UNISON SQUARE GARDENの「Nihil Pip Viper」のアレがアレな件

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バンドについての<進化>について言及する場合、=として、サウンドの広がりだったり、楽曲の構成の変化について言及することが多い。

やはり前作との比較論として<進化>を語るとなると、この二つの要素が語りやすいものになるからだ。

仮にサウンドが過去作とまったく変わっていなかったり、楽曲構成に今までの作品にはトリッキーなアプローチがなければ、あまりその作品を<進化>と表現することは少ない気がするのだ。

下手をすれば。

その作品を指差して、過去の焼き直しと揶揄されたりすることすらあると思う。

そう。

同じフォームのままで<進化>を提示するのは、大変ということだ。

キャリアが長くなればなるほどその傾向は強くなるのではないか。

そんなことを思うのである。

しかし。

根底にあるフォームは同じなのに、新曲をリリースするたびに明確な進化を感じさせるバンドも世の中にはいくつかいて。

そんなバンドのひとつに、UNISON SQUARE GARDENがいるように思う。

新曲である「Nihil Pip Viper」を聴いて、改めてそのことを強く実感した。

「Nihil Pip Viper」の話

なぜ、そんなことを思ったのか。

まず、「Nihil Pip Viper」は、ユニゾンらしいロックナンバーである。

楽曲展開の畳み掛け方とか、リズムアプローチとかに、「あ、ユニゾンならではのアンサンブルだなあ」と思わせるものが数多い。

そして、楽曲は<ポップ>な手触りなんだけど、シャープかつゴリゴリに鳴るロックサウンドが印象的に響く。

「Nihil Pip Viper」は、UNISON SQUARE GARDENがライブを演奏する上で必要な音しか入れていない。

そんな心意気を感じさせる。

それほどに、余計なものを削ぎ落とした一曲になっているように感じるのだ。

Aメロから最後のアウトロまで、その方程式は変わらない。

三人の音だけが自由自在に鳴り響く。

なのに、どこまでも楽曲が劇的に表情を変えていくのが凄い。

というのも、イントロもAメロもBメロもサビも、全部表情が違うのだ。

鳴っている音は同じはずなのに、ユニゾンの三人の音の組み合わせだけで、楽曲の表情を劇的に変えていくわけだ。

シンプルなのに、複雑なサウンド構成。

これがポップなんだけど、ロックな印象を強く与えることにも繋がっている。

ロックバンドとしてはどこまでもシンプルな歌。

でも楽曲の構成としては、どこまでも複雑。

そういう面白さが、「Nihil Pip Viper」で炸裂している。

つまるところ、ポップとロックを不思議なバランスで両立させているわけだ。

しかも。

UNISON SQUARE GARDENの歌ってメロディーの吸引力も凄いんだけど、バンドアンサンブルの激しさも心地よくて。

歌を聴いても良し、演奏を聴いても良しな歌になっているのだ。

書くとすごく単純な話になってしまうんだけど、「Nihil Pip Viper」は、そんな偉業をさらっと行ってみせている。

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ロックバンドとしてのUNISON SQUARE GARDENの凄まじさ

あと、なんというか音の弾け方だけで、なんとなく三人が楽しく演奏している感じが伝わってくる。

それが、=としてロックバンドとしての高揚感を生み出すことになる。

バンドによっては<音源でしかできない音のアプローチ>と<ライブでしかできない音のアプローチ>を切り分けて音を積み上げていくバンドもいるけれど、UNISON SQUARE GARDENは良い意味でそこに隔たりがない印象を受ける。

少なくとも、「Nihil Pip Viper」においては、そういう障壁を一切感じさせない自由さがある。

だからこそ、それぞれの楽器が独特の高揚感をもって鳴り響いている。

三人の音をかけ合わせ方が、どこまでもアガる感じで響いていく。

そんな印象を受けるのだ。

・・・んだけど、ライブじゃないと成立しない気持ち良さしかないかというとそんなことはなくて。

<音源>としての完成度も明確に高くて。

「これならライブでも演奏できるよね」みたいな甘えが楽曲にない。

再現性なんてそっちのけの容赦のなさが楽曲の中ににじみ出ているというか、そういう凄みも歌の中に宿っている。

田淵らしいユーモア溢れる楽曲展開とフレーズの惜しみなさ。

そこに、手数が多くて時にアグレッシブに時に繊細にビートを刻む鈴木のドラムアンサンブルの混じり合い。

ソリッドと甘さを両立させる斎藤ならではのボーカルテイクも見事なもので。

ユニゾンでしか成立しないアンサンブルがここにあって、明確な高揚感を楽曲の中で生み出すのである。

こう考えたとき、やっぱりこの歌はUNISON SQUARE GARDENでしか生み出されることのない歌だよなーと思わずにいられない。

なのに、根底にあるUNISON SQUARE GARDENの哲学は、<いつもどおり>な感じもして。

それが結果として、<いつもどおり>なんだけど、明確な進化を感じさせることになるのかなーなんてことを思うのである。

まとめ

こう言うご時世でありながら、ライブと密接に繋がったロック・バンドとしての進化を感じさせるUNISON SQUARE GARDEN。

ロックバンドにしかない高揚感が「Nihil Pip Viper」の中には、ある。

そんなことを思うのである。

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