ポルカドットスティングレイの戦略

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前置き

この間、幼児教育のプロと酒の席で話していて感心した話がある。

幼児教育をするときに気を付けなければならないのが、「子供たちはどうせこれくらいで楽しむだろう」という驕りらしい。

どうやったら楽しんでもらえるだろうかと考えることは大事だが、子供たちを見くびって低いレベルの事をすると絶対見破られてしまうそうだ。

これは子供相手だけではなく、どんなことにも通用するかもしれない。

ポルカの話

戦略的なバンドは見ていて気持ちがいい。

ちっぽけなプライドを背負ってすぐに「ロックだ」とか「情熱だ」とか、策もなくライブハウスでずるずるとノルマをこなしているバンドなんか見てもちっとも面白くない。

そのための努力をしているか。

それが私にとって、一つのミュージシャンを評価するものさしになっている。

いま若手で最も戦略的なバンドは誰か、と問われれば真っ先にポルカドットスティングレイが浮かぶ。

最も戦略的なバンド、というよりは最も「戦略的なバンド」と自らを解説するバンド、と言う方が正確だろう。

彼らを紹介するときに最も便利な言葉が「戦略的バンド」だと思う。

それはときに「あざとい」とか「狙いすぎてしんどい」といった評価に繋がるが、そんな批判もお構いなしにガンガン突き進むポルカは見ていて爽快である。

公式ホームページを開いてみると、バイオグラフィーの圧倒的な文量の少なさに驚く。たった3行しか書かれていない。

一方で無料でゲームができる。マスコットキャラクターである猫のビビを動かして障害物を避けながら進んでいくもので、なかなかの難易度である。

私も30分ほど挑戦したが、ステージ3で

くっそおおお!!雫めぇぇ!!

とブチ切れながら断念した。

避けれるわけがないあんなの。

ぜひみんなも挑戦してほしい。→ビビばしり

こんなゲームがミュージシャンの公式ホームページにあるのは、彼女がゲーム会社に勤めていたからだ。

――ゲーム業界に最初からクリエイターとして入ったわけじゃなくて、学校で学んだ語学とかを活かす仕事から始められたんですね。
:ゲームの専門学校も通ってなかったので、ゲーム業界の知識がないし新卒で入っても使い物にならないぞ……、と思って自分の得意な英語を活かす形で業界に入りました。翻訳の仕事をしながら、隣のプランナーやディレクターの人たちがどんな仕事をしているか、自分で吸収していく方がいいよ、ともアドバイスをもらったので。

その他にも彼女はデザイン、MV、広報などバンドのありとあらゆるセクションの指揮を取っている。

まさにバンドのブレーンといったところだ。

決して自分の独りよがりにならず、目線は常にお客さん。

何をすれば喜ぶのか、どうすれば人気が出るのか、そこだけを重きに置いている。

しかし、きちんと音にもこだわっている。

バンドとしての確かな技術力があるのだ。

これで、バンドマン達を黙らせる。

「媚を売りやがって」と言いたくても、バンドマン自身が好きなカッティングの音をあんな器用に鳴らされると、ぐうの音も出ない。

-正直、こういう戦略的な曲作りをしているって言うと反感を買うこともあると思うんですよ。

はい、それはよく言われます。

-でもそう思った人たちも、いざ聴いてみたら曲がいいから”ぐぬぅ……”ってなるというか。

“ぐぬぅ……”って黙らせてやりたいんですよ。うちのバンドは、”売り方が気に入らん”とか”THE メジャー”みたいなことはインディーズのころから言われていて(笑)。ただヴォーカルの顔をめっちゃ出して、ウケる曲をやって、目立つことを考えて、SNSを利用していて、”気に入らん!”とか言われるんですけど、”でも曲はいいですよ”、”ぐぬぅ……”みたいな(笑)。

とにかく彼らは戦略的である。どれくらい戦略的かはどのインタビューを読んでもすぐに理解できる。

作詞も作曲もしていますが、自分の中から“これを伝えたい”って湧き出てくるものは何もないです。ハッキリ言って、私には音楽の才能はありません。その代わり、ビジネスの才能はあると思っています。最大限に勉強したマーケティングで楽曲を作り、PRで売り切っているんです」
ー中略ー
お金を出して買ってもらうものなので、買う人にどんなものが欲しいのか聞くのが一番なんです。私の場合はSNSです。私のTwitterには15万人のフォロワーがいて、そこに投げかけるんです。

-作詞作曲は今回も全部雫さんですよね。

もちろん、曲は私が全部やってるんですけど、お客さんが求めるものをより正確にキャッチできるようになったというか。”お客さんがこう言ってるときは何を求めている”とか”こういうのが流行ってるからこれを出すべきだろう”とか。音楽知識はまったくついてないんですけど。

scream!/a>THE ROCK FREAKS VOL.9:雫 ポルカドットスティングレイ

 

音楽理論よりも、売れる理論とか消費者やクライアントにどのようにすると魅力を感じてもらえるかという科学のほうが圧倒的に大事だと思います。本質はそこだと思うし、仕事でやってるからね。いまだに会社員の気持ちでやってます。

常に自分を客観視し、やりたいことではなくやるべきことに愚直である。自分のセールスポイントは「ギターを持つボーカル」だと気づけば、すぐにギターを始める。

大学時代、軽音楽サークルに入って、コピバンのヴォーカルをやっていたんですけど、歌っている自分の姿を動画で見たらとにかくダサくて。何か持たないと格好がつかないなぁと思って、ギターくらいしか思いつかなくてギターを持ちました(笑)。あと、ポルカって楽器隊が男性で私だけが女性なんだけど、そういう編成の場合、女性はたいがいピンヴォーカルなんです。私がピンボだと、他のバンドと差別化するのにひとつハードルが上がるでしょ? あと、ギターを持っていないと、パッと見で作詞・作曲をしているように見えないんです。その誤解をいちいち解くのは面倒なので。

視覚で伝わる情報をとにかく大事にするのがポルカの特徴だ。

youtube時代だからこそ初めの1分に、最初のワンコーラスに命を賭ける。

もちろん、それを意識したバンドは腐るほどいるが、ポルカがその有象無象達と違うのは、差別化がきちんとできていることだ。

要するに、「とりあえず女子高生躍らせておけばいいだろ」「とりあえず女子高生濡らせておけばいいだろ」「とりあえずフィルムカメラで撮ればいいだろ」「とりえあず女子高生チャリ乗せとけばいいだろ」みたいなバカの一つ覚えのマーケテイング()に手を染めないのだ。

だから、ポルカのゴールは遠い。

私たち、バンドでありながら、国民みんなが知ってるようなポップ・アイコンになりたくて。
ウエムラ:メインストリームに行きたいですね。
エジマ:三代目みたいになりたいよね?
雫:そう! 三代目 J Soul Brothersや西野カナが好きな人でも聴くバンドになりたい。
EMTG:それはどういう思いから?
雫:そうじゃないと、意味がないと思って。自己満足で人からお金を取りたくないし、ウケるコンテンツを音楽でも作りたくて。

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クリエイター・雫

一方で彼女は自分の事をクリエイターと呼んでいる。アーティストでもなく、ミュージシャンでもなく、クリエイター。

その真意はなんなのか。

考えられるのは、自分の業務は音楽制作に限らずアートワークや撮影監督兼演出、プロモーションとグッズ制作など幅広く対応しており、ミュージシャンの域にとどまらなっていないために、自らのことをクリエイターを名乗っていっているという仮説。

もうひとつは、クライアントを満足させたり、ファンを拡大するためだけに音楽をやっており、自分自身は音楽で表現したいことがなくて、音楽は自己表現のための道具ではないために、クリエイターと名乗っているという仮説。

おそらく、どちらもそれなりに的を射てるのかなと思っている。

彼女はあくまでクリエイターだ。

ただ、ミュージシャンではない、とさえ言いきってしまうのは少々棘がある。

少なくとも、ポルカを好きな人たちはミュージシャンとして、アーティストとして認識し、かっこいい曲を作ってくれるから好きになっているのだ。

ポルカは三代目のような人たちになりたがっている。

音楽を自己表現の一つではなく、ショービジネスとして取り扱い、そう消費される側に行きたがる。

ここで、「音楽ってのはビジネスと自己表現のバランスを極限まで悩んで考え抜いて発表するから楽しいんだろ!」とポルカに難癖をつけるのは止めておきたい。

上のツイートはまさにその意見への回答で、曲に気持ちを込めるというのは、歌いたいことを歌うってことに限らないんだぞと言う。その通りだ。

冒頭に戻る。

「なにがおもしろいか」を考えることが大切なのだ。

「これをすればどうせ喜ぶだろう」はいけない。

音楽も同じと言える。

ポルカはどっちだろう。

まとめ

最後になるが、ポルカドットスティングレイが更なる飛躍を遂げたとき、ひとつ忘れてはならない事実がある。

どうやって売れるか、どうすればみんなに見てもらえるか、どうしたらライブに来てくれるか、それらを積極的に考えることは称賛されるべきことだし、ポルカを商業的だと罵ることを私は好ましく思わない。

ただ、どれだけ雫がクリエイターと名乗ろうが、色々な業務に携わろうが、アートワークも撮影もグッズ制作も全て音楽活動に還元されることであり、やっていることは結局、音楽を作ることなのだ。

つまり、クリエイターの前にミュージシャンであるのだ。

聴き手を限定せず、みんなが喜んでもらえるようにアレンジを幅広くした音楽をやりたい、という思いは、おそらくマーケティングのひとつとして生まれる感情なのだろうが、それをやるには、すごく深い造詣とそのジャンルへの愛が必要になる。

簡単に見様見真似をすることはむしろ自身のブランド価値を下げかねない。

クリエイターの前にミュージシャン。

音楽を作る立場として、踏み込んでよいところと慎重になるべきところの分別はいずれにせよ必要となる事だろう。

筆者紹介

ノベル(‪‪@otakatohe)

J-POPも洋楽も聴くただの音楽沼の人。「ノベルにはアイデンティティしかない」というブログで、さまざまなアーティストをチクチク小言で刺している。実は平和主義。

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