前説

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back numberの新曲のタイトルをみて、ため息が出た。

「HAPPY BIRTHDAY」

はいはいはいはい。

また、このタイプの歌ね。そんなことを思う僕。

聴くまでもなく、歌詞のノリも歌のテイストも想像される。

どうせ、ま〜〜〜〜た君のことを大好きな僕が、君と一緒に入れないことを嘆きながら、君への想いをウジウジと歌う感じの片想いソングなんでしょ?

そう思ったわけだ。

んで、どうせま〜〜〜〜たストリングスが華麗響くタイプの、泣きメロ系ミディアムバラードなんでしょ?

そう思ったわけだ。

このタイプの歌って、言うなれば今のback numberのお家芸みたいなものであり、テンプレート化されているフシすらある。

もろちん、細かい部分での違いはあるにせよ、ザ・バクナンソングのフォーマットみたいなところがあるわけだ。

だから、そこまで期待はしていなかった。

本編

案の定、きちんと聴いてみたら、当然そういうテイストの楽曲だった。

良く言えば期待を裏切らない。

けれど、悪く言えばいつも通り。

想像していた通りの世界観が、想像通りのback numberのサウンドで展開されていた。

いつもの依与吏節が炸裂していた。

もちろん、すごく上質なポップスソングで、back numberの良さが凝縮された曲ではある。

けれど、ここで見えてくるバクナンの良さって、バクナンのことが好きな人なら誰もが知っているような「いつものback number」の良さでしかなくて、自分の中で改めて「おおっ、すげえ!」って思う要素はなかった。

そう。

この記事を書くために、改めてこの歌を聴き直すまでは。

バクナンはヤバイ

週末になって、ようやくまとまった時間が作れて、腰を下ろして曲が聴けるようになったので、改めてフレーズを噛みしめるように聴いてみようと思って、再生したのが、ついさっきのことである。

その時、自分の耳を疑った。

「HAPPY BIRTHDAY」は最後、ストリングスを鮮やかに響かせる壮大なサビになり、一番最後のサビのフレーズでは、また急に音を減らして、静かになっていく中、依与吏がか細い声で、切ない感情をしっとりと歌い上げる。

んだけど、その時のフレーズに耳を疑ったのだ。

依与吏「ハッピーバースデー 片想いの俺」

んん?

僕は耳を疑った。
慌てて、もう一度、巻き戻して再生する。

依与吏「ハッピーバースデー 片想いの俺」

はぁあぁあああ???????!!!

いやね、今さらに、依与吏の歌詞の女々しさを突っ込んだりはしませんよ?

こういう歌詞にこそ需要があることを知っているし、そういうフォーマットにきちんと落とし込む依与吏の作詞家としてのセンスは、わりと評価しているつもりでいる。

けれど。

マジで、この最期のフレーズに僕はビビりまくったのだ。

てっきりさ、僕はこの歌のことを、君に片思いをしている俺が、君への想いを女々しくも切なく歌った歌だと思っていたのだ。

だから、最後のフレーズは、てっきり想いを届けることのできない君に対して、届かない君への想いを詰め込みまくったフレーズで締めくくると思ったのだ。

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例えば、表現としては陳腐かもしれないけれど、「愛しているよ」とか「それでも君が好きだよ」とか、そういう感じのフレーズで締めくくると思っていたのだ。

君への想いを歌うことが、ラブソングの定石だと思っていたから。

ましてや片思いソングって、君への想いをどう美しく、個性的に表現するのかが腕の見せ所なわけで、依与吏と言えども、そういうアプローチをしてくると思っていたのだ。

例えば、ヤバTの「かわE」ですら、表現方法はともかくとして、君のことを褒めたり、君への想いを言葉にしているわけじゃないですか?

だから、バクナンのこの歌も「そういうアプローチ」をしてくると思っていたのだ。

なのに。

この歌が最後に残したフレーズ、改めて見てくださいよ。

「ハッピーバースデー 片想いの俺」

いや、もうすげえよ、依与吏。マジかよ、依与吏。

この歌さ、完っ全に主人公が「自分」であるわけですよ。

君すらビックリマンチョコのチョコレートと同じように「おまけ」になっている片思いソングなわけですよ。

ラストのフレーズが「俺」で終わるラブソングなんてある????しかも片想いソングでよ????その発想天才すぎひん???

そう思うわけだ。

なんというか、モテない男子のメンタル理解しすぎでしょ?って思うわけだ。

そりゃあ、これだけ自分が主人公って思ってしまう男の子だったら、そりゃあ女の子にモテないよ、って思うわけだ。

どうせ冒頭の「君から返事が来てるかな」っていう描写だって、前の日に主人公が君にLINEを送ったからこその描写なわけでしょ?

「実は明日さ、俺、誕生日なんだよ。だから、よかったら君と一緒に過ごしたいな、なんて言ったら迷惑かな?あ。別に忙しかったら無理に返信しなくていいからね。でも、●●ちゃんとご飯行けたら嬉しいな。じゃあ、俺は寝るね。おやすみ」

とかなんとか、自分の気持ちを一方的に押し付ける痛いLINEを君に送ってるんでしょ?

いや、そのお前のオーダー、君にとって何のメリットがあるんだよ???好きでもないし興味もない男子からの、メリット完全ゼロのデートのお誘いほど、返事したくない案件もないでしょうに、って思うわけだ。

でも、恋愛偏差値低めの主人公は、そんなこと思う余裕もない。ってか、恋愛脳に陥ってしまった人間って得てして、そういうアホな状態になってしまう。

金魚すくいで言えば、もう穴が空いた状態なのに、金魚を救おうとしているくらいの、みっともなさ。

それでも愚かなことに、何かに期待してしまうわけだ。

だから、LINEを送った後も、必要以上にLINEを見ちゃったりするのだ。

で、気になるからチラチラケータイを見ると、知らんうちに既読だけは付いていたりする。

でも、返事はない。

既読が付いてるのに返事がないのは、きっと君が忙しいからだとか、もう寝てしまったからだとか、なんか自分の中で勝手に理由を作って、きっとそうなんだ、とかよくわからん理屈をこねくり回す。

で、主人公は寝れないのがわかっているくせに、無理矢理に眠ろうとする。

で、朝起きたら、ケータイが鳴っているから急いで手にとって見てみたら、しょーもないクーポンお知らせがきててただけで、ため息をついちゃうみたいな。

そこまで考えたとき、サビの「ああそうか そうだよなあ」のフレーズとか、けっこう泣けるものがあるよな〜なんて思ったりする。

まあ、そんな妄想はさておきだ。これだけは言える。

そりゃあ、主人公君よ、モテないよ、と。

自分が主人公のまま振舞ってモテるのは、イケてるバンドマンだけだよ。

イケてないやつがそれをやったら、ただのうざいやつで、いわゆる「面白くないやつ」になっちゃうんだよ。

もうね、主人公のメンタルが「面白くない奴」のそれなんだよ。

でもね。

確かに覚えがあるのだ。

僕も人を好きになってしまった時、偏差値が30くらい下がって、どう見ても悪手でしかないゴミのようなLINEを送ってしまったことあるもん。

依与吏ってまじで、そういう恋愛当事者だからやっちまう「痛さ」をきっちり表現しちゃう。

これは他の作詞家にはなかなかできないことだし、この辺りの嗅覚は本当に天才的だよなーと思う。

ラブソングを歌うバンドマンは多いけれど、最後のワンフレーズまで、当事者の気持ちを丁寧に描写できるのは、依与吏ならではだよなーと思う。

だってさ、ラブソングといえども、なんだかんだ見栄を張りたくなるじゃん?かっこいい自分を演出したくなるじゃん?バンドマンだったら特に。

だから、君を想っているかっこいい俺みたいなものを描写しがちだったりするじゃん?

でも、依与吏は違う。

誕生日になってもまだみっともない俺を鮮やかに描いてみせるのだ。

2番のサビで、ちゃんと自分を客観視していて「俺だってわかっているんだよ」って描写をしていながら、最後の最後は「痛い俺」で終わらせてしまう依与吏のセンス。本当に凄い。

作詞家としての依与吏は、本当にセンスのカタマリだと思う。

メロディーにも注目ポイントはある

あとね、そういう歌詞にメロディーを当てていくセンスもお見事で。

メロディーに対して、字余りにしていくバクナン式メロディー術も健在なのだ。

このフレーズに、この美メロを載せていく、そういう旨さが炸裂しているのだ。

一つの音で二つの音を使うこともあれば、一音で二つの言葉を詰め込むこともあって、細かく聴けばわかるけれど、けっこう面白いメロディーの載せ方をしているのだ。

こういうところにバクナン節が宿っている。

メロディーの綺麗さは言うまでもなく、ね。

まとめ

人によってはバクナンのことを舐めているかもしれないけれど、痛さも躊躇なく表現できるバクナンってマジで鬼才だと思う。

だって、ハッピバースデーってテーマで、こんな歌詞、書けないですって普通。マジで。

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