Split endが新曲に込めた想いについて

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Split endが2023年になって、2か月連続のリリースを果たした。「灯を燈す」と「春」という2曲である。

この2曲はこれまでのSplit endの楽曲とは少し趣の異なる、メッセージ性の強い楽曲になっている。Split endのVo.Gt.であるななみと、Gt.のイオナズンに話を伺いながら、この楽曲にどんな想いを込めて、どんな風にリスナーに届けたいのかを伺ってみた。

「灯を燈す」と「春」という楽曲のテーマについて

──なぜ今作は2曲連続の配信リリース、という形でリリースすることになったんですか?

ななみ:この2曲をセットで出したいってなったんですよ。

イオナズン:最初は両A面シングルとして出そうか、という話もあって。

ななみ:そうですね。セットはセットで出したかったんですよ。けっこう似通っているところがあるから、2曲とも。

──そうなんですね。

ななみ:ウクライナの戦争があってから、ニュースで見るようになってからのもやもやとしたところとかも曲にしたんですよ。で、平和についても歌っているから、誰に聞いて欲しいかってなったときに、うちらのことを知ってる自分の周りだけじゃなくて、世界中に向けて発信したいなって思ったから、CDで日本だけで売るよりも、全世界に向けて配信という形でリリースすることに決めました。

──なるほど。

ななみ:で、どっちをA面にするかってなったんですけど、選べないーってなって。で、どっちも別々で5月・6月に2曲ともA面で、シングルで出そうということになりました。

──楽曲としては、いつ頃にできたんですか?

イオナズン:(昨年の)映画の上映してる時にはもう作ってて、Teenager Kick Assというバンドの企画(2022年4月18日に新宿NINE SPICESにてTeenager Kick Ass&Boy主催で開催されたチャリティーイベント「LOVER SOUL」)のときには(ライブで)やってましたね。

──曲としては、去年の段階で存在していたんですね。

ななみ:(曲としては)ありましたね。作って(レコーディングなどをする前に)先にライブでするっていうことが多くて。なので、最初にやったときと、歌詞も変わっています。

──どんな風に変わったんですか?

ななみ:テーマ自体は変わってないですけど、自分の中で納得いかなかった部分がちょこちょこあって、それを正した・・・みたいな。

イオナズン:(ななみに対して)何ヶ月も書き直してなかった?

ななみ:(イオナズンに対して)「春」は、めっちゃ書き直したな。

──そうなんですね。

ななみ:最終的な歌詞に決まるまで何回も書き直して。これにしますってメンバーに送っても、いやなんかでも伝わりにくいな・・・それじゃあ、もう一回書き直しますって。

──もともとこの曲は、どういう背景から作られたんですか?

ななみ:一番印象に残ってる広告の話があるんですけど、それは(ウクライナの)戦争が始まってから見た広告で、難民の子に募金を集める・・・みたいな広告だったんですけど、一人の女の子の顔だけずっと映ってて、その女の子はちっちゃい時から大人になるまで顔だけずっと映ってるんですよ。で、(女の子の)周りはちっちゃい時から大人になるまでの世界の変わり方を映していて。

──ふむふむ。

ななみ:ちっちゃいとき、生まれてきたときはめっちゃ平和な家で、女の子も赤ちゃんでめっちゃ笑っている・・・みたいな。で、小学生になる前くらいから戦争が始まって、後ろに映っている景色は、人々が逃げ惑ってたり、爆弾がばーんってなったり。で、女の子の顔がどんどん曇り始めて、めっちゃ泣くときもあって。で、中学校か高校くらいまで女の子が成長してきた時に、(周りの景色として展開されていた)戦争が終わるんですよ。

──ふむふむ。

ななみ:でも、そのまま女の子は一切笑わなくなって・・・。(場面が)病院になって、たぶん、精神病棟とかで治療されてる状態で。そのまま笑顔がなくなったまんまになりました・・・っていう広告で。戦争が起こったことってその一瞬だけじゃないんや、そのことによって、(戦争が)終わっても、悲しい気持ちとかずっと続くし、引きずるものも多い。身近に戦争というものがなかったから、そこまでちゃんと想像したことがなかったんですけど、自分の中ですごい衝撃を受けて。そういう人たちの支えになったりとか、ちっちゃいところの気持ちの部分とかをもっとあったかいものにしていきたい、優しいものを連鎖させるような歌にしたいなって。

──単なる反戦歌ではないということ?

ななみ:そうですね、それ(戦争)がきっかけだったけど、曲のイメージとしては優しさを繋げていきたい、が一番大きいから。日常からできること、自分らが繋がってくることを照らし合わせる、ということを曲にしました。例えば、「武器」って(歌詞で)言ったことも、本物の武器だけじゃなくて、言葉の武器って捉え方もできるし。

──ふむふむ。

ななみ:今までの曲って、そんなにこれっていうメッセージ性を持って強くやったものって少なくて。(でも、)今回の曲はテーマがはっきりしていて。

──ちなみに、最初からそういうテーマで作ろうとしたんですか?

ななみ:もともと曲としては別でありました。サウンドはサウンドで別であって、歌詞は歌詞で別であって。こういうことを書きたいなっていうものをメモに溜めてて。で、コードのイメージを先に作ってから、歌詞を書くみたいな。で、今回の2曲は作っている中で、サウンドからイメージして、こういう曲にしたいなって決まった感じですね。

イオナズン:歌詞がどんどんできていく中で、今までにないぐらいダイレクトな表現とかすごいいっぱいある。しかも、ナイーブな話題に何かを言うってことが、けっこう怖くて。それを歌として世に出すことは少なからず影響が出ちゃうから、そういうのがすごい怖くて。なんかちょっとダイレクトすぎないって言った記憶がありますね。

ななみ:うんうん。

イオナズン:言いたいことは賛成やけど、表現がきついんじゃないかみたいな議論になった記憶があって。「灯を燈す」が先にできたんですけど。

ななみ:「灯を燈す」って、最初は「No War」っていうタイトルだったんですよ。(そのタイトルって)そのまますぎるじゃないですか?

──たしかに。

ななみ:で、それやとちょっと強すぎるし、反戦歌としてしか意味を持たないことになるのは違うから、「灯を燈す」に変えたんですけど、それで(曲の方向性として)修正した部分がありますね。もちろん、戦争反対ではあるんですけど、(この歌で)一番主張したいところはそこじゃないから。

イオナズン:反戦歌的な部分が目立つんじゃないかと思って、けっこう悩んでたけど、「灯を燈す」がまだ「No War」っていう名前だったときに、友達のバンドがウクライナのチャリティーライブをやっていて、それに出させてもらうってなったときに、どうしてもこの曲はやりたいから、ギリギリやったけど間に合わせて作って最初にやったんですよ。あれで私はけっこう感じが変わって、これは出してもいいかもなっていう気持ちにだいぶなって。ニュースとか見てて現実味がないけどすごいショックも受けてる中で、パンクしていたんですけど、私の主張は完全にこれですっていうのが出てから主張をはじめなくても、悩んでパンクしているんですってことを出してもいいのかもって思って。その辺りから、あの曲をちゃんとした意味で、伝わるように努力すればいいんやと思うようになりました。

ななみ:(曲をリリースすることに対する悩みは)ずんちゃんが一番考えてたんじゃないかな。私はどっちかっていうと、どんどん発信していこう派だったんで。いつでも、そうなんですけど。

イオナズン:良いと思って作ったものが、人を傷つけるみたいになるのがすごい怖かったんですよ。そうなり得る曲だったので、その時のイメージは。それは絶対に嫌やったし。しかも、私らの世代って戦争を知らない世代だから、知らん奴が何言ってんねんて思われるのが怖いなって。

ななみ:それは私もめっちゃ思った。知らんやつがそんな曲書くなって思われたらどうしようっていう気持ちはありましたね。

イオナズン:そういう不安もめちゃめちゃあったけど、でも、よくよく考えれば、知らん世代やから発言権ないわけじゃないし、それを守ってくれる人がいたから生きてられるし、それは繋げていかなあかんことやし。じゃあ全然他人事じゃないよなっていう。もっと色んなことを言っていいんや、って感じにだいぶなって・・・。思った意味がちゃんと伝わるように、それにはけっこう気をつけました。

──ちゃんと伝わるように工夫したことって何ですか?

ななみ:一番大きいのは、「No War」を「灯を燈す」に変えたこと、ですね。

──なるほど。

ななみ:でも、「灯を燈す」は、歌詞はあんまり変えてなくて。どっちかっていうと、変えまくったのは「春」の方ですね。

──「春」の方があとで作られたんですよね?

ななみ:はい、そうです。(「春」は)最初は(戦争とは)全然関係ない失恋の曲だったんですよ。

──そうなんですね。

ななみ:(その方向で)サビくらいは決めていた感じでした。でも、なんか、やってるうちに「違うな」ってなって。で、自分がこの歌にのせて一番歌いたいことってなんやろうって考えているうちに、失恋のことやなくて、平和のことやなって思って、テーマを「灯を燈す」に似たような感じに変えたんですよ。で、(変えてから)一発目にバンドで合わせたときに、絶対これやって思いました。

──なるほど。

ななみ:そっから全て書き直したんですよ。で、最初に書き直したときはさっきも言ったニュースを観たわたし視点で書いたんですよ。でも、それで書いちゃうとすごく他人事になっちゃうんですよ。

誰かを愛するということ
単純だけど とても難しいこと

ななみ:ここは失恋(がテーマ)のときから歌詞を変えてないんですよ。それは、わたしの口の動きとか、メロディーの上がり下がりとかを考えたうえで、そこは絶対残したいと考えたので。それにちゃんと繋がるように、平和のことを言いたかったんですよ。で、たぶんそうしてたから、最初はごちゃごちゃになっちゃって。「これは何を言いたいのかあんまりわからないです」ってメンバーに言われて。たしかにそうかも、って自分で見返したときに思って。で、最初わたし視点やったものをニュースの女の子視点にして、「春」ができました。

──ふむふむ。

ななみ:<自分がどうにかしないと>って歌詞があるんですよ。自分だけが悲しいって思ってたんじゃ、優しさは広がっていかないって思うところがあって、楽しいことも悲しいことも全部受け入れていかなあかんっていう歌詞があるんですけど、なんかそれを書くことにめっちゃ迷ってしまって。戦争を経験してないのに、経験した面して、受け入れなあかんっておまえ何様やねんって思われんかなって思って、ずっと嫌やったんですよ。けど、あとで見返したときに一番伝わるし、実際そう思ってたから。これは言っていいことかもしれんって、書いてから納得させたところはありますね。結果、メンバーに見せたときも「伝わるし、言いたいこともわかるから大丈夫やと思う」って言われて。安心しました。

──実際、修正した歌詞をみて、どう思いました?

イオナズン:ちょっとずつ直していく過程をずっと見てるから、最終決まったときは、めっちゃええのできたなって思いました。完成したことがびっくりするくらい悩みすぎてたし、ナイーブな話題すぎて、できない可能性もあったから。何ヶ月も歌詞を書き直していたし。最初の歌詞はネガティブなことがほとんどで、ポジティブな内容がどんどん追加されていく、みたいな形で、最終的に今のものになっています。

ななみ:最初はポジティブにしたらあかんって思ってて、ずっとネガティブなまま書いてたんですけど、でも、それだと伝えたいことじゃないな、と思って。優しさを繋げてきて、自分が笑ったりとか悲しんだりとかすることを諦めたらあかんって思ってたから。書き直しました。

──タイトルはいつ決めたんですか?

ななみ:タイトルは最後に決めました。もともと付いてなくて。

──なぜ、「春」にしたんですか?

ななみ:もともと失恋(がテーマ)のときに、歌詞の中に「春」という言葉があって、曲のイメージが春だったんですよ。ふんわりとした、ちょっとあったかい気持ちみたいなものがあって・・・。テーマが変わって、今の曲になってからも、あったかい気持ちっていうのは変わってなくて、そのあったかい気持ちっていうのを言葉に表したいなってなったときに、春ってタイトルがいいなって思いました。春って、人との出会いと別れだけじゃなくて、気持ちの出会い別れの意味もあるなって思っていて、そういうのも含めて、春ってタイトルがいいなって。

──なるほど。

ななみ:ほんとにきっかけこそウクライナの戦争ですけど、あったかい気持ちっていう共通点さえあれば、聞き手にとって、たぶんいろんな捉え方をしてもらえるような曲にはできたと思います。

「灯を燈す」と「春」という楽曲の技術的な部分について

──なるほどですね。ちなみに、「春」って曲のボリュームとしては大作ですね。

ななみ:そうですね、今まで作った曲の中で一番長いですね。

イオナズン:でも、削ろってならんかったよな。

ななみ:うん。一回もならんかった。すごいサウンドを抑えているんですよ、今までに比べたら。ボリュームも。音数も。引き算、やっとちょっとずつできるようになって。

イオナズン:めっちゃ引き算を考えてやったよね。

ななみ:1番のサビでは最初、バンドサウンドがあったけど、全部なくして。わたしの歌とギターだけにしようってなったし。

イオナズン:減らせば減らすほど、歌詞にフォーカスして聴いてもらえるし。

ななみ:「灯を燈す」も1サビ、最初はシンバルを開けてたけど、閉めたもんな。

イオナズン:盛り上げないサビにあえてして。

ななみ:そっちの方がちゃんと言葉が届くよなってなって。

イオナズン:音量が強くなると、威圧的になるというか、圧力が変に増えちゃうというか。それでけっこうがんばって減らしました。曲のもっている意味を、わたしらが思っている意味でできるだけそのまま伝えたいっていう気持ちで、曲のアレンジのところでもめっちゃ減らしたし、レコーディングもめっちゃ減らしたなっていう。

ななみ:いつもレコーディングではわたしのギターを2本重ねるんですけど、今回の曲ではわたしのギターを一本にしているし、歌も、ピッチ修正はしているけど、ノンEQでいじってなくて。いつもやったら、けっこうエコライザーでいじって曲に溶け込むように、エンジニアさんがしてくれてたんですけど、(レコーディングしてから)聴いたときに、最初に撮ったそのままがよかったなってなって。生きてる生の感じがするなって。で、エンジニアさんもこっちなんやって、びっくりしてはって。でも、これでいくかって決まって。

イオナズン:「春」はマイク、こんなんでやってもんな(と言って、マイクと顔をめっちゃ近づけるジェスチャーを行う)

ななみ:普通やったらこれくらいでやるんですよ(と言って、マイクと顔にそこそこの距離を空ける)

イオナズン:なんかボソボソ歌っても録音できるみたいな。そのちっちゃいところもしっかり録音できるっていうふうに録って。

ななみ:声を極力張らずに歌いましょうって録ってみたりとか。

イオナズン:レコーディングもめっちゃごねまして。

──なるほどですね。2曲とも随所に色んなこだわりを入れながらレコーディングされたということですね。

ななみ:そうですね。MVでも歌詞をしっかり出したいとなって、「灯を燈す」は自分たちで歌詞を壁に書いている映像にしようとなって。「春」も、結局全歌詞、しっかりMVに入る形にしようってなって。めちゃめちゃ歌詞をピックアップしてますね。

2023年のSplit endのこれからの話

以降もお二人の口から2曲のこだわりのポイントを伺うことになったのだが、ぜひこれを読んでいる方は実際に楽曲を聴いて、この歌に込められた想いを感じてみてほしい。

そんなSplit endはこの2曲のリリースを記念したリリースイベントを行なっている。

-大阪編-6/24(土) 寺田町Fireloop
-東京編-7/9(日) 吉祥寺WARP
-奈良編-8/5(土) 奈良NEVERLAND「 OTONOUMIFES 」

上記のようなスケジュールである。この記事が公開されるタイミングでは、すでにリリースイベントの2本は終わってしまっているのだが、この記事がアップされる週末には、奈良NEVERLANDにて「 OTONOUMIFES 」というSplit end史上初のフェスが開催されることが決まっている。

Split endにとっては、地元・奈良で開催されるという今回のフェス。地元での開催ということもあって、LOSTAGE、さよならポエジーをはじめ、ブッキングだけでみても、並々ならぬ気合いが入っていることを感じる。対バンライブなどとは違い、”フェス”ということで、当日には色んな仕掛けを行うことも伺っているので、ぜひたくさんの人に今回のフェスを目撃してほしいなと思う。

なにより、今回リリースされた「灯を燈す」と「春」が、きっとこの日に披露されると思うのだが、そこが大きなハイライトになるだろうと思われる。ぜひ、このインタビューで語っていただいたこの楽曲に込めた想いを踏まえながら、この楽曲が持つメッセージ、そしてSplit endがそのメッセージを真っ直ぐに届けるために、細部にまでこだわったアレンジを感じ取ってもらえたら嬉しいなと思う次第である。

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