バンドがキャリアを積むと、あるタイミングで大きく路線が変わることはよくある話だ。

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特に演奏技術が向上して、できることが増えると、バンドの方向性は変わりがちで、細美武士みたいにバンドごとに色を変えてくれる人なら助かるが、多くのバンドマンは同じバンド内で大きく方向性を変えることになる。

そして、バンドによっては振り幅がエグすぎて、アマゾンのレビュー欄が火の海と化すタイプもいる。

ワンオクはその代表的存在だ。

しかも、ワンオクの場合は方向性が変わったとか、そういう類の言い方すらされていない。

彼ら彼女らは、口を揃えてこう言う。

ワンオクは「洋楽」になってしまった、と。

この「洋学」という言い方は言い得て妙で、確かにワンオクの今作は、日本のバンドが洋楽的な装いをした、という意味以上に洋楽的だよなーと感じる部分が多い。

もはや、洋楽的エッセンスを強く感じるバンドなのではなく、One Directionを聴いているような、そんな心地にすらさせてしまうサウンドメイクがそこにある。

確かにワンオクは、ずっと前から明確に海外志向であったし、特にアメリカやイギリスの人たちに本気でウケたいと考え、自分たちのバンドサウンドを海外の流行りに寄せてきているフシはあった。

海外は、バンド音楽があまり人気がなくて、バンドという形で売れようとしたら、然るべき形に音を落とし込まないといけない現状がある。

ワンオクは見事にそのトレンドに色を染めたわけだ。

だから、ワンオクを聴いて、「もはやこれは洋楽だ」という感想を持つのは、すごく自然なことだし、その見立て自体は正しいものだと思うし、そう思われる音を鳴らせているワンオクは、ある意味狙い通りの成果を叩き出したとも言える。

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クオンタイズされた音

洋楽的と感じる最たる理由は、サウンドにあると思う。

「完全感覚Dreamer」のようなサウンドが好きだったワンオクファンからすれば、確かにワンオクの今作は、あまりにも各人のパートがクオンタイズされている。

音が「調整」されているから、その音にロック特有の生々しさや熱量や荒々しさを感じない。

海外において、そういう「調整」が主力なわけだ。

特にドラム。

日本の場合、ドラムなんてズレるくらいがちょうどいいし、肉体性を感じて素敵!なんて捉え方もあるが、今の海外でそれをするのは自殺行為。

クオンタイズされた音に慣れた聴取に食いついてもらうためには、他のポップスと同じように、バンドサウンドもクオンタイズしないといけない。

つまり、海外の音楽シーンで売れるためには、こういう装いは「必須」となる。

ただ、バンドにおけるこの手のサウンドメイクに慣れていない人からすれば、反発が生まれるのもまた仕方がないこと。

こんなんワンオクのサウンドではないし、こんなんTakaのソロプロジェクトみたいなもんだよ、なんて捉え方をしている人がいても、仕方がないのかもしれないなんて思う。

おそらく、今回のワンオクの作品ほどそれぞれのパートに手間暇がかかっている作品もないんだろうなーなんて思うのだが、手間暇がかかっているのと、バンドサウンドにグっとくるかどうかは、また別の話。

事実としてあるのは、ワンオクは大きくサウンドの方向性を変えたということ。その変え方は明確に洋楽のトレンドを意識したということだ。

ちなみに、個人的にはこのサウンドメイク、めっちゃツボである。

限りなく海外のトレンドを自分たちのルーツに落とし込む、という意味ではアジカンの「ホームタウン」なんかにも似ているように思っていて、方向性は違えど、両作品ともすごく気合いを入れて作ったのがよくわかるし、その気合いがちゃんと音になって反映しているから、個人的にはグッとくるのだ。

だから、僕はこのアルバム、めっちゃ好きなのだ。

だってさ、今回のワンオクの作品を聴いて、嫉妬しない日本のバンドはいないんじゃないか?って思うんだよ。

それくらいに、完成度で言えば、文句のつけようのないアルバムだと思うのだ。

こういう装いで「洋楽的」になったアルバムとしては、最高水準に近いアルバムなのではないかと思うのだ。

Takaに求められるものとは?

ただ、ロックテイストの強いワンオクも好きだし、今のワンオクがそういう方向に全振りしたら、どれくらいの名作を生み出すのかなーという妄想はする。

ロック全振りのワンオクのアルバム、単純に聴きたいなーってめっちゃ思う。

でさ、ワンオクは間違いなくどんどんバンドサウンドからは離れているわけだけど、面白いことにTakaが他のアーティストとコラボをすると、わりとゴリゴリのロックサウンドの楽曲でコラボすることが多いように思うのだ。

ほら。

これは日本人ラッパーであるKOHHの作品に、Takaがfeatした作品だが、この作品はKOHHの楽曲の中でも、群を抜いてロック臭の強い作品になっている。

他にも、昨年リリースされたRADWIMPSのアルバムに収録されたTakaが参加した作品も、ゴリゴリのロックサウンドになっていた。

こうやって振り返ってみると、実はワンオクにロック性を求めているのは、ファンだけではないのかもしれないのでは?なんて勝手に思ってしまう。

ってか、Takaの声ってやっぱりロックがベースにある歌の時ほど、信じられない輝きを見せるんだよなーって思うのだ。コラボした楽曲を聴いていると。

まとめ

今回のアルバムは好きだけど、でも、ワンオクはもっと良い作品を作れるバンドなんじゃないかなーって思う。

今回のアルバムは、あえて言葉にするならば「洋楽に追いついたアルバム」のように感じるのだ。

であれば、次にアルバムを出すときは「洋楽的」という言葉ですら括ることができない、人類が始めて触れ合ったような、そんな未開の新しい音楽を生み出すんじゃないかなーと勝手に期待しているのだ。

なにより、そういう「衝動」が詰まったアルバムをリリースしたときこそ、文字通り、ワンオクは世界を代表するバンドになるんじゃないかなーなんて思う。

たぶん。

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