ふと冷静になって過去を振り返ると、音楽と出会ったのは中学生の時で、あれから20年くらい月日が経っているんだなーと思う。時の流れは早すぎる。恐ろしい。
カセットテープで聞いていたはずの音楽は、MDという通過儀礼を経て、今でもサブスクリプションで聴いている。テクノロジーの変化のスピードがいかつい。恐ろしい。
ただ、時の流れが早かろうが、テクノロジーの変化がいかつかろうが、あいも変わらず自分は今でも音楽をよく聴く。そこだけは変わらない。
ただし、当時に比べて、新しいものに対するフットワークは落ち気味になったけれど。
というよりも、自分の好きなカテゴリーだけでも、次々に新譜がリリースされるので、自分の好きなものの「周辺」だけで満足しちゃう、という言い方が正しいのかもしれない。
好きなアーティストがたくさん増えて、毎週のように、誰かが刺激的な音楽ニュースを届けてくれるから。
だから、まだまだ深いはずのその沼に、足を突っ込められていないジャンルって、いくつもあって。
VTuber。
この沼もまた、まだ足を漬けることができていない界隈のひとつだ。
まあ、VTuberというのは本来音楽のカテゴリーを指す言葉ではないんだけど、「バンド」然り「ボカロ」然り、演者側のカテゴリーを示す言葉って、直接音楽のジャンル性を指すわけじゃないけど、なんとなく好みを示すワードとして機能することが多い。だから、ここではVTuberという言葉をあえて積極的に使うことにする。
そして、自分はそんなVTuberの沼に片足どころか、指先すら浸かることができず、ここまでやってきてしまったのだった。
でも、なんだかその沼にも、ワクワクする沼はたくさんあるんだろうなーと、ぼんやりと思う。
今更シーンを俯瞰するように、VTuberを追うつもりはないけれど、そこに自分の好みとマッチする良い音楽があるなら、見つけたい。それくらいにはアンテナをたてていきたいなー。
そんなことをぼんやり思っていた時期に、VTuberの中で生まれた、ひとつのプロジェクトと出会うことになる。
それが、ぱらすと!だった。
ぱらすと!の話
ぱらすと!は架空の音楽学校“襲鳴学院”を舞台に、6人のメンバーが様々な活動を展開するVTuberプロジェクト・・・
らしい。
いや、正直自分はそういう設定はあんまりよくわかっていない。でも、個々のプロフィールがしっかりあって、メンバーごとの物語軸で楽しむこともできるんだろうなーくらいの温度感。そこは、まだ自分の足を漬けられていない領域のひとつだ。
ただ、そんな中で、なぜぱらすと!の名前を出したのかと言えば、理由はひとつ。
ぱらすと!が生み出す音楽に惹かれている自分がいたからだ。
というのも、ぱらすと!の音楽って、EDMやピコリーモなど攻撃的で印象深い作品が多いのだ。バンドが好きな自分にとって、ぱらすと!のの音楽性が、わりとストレートに突き刺さったのである。
ぱらすと!の新作、「Paranormal Cluster」も、同様に強烈なナンバーだった。
「Paranormal Cluster」のサウンドの世界
「Paranormal Cluster」は、作詞作曲はZAQが、編曲はebaが手がけた楽曲だ。骨太なバンドサウンドと、疾走感のあるビートメイクが印象的である。のっけから、重たいベースがぶりぶりに響き渡る、ヘヴィっぷり。
重たい音楽が好きな人でも、瞬時に虜にするような巧みがそこに詰まっている、
ベースが主役のターンが終わると、即時にドラムがニヤリとした顔で主役の座を握る。アグレシッブかつワイルドにビートを刻みまくり、咆哮にも似た躍動を届ける。
かっこいいバンドのお手本のような流れ。
ドラムが主役のターンが終わると、お次はギターが登場。切れ味鋭い音色の中で、歌うようなノリでメロディアスで印象的なフレーズを解き放つ。
そして、ベースとドラムとギターが、合体・・・っ!
パンパンパンチ力アンサンブルを展開して、大きな渦を生み出す。音楽の超常現象が、ここに顕在する。
あと、サウンドにおける、生々しさと作り込み具合のバランスも絶妙だ。
楽器の音ごとに「そうあってほしい質感」でサウンドを響かせるからこそ、臨場感と幻想感の両方を担保しながら、随一の歌の世界を作り上げる。
結果、気持ちよくビートにノることができるのだ。
「Paranormal Cluster」のボーカルの世界
魅力的なのは、サウンドだけではない。
6人のそれぞれのボーカルも大きな魅力なのである。
一人一人のボーカルの安定感がまず良い。耳にスッと入るし、インパクトが強く、一聴するだけのその声の虜になる。というのも、楽曲全体を通して攻撃的かつヘヴィめのサウンドだからこそ、そこに混ざらないようなハイトーンが突き抜けるという組み合わせが抜群に良いのだ。そして、楽曲世界にシンクロするようなエモーショナルな歌声が、さらなる歌のアッパーさを際立てる。
単にグループがバンドの曲をやりましたという感じではない。
サウンド軸でも、ボーカル軸でも、統一した世界観の中で、同じベクトルで表現するからこそ、歌が持つ世界観の破壊力が強烈になり、ぱらすと!らしさが、より突き抜けることになる。
この辺りの表現力も見事だなーと、楽曲を聴くたびに感じる次第。
MVの表現と技法
あと、MVの展開も面白いなーと思った。
というのも、「Paranormal Cluster」は実写ベースのMVとなっているのだが、楽曲が持つパンチ力の強さを巧みに実写の映像の雰囲気に落とし込んでいて、ぐっとくるのだ。
かつ、単に実写でMVを撮りました、という感じになっているのではなく、背景はCGを組み込みつつ、メンバーの歌っているシチュエーションを巧みに切り替えることで、幻想的かつ近未来的な雰囲気を作り出し、かっこよさをブーストさせている印象なのだ。
ディズニーシーとかUSJで、ワクワクするアトラクションを堪能したときのあの感じ。
現実とバーチャルが融合するからこそ、到達できるある種の高揚感が、「Paranormal Cluster」に宿っているような気がしたのだ。
こういう魅せ方ができるのは、VTuberならではだと思うし、ぱらすと!というプロジェクトだからこその際立つもあるのだろうなーと、しみじみそ感じたのだった。
まとめに替えて
結論、ぱらすと!の作品、めっちゃ自分の趣味にあって、ハマったぞ、という話。
楽曲のかっこよさやMVの躍動感は、実際に触れたらきっと納得すると思うので、「ぱらすと・・・?? なにそれ・・・??」という人も、ぜひ作品世界に触れてみてほしいなーと思った。
特にVTuberの界隈に触れたことがない人ほど、その体験に心躍るんじゃないかなーと思った。自分もそうだったから。