chilldspotというバンドに宿る魅力について

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注目している若手バンドはいくつかいるが、その中でも特に活躍を楽しみにしているバンドが一組いる。

それがchilldspotだ。

2019 年12 月に結成されたこのバンドは、ファーストep『the youth night』をメンバーが在学中となる2020年11月にリリース。

すると、Spotifyの「RADAR:Early Noise 2021」されたことで、より一層話題を集める。

その後、着実にキャリアを重ねていく中で、2022年3月30日には新しいepとなる『around dusk』をリリースする。

この記事では、最新epの『around dusk』を通じて、chilldspotの魅力を書いてみたいと思う。

本編

類まれなる音楽性

chilldspotの音楽を一言で評するならば、ジャンルレスである。

いや、その言葉ではまったく音楽性を表していないやんというツッコミが飛んできそうであるが、実際そうなのだから仕方がない。

というのも、良い意味でchilldspotの音楽はひとつのジャンルで形容しづらいのだ。

代表曲である「ネオンを消して」は、シックかつスタイリッシュなイメージの楽曲ではある。

そのため、いわゆる横揺れのグルーヴで魅了するタイプ・・・と形容できそうな気はする。

バンド名に「chill」というワードが入っていることもあるし、チル系のバンドなんでしょ、という説得力は増す。

確かに、現時点でリリースされている楽曲には、攻撃性のあるサウンドで展開するものはないし、拳をつけあげて「おーおーおー」と盛り上がるタイプの楽曲もない。

でも、<横揺れ系>とか<チルっぽい>という言葉だけではカテゴライズできない音楽性があるのだ。

なぜなら、chilldspotは楽曲ごとのグルーヴが毎回、違う色合いだからだ。

どういうことかもう少し具体的に説明してみよう。

実際に複数曲を聴き比べることで、言いたいことがみえてくると思う。

例えば、ヨルシカのn-bunaが楽曲プロデューサーを務めた「your trip」は、「ネオンを消して」にはない疾走感が内包されていて、メロディーもどこかポップで朗らかな輝きに満ちている。

楽器隊は淡々とリズムをキープしているかと思えば、間奏では躍動したギタープレイが展開されており、「ネオンを消して」にはない違った躍動感を解き放っている。

「music feat.LINION」では、ギターのカッティングがベースに、ジャジーなムードが構築された楽曲になっている。

そのため、洗練された色気が楽曲の中に見え隠れしている。また、『around dusk』のラストに収録される「your trip」は、これらの楽曲とはまったく違う印象を与える一曲になっている。

全体としてはハイが強めのギターのカッティングが印象的で、細かなリズムアプローチ。

が、それ以上に印象的なのは、アッパーかつ音圧強めのサビ。

今までのchilldspotにはないタイプの盛り上がりをみせる構成になっていて、おそらくライブでもキラーチューンになりそうな力強さを創出している。

何が言いたいかというと。

リズムの心地よさがchilldspotの魅力であることは確かだ。

でも、<リズムが心地よい>と一口にいっても、chilldspotはなかなかにひとつのカテゴリーに分類することが難しい音楽性を持っている、ということだ。

『around dusk』のリリースをもってして、良い意味でよりchilldspotの音楽性が複雑になってきたことを実感する。

比喩根の音楽性

chilldspotの音楽を語るうえで重要なのは、ギターボーカルで作詞作曲も手掛けている比喩根の音楽性だと思われる。

世に出ているインタビューを読むと、比喩根が中心になってバンドが結成されたこともわかる。

また、楽曲を手掛けることだけに尽きず、いわゆる横揺れ系サウンドのバンドと比較する中で、比喩根のボーカルが大きな差別化を生み出していることを実感する。

例えば、「yours」ではボーカルを伸ばす部分がいくつか確認できる。

そのときのビブラートの感じが独特なのだ。

例えば、「感じてー」と歌ったときの「て」における<e>の音の震え方が、個性なのだ。(この辺りは実際に聴いてもらった方が、伝わると思う)

勝手なイメージで恐縮であるが、サウンドのリズムアプローチが特徴的なバンドって、ボーカルも良くも悪くもスマートで透明感のある人が多い印象。

でも、chilldspotは違う。

ボーカルに存在感があって、パンチ力があって、フレーズひとつひとつの歌いこなし方にも個性が宿っているのだ。

「yours」のようなボーカルが伸びやかな楽曲を聴くと、そのことをより強く感じる。

そして、ボーカルの存在感が強めだからこそ、楽曲の印象としても<おしゃれ>とか<心地よい>で留まることがなく、もっとその先の深い揺さぶりを感じさせてくれるのだ。

いや、もちろん、楽曲ごとによって感想の中身は変わることになるんだけど、ボーカルの存在感が強いからこそ、幅広い楽曲がかっこよくキマっている、という背景があるのは間違いない。

『around dusk』の話で言えば、「line」は鍵盤の音色が印象的な軽快なナンバーである。

「夜更かし」は丁寧かつ繊細に音を積み上げるシックなナンバーとなっている。

共通項があるとすれば、グルーヴが心地よいということだ。

でも、楽曲ごとの違いが鮮明になり、楽曲としてのインパクトを強めているのは、個性的かつ表現力豊かな比喩根のボーカルがあるからこそ。

そのように思うのである。

まとめ

『around dusk』がリリースされるタイミングだったので、その作品を踏まえながら、自分が感じるchilldspotを言葉にしてみた。

おそらく2022年でバンドとして大きな飛躍を遂げる気がするし、メンバーが若いので、キャリアを重ねるごとの進化の具合も楽しみで仕方がない。

ぜひ今のうちに注目しておきたい、そんなバンドである。

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