Sexy Zoneの『Chapter II』というアルバムの感想

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前作『ザ・ハイライト』は、端的に言葉にするなら”懐かしさを感じさせるアルバム”だったように思う。

意図的に80’s感のある洋風のダンスナンバーや、シティーポップみのあるアレンジの楽曲を収録したり、アーティスト衣装やCDジャケットなども統一感をもって懐かしさを演出しているように感じたからだ。

結果、流行りのポップスの音像を追いかけがちな他のアーティストとは異なる構成されるSexy Zoneの音楽は、この時代において唯一無二のポップスとして君臨していた。

『ザ・ハイライト』は、そんなSexy Zoneの不動感を決定づける作品だったのではないかと思っている。

ところで、『ザ・ハイライト』の完成度が高く、コンセプト性もしっかりしていたため、ここから次にどんなアルバムをリリースするのか、楽しみでもありつつも想像がつかない自分がいた。

というのも、『ザ・ハイライト』とまったく同じ路線に進んだ場合、良くも悪くも『ザ・ハイライト』の二番煎じと感じるアルバムになってしまうと思っていたし、かといってここで急に路線を変えてしまった場合、それはそれで微妙な気もしてしまったからだ。

少なくとも、個人的には『ザ・ハイライト』で気づいた無二性を壊してしまうような作品がリリースされてしまうとしたら、勿体無いよなーと思う自分がいたのだった。

そんなSexy Zoneが『ザ・ハイライト』以降にリリースしたシングル曲は下記である。

平井大が楽曲提供を行った「Trust Me, Trust You.」。

iriとYaffleのタッグで生み出された「Cream」。

共通点がありそうで、共通点がないようにも見える良曲。

それぞれの楽曲がどうアルバムに収まり、アルバム全体がどんなカラーになるのか、想像できそうで想像ができない中、Sexy Zoneは『Chapter II』というアルバムをリリースすることになるのだった。

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Sexy Zoneの『Chapter II』の話

先に結論を書くと、『Chapter II』は実に絶妙なアルバムだった。

『ザ・ハイライト』が持っていた懐かしさや、Sexy Zoneだからこそのポップス性を持ちあわつつも、そこに留まらずにアルバムの枠を拡張させているような印象の作品だったからだ。

今回も色んなアーティストに楽曲提供をしてもらっており、それぞれのアーティストに対して、どういう内容の発注をして楽曲を作ってもらっているのかはわからない。

が、アルバムの中で14曲が並べられたときの収まりの良さ、ひとつのコンセプトが見え隠れする絶妙な空気感。これまでのSexy Zoneを踏まえたうえで、その先を感じさせるような作品になっていること。

『Chapter II』はトータル的に、実に絶妙なカラーで構築されたアルバムであるように感じたのだった。

あえて言えば、『ザ・ハイライト』が織りなす音像ってモノクロ感が宿っていたように思うが、『Chapter II』はそこから進化してカラーになりはじめて、ハイビジョン感が始まろとしているところまで進んだ、みたいな印象を覚えるのだ。

今作は前述した「Cream」からアルバムが始まるが、この歌は良い意味で『ザ・ハイライト』にもマッチしそうな、懐かしさを兼ね備えた、今のSexy Zoneのムードを十全に持っている楽曲のように感じる。

ギターの音色とか、アレンジの音像とか、メンバーそれぞれのボーカルの艶やかさが、そういった要素を感じさせてくれる。

そこから「EXTACY LUV」をはさんで、リード曲である「Purple Rain」に繋がる。

これもまた温度感の楽曲であるように思うし、この楽曲をもって、今作でも明確に流行の音像だったり、K-POP的なビートメイクではなく、80’sのUSを軸にしながら「今」の音楽に接近するような作品に舵を切っていることを印象付けるようになる。

ポイントなのは、別にこの歌、懐古趣味に転じているわけでもないし、ノスタルジーに浸らせるような空気感の歌になっているわけではないということ。

確かに80’sの風味を歌の至る所にまぶしてはいるんだけど、きちんとSexy Zoneがそういう世界観の歌に混ざり合い、音の配分でいっても、懐かしさ70:新鮮さ30くらいの温度感で調整している印象を受けるため、ルーツ性を感じさせつつも、”新しい”で着地する音楽になっているところなのである。

音楽史を追いかけていくと、現代に近づけば近づくほど、”ポスト”と”リバイバル”が交互にやってくる印象があって、新しいジャンルのネーミングされる音楽を生み出すときはいつだって、流行が出来上がったタイミングで、意図的にその時は流行りになっていない要素をリバイバルとしてもっていき、そのジャンルの”ポスト”を生み出したときであるように思うのだ。

「Purple Rain」は、そういう空気感を覚えさせるし、特に中島健人と菊池風磨のボーカルが魅せる表情が、そういうイメージをより強固なものにしていく印象を受ける。

以降、アルバムに収録されている楽曲の多くが、他のグループではあまり聴かないタイプのアレンジが施されたものが多く、Sexy Zoneだからこそのポップスを印象付けながらアルバムが突き進んでいく。

今作でもっともアッパーな楽曲だと思われるのが、独特のリズムメイクとサビのファルセットが印象的な「BUMP」なのが良いし、chilldspotのhiyunが楽曲を手がけた「泡」もシャボン玉のような人懐っこさを持っており、シックなんだけどユーモアのある絶妙な響きの歌になっている。

アルバムの後半で収録されている「長電話」はクリープハイプの尾崎世界観が楽曲提供をした歌で、歌詞をみると、セリフの使い方に尾崎世界観感が溢れていて、ニヤリとさせられる。

また、こういうセリフの歌詞が表現力のあるSexy Zoneのボーカルとの親和性が高く、歌の解像度が上がっているのも良い。

というのもあるし、中野領太とagehasprings Partyがアレンジを手がけることで、アルバム全体のバランスをもたせつつも、最新のポップスとしての色合いを音像で魅せる感じになっているのも良い。

アルバムが後半ということで、テレビでいえばモノクロからカラーに変化していったように、『Chapter II』という作品の中でも、楽曲が変化していく中で少しずつ音像のコントラストがみてとれるところが良くて、「長電話」はそういう変化を感じさせる意味でも、絶妙な位置の楽曲であるように思うのだ。

そして、アルバム本編のラストは、BIGMAMAの金井政人が作詞を手がけた「せめて夢の中でだけは君を抱きしめて眠りたい」で締める。

この流れも秀逸であるように思うし、ラストがこの楽曲で終わるからこそ、冒頭で述べたような懐かしいのに新しい聴き心地をもったまま、アルバムの余韻を感じられるようになっている。

まとめに替えて

結論、『ザ・ハイライト』のあとにリリースするアルバムとしては、これ以上にないものだったと感じたのが、『Chapter II』への率直な感想だった。

今作をもって、よりSexy Zoneが紡ぐポップが不動かつ唯一無二のものであるように感じたのだった。

今後、しばらくこういう路線に進むのか、このアルバムをもって次はがらっと表情を変えるのかはわからないが、きっとどんなカラーになろうとも、Sexy ZoneはSexy Zoneだからこその音楽を紡いでいくに違いないと感じた、そんな聴き心地だった次第。

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