男子の下ネタと女子の下ネタは全然違う、という話はよく聞く。

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端的に言えば、男の下ネタは「挿れるまでの話」で盛り上がり、女は「挿れてからの話」で盛り上がる。

だから、男の下ネタはファンタジーになりがちだし、女の下ネタはドキュメンタリーになりがちになる。

じゃあ、歌詞はどうなのだろうか?

例えば、女性代表であるガールズバンド、yonigeの歌詞をみてみよう。

あげっぱなしの便器がやけにリアルで恥ずかしくなった
君を泊まらせた後の誰もいないワンルーム
こんな気持ちになるのは今だけなんだけどな
やけにずっと待ちわびてる0.2秒の振動を

この歌は「ワンルーム」という歌の一節である。

女性の一人暮らしなら上がることがない便座が上げられるわけだが、なぜ便座が上がっているのかといえば、男性が排尿したからだと思われる。

つまり、君=男なわけだ。

で、0.2秒の振動ってケータイのバイブのことだろうか?

つまり、彼の連絡を待っているわけだ。

と、こんな感じで、キーワードからこの歌詞がどんな物語を紡ぐのかがある程度想像できるわけである。

流石は、リアリスト女性の歌詞という感じで、細かな情景描写と、その風景から見える主人公の心模様を上手く描いているわけだ。

一方、男性代表として、この歌詞をみて欲しい。

愛とか 恋とか そういうの すっとばして
六感で動いてみたらええやん
ちょっとだけ冷やかしてみてもいいかな?

キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!キッス!
からの入籍!入籍!入籍!入籍!入籍!入籍!!!!!

このドキュメンタリー性のなさ。

妄想しかない、このテイスト。

これこそ、男が書いた男の歌詞という気がしないだろか。(ちなみにこの歌、ヤバTの「ハッピーウエディング前ソング」である)

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え?yonigeとヤバTとテイストが違いすぎるって?

じゃあ、別のバンドをみてみよう。

夕暮れは 二人の影を 熱く赤く 染めてくわ
憧れてるの どこにでも行けそうな その足のサイズ

この歌詞は多くのガールズバンドに多大な影響を与えたチャットモンチーの「恋の煙」という歌の一節である。

風景を丁寧に描写することで、心情を上手く浮き彫りにしていく、という意味ではyonigeと通底するものがある。

また、夕暮れの赤が示すのは情熱だったり、君に恋い焦がれてる思いだったりするわけだ。

そして、夕焼けの影は普段の自分よりも大きく映し出し、足も大きくなるから、その足なら君の心の中まで踏み込んでいけそう、みたいなことまてま言っちゃうわけである。

そう言えば、チャットモンチーの歌は「色」で気持ちを示すことが多い。

例えば、チャットモンチーの失恋ソングとして名高い「染まるよ」にはこんなフレーズがある。

あなたの好きな煙草
わたしより好きな煙草

いつだって そばにいたかった
分かりたかった 満たしたかった
プカ プカ プカ プカ
煙が目に染みるよ 苦くて黒く染まるよ

煙草の話から、自分の心が黒く染まる、という話に結びつけていく。

煙草が燃えて黒く染まっていくのと自分の心模様を同じようになぞるわけである。

あなたがわたしのことを煙草よりも好きじゃなくなってしまい、あなたがわたしのそばにいることがなくなってしまった。そのことを示すわけだ。

もちろん、これ、歌詞のテイストで言えば、ファンタジーな部分もあるのだろうが、描いている心情はどこまでもリアリスティックであり、やはり女性バンドの歌詞はドキュメンタリー性が強いように感じる。

一方、この歌詞をみてほしい。

日本の米 We want 米 至宝の愛
真っ白に炊きたてごはんが輝く 白米が美味いんじゃない?

日本の米 君の元へ Keep on the rice
この国 日本の食を支えてる 誇れよ我らの米を
日本の米は世界一

これは打首の「日本の米は世界一」という歌の一節である。

この歌もチャットモンチーの曲と同じように、対象物への愛を歌っているという意味では、同じはずなのに、限りなくドキュメンタリー性が薄い。

また、この歌はチャットモンチーと同じように「白」という色を象徴的に使っており、その「白」は現実の対象物を描いた色のはずなのに、どこまでも妄想性がにじみ出ている。

これこそ男が書いた男の歌詞という気がしないだろうか。

え?チャットと打首じゃテイストが違いすぎるって?

では、この歌詞をみてほしい。

空調の効かない 私の部屋
腐りかけたこの部屋の空気は
私の心まで悲しい記憶に引きずり込む

これはいま最も勢いのあるガールズバンドであるSHISHAMOの「BYE BYE」の一節である。

はい。出ました、風景描写してからの心理描写。

で、こっから恋愛についての記述が始まるのである。

対して、この歌詞をみてほしい。

四畳半を拡げたくて 閃いてからは速かった
次の日には 出来上がった 手作りプラネタリウム
科学の本に書いてあった 作り方の他にアレンジ
実在しない穴を開けて 恥ずかしい名前付けた

これはBUMPの「プラネタリウム」であるが、主人公のいる場所が部屋であること、その部屋の描写をしている点ではこの2曲は同じなのに、指し示す意味、事がまったく違うわけである。

何が言いたいのかというと、ガールズバンドって、ここぞの歌では必ず恋愛曲を歌うし、その恋愛曲は「リアリティー」あるいは共感を意識した歌が多いということである。

少なくとも、ヤバTとか打首みたいなテイストのガールズバンドはたぶんいないし、ガールズバンドがそういうことをやると「すべる」空気になりやすい。ぶっちゃけてしまうと。

たぶん入籍を煽ったり、お米の歌を歌ったり、妄想で(頭の中で)プラネタリウム作っちゃような、妄想重視、ファンタジー重視のガールズバンドは今後もそこまではフックアップされないのかなーと思う。

音楽の種類は雑多でも、歌詞にはどこか通底するものがあるからこそ、ガールズバンドという括りが成立してしまうのかもしれない。

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