THE ORAL CIGARETTES『AlterGeist0000』、漆黒なのにまばゆさもある件
THE ORAL CIGARETTESの『AlterGeist0000』を聴きながら、オーラルというバンドの底なし感を覚えている自分がいる。
というか、今回のアルバムを聴いて、THE ORAL CIGARETTESのことが改めて好きになったのだった。
昨年の主催フェスで想定外の事故があった。
その顛末や対応については、この記事は傍に置くとして、シンプルに『AlterGeist0000』というアルバムと向き合ったときの、THE ORAL CIGARETTESの音楽的なワクワクが半端ないことを実感したのだった。
ONAKAMAのバンドと比較をしたとき、THE ORAL CIGARETTESは良くも悪く変化がダイレクトでその振り幅が大きいバンドというイメージだった。
今、『オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証』を聴き直すと、その変化の凄まじさを感じる。
当時のTHE ORAL CIGARETTESは、どちらかという正統派なギターロック的な色合いを帯びていたように思うからだ。
しかし、THE ORAL CIGARETTESは作品をリリースするたびに色んなカラーを出していく。
ある種V系っぽい佇まいで作品をリリースすることもあれば、ヒップホップに傾倒したような世界観を作り上げることもある。
フェス尺だけでみても、年度によってセトリを構築するバンドの音色はがらっと変わる。
それだけメンバーの演奏技術が高く、バンドとしての引き出しが多いからこそだ。
そして、時に変化の加速が早すぎるからこそ「あの頃のオーラルが好きだった」と感じることもあるバンドだった。
でも、確実に進化と変化を続けて、シーンを駆け抜けていった。
そんな印象である。
故に、アルバムという単位でみると、わりと好き嫌いが分かれることが多い。
で。
『AlterGeist0000』で紡ぐ音の感じとか、バンドの切れ味が最高だった。
なんせ、全体がゴリゴリかつしなやかなのである。
なんというか、ストリートファイターのキャラクターでいうと、春麗感がある。
めっちゃムキムキでありゴリゴリしている。
でも、美しさを感じるしなやかさもある。
あきらかにあきらも、鈴木重伸も、中西雅哉も、器用かつ大胆に爆裂的かつテクニカルな音を生み出すからこその高揚感なのだ。
ダーク感を帯びている。
でも、暗くはない。
そういうオーラルだからこの独特の高揚を体感させてくれるのだ。
ど頭の「Bitch!!」から、そういうエネルギーはたまらんくらいに浴びさせてくれる。
「DIKIDANDAN」も、ロック色強めのオーラルのアッパーチューンという感じで、独特のエネルギーを浴びまくれる。
漆黒という言葉が似合う一方で、ライブでゴリゴリに暴れるイメージもできる不思議な一曲。
独特の官能感もあるし、フレーズやリズムワークでびしびしに痺れさせる空気感もある。
様々な美と技が詰まったTHE ORAL CIGARETTESこその音楽世界だ。
何よりも、今回のアルバムでいいなあと感じたのは、楽曲ごとでがらりと声色が変わる山中拓也の歌い分けだ。
「愁」では、切なくて憂いに満ちたボーカルを披露したかと思えば、「OD」では、スタイリッシュでシニカルな歌声で世界観を作り上げる。
かと思えば、「DUNK」ではMasatoと交錯するようにパワフルな歌声を響かせて、ラウド寄りの重厚な空気感を作り上げる。「ENEMY」ではKamuiというタッグにより、これまで紹介したどの楽曲とも異なるエッジさを展開する。
統一性があるのに、雑多。
雑多なのに、全部がオーラル。しかも、バンドとしての高揚感強め。
これが良い。
このワクワクはオーラルにしかない。
しかも、他オーラルのどれでもない、『AlterGeist0000』だからこその世界がそこにあった。
まとめに替えて
だから、自分はこのアルバムがめちゃくちゃに好きだ。
まだ聴いていない人は、一歩、ぜひ踏み込んでみてほしい。
漆黒なのにまばゆさもある、そんなアルバムだから。