはじめ、あるタイミングからSexy Zoneは他のボーイズグループとは違う角度でダンスミュージックやポップスを生み出してきたからこそ、Yaffle的なエッセンスと綺麗に混じり合う印象も受ける。

まとめに替えて

ということで長々と書いてしまったが、Sexy Zoneの「Cream」が良いぞ、というのがこの記事の結論。

Sexy ZoneとiriとYaffleがタッグを組んだからこその聴き心地が「Cream」にはあるように思う。

なにより、2022年で「ザ・ハイライト」 でイメージを更新したかと思えば、2023年はSexy Zoneのポップスを次に更新させる「Cream」という楽曲をリリースしたということから、今後、どういう音楽を生み出していくのかが楽しみだなーと思った、そんな次第。

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