ジャニーズWESTの『Mixed Juice』が色々とミックスしすぎている件

世の中には、シングル曲（配信されている表題曲）だけで十分という人もいる。

あるいは、タイアップがついているヒット曲だけ聴けば十分という人もいる。

実際、自分が好きなアーティスト以外は、わりとそれくらいの距離感で音楽を聴いている人も多いだろう。

それはそれで良いと思う。

好きな作品を、好きな形で聴くばいいと思うから。

ただ、そういう声が強くなればなるほど、「アルバムの魅力って何だろう」ということも考えることも増える。

一曲だけ聴けば十分という価値観が生まれがちだからこそ、自分は勝手ながらにアルバムで聴くことの魅力を考えてしまうのだ。

まあ、この辺りについては色々な答えを用意することができる。

作品によっても、用意できる答えが変わっていくことになるだろう。

そのうえで、シンプルな回答をひとつ用意するなら、アルバムを通して聴くことで、そのアーティストの色んな側面を垣間見ることができる、というものがある。

本編

ジャニーズWESTの『Mixed Juice』の話

なぜ、こんな話を書いているのかというと、ジャニーズWESTのアルバム『Mixed Juice』がそういう作品だったと思うからだ。

楽曲ごとにアレンジャーが変わるようなアルバムを作る場合の大きな魅力として、アルバムを通じて様々な魅力を感じることができる。

しかも、ジャニーズWESTのように、良い意味で振り幅が大きなアーティストの場合、その＜様々＞具合が痛快で、どこまでも魅了的に映るのである。

実際の収録曲を踏まえて、話をしてみよう。

例えば、アルバムと同名の楽曲である「Mixed Juice」。

鮮やかなホーンセクションのアレンジが印象的な、ソウルフルかつダンサンブルなナンバーである。

歌パートあり、ラップパートあり、ユーモアを加速させる歌いまわしありと、ジャニーズWESTならではの魅力がてんこ盛りの作品となっている。

ライブで聴いても盛り上がりそうなナンバーで、アルバム全体としても象徴的に存在感が際立っている。

そうか、このアルバムはそういうテイストで進んでいくのか・・・。

・・・なんてことを思っていたら、次は、あいみょんの楽曲提供でも話題になった「サムシング・ニュー」がやって来る。

そして、前曲とはまた違う魅力を提示してくれる。

この歌、あいみょんのメロディーセンスも素晴らしいが、やはりジャニーズWESTのパワフルかつ表情豊かな歌声があるからこそ、この歌の聴き心地を高めている。

ほど良いキラキラ感もあって、ポップスとしての手触りも絶妙。

あいみょんが書いた曲をジャニーズWESTが歌うからこそ、の魅力が炸裂しているのだ。

「しらんけど」の存在感

『Mixed Juice』の＜ミックス＞具合がとにかく痛烈に炸裂しているのは、「しらんけど」と言えるのではないだろうか。

というのも、「しらんけど」はまさしくジャニーズWESTならでは、が詰まった歌だと思うし、他のアーティストが仮に歌っても＜この感じ＞にはならないように思うからだ。

関西人における＜しらんけど＞は独特の意味合いを含んだパワーワードだし、ある種、魔法の言葉でもある。

ただ、力がありすぎるワードだからこそ、歌に落とし込むには少し骨が折れるようにテイストだ。

でも、「しらんけど」を聴くと、見事に曲に落とし込まれている。

しかも＜しらんけど＞というフレーズをリフレインさせるからこその、ユーモアとスリリングさ（？）が宿っているのである。

サウンドの質感も＜しらんけど＞というワードを浮かび上がらせるものになっているし、単に＜おもろい＞歌ではなくて、楽曲としての聴き応えのある歌になっているのも特徴である。

・・・かと思えば、wacciの橋口が楽曲提供した「涙腺」のような、感涙系の王道バラードを丁寧に歌いこなす。

さらにアルバムを聴き進めると、「Anything Goes」のようなJ-HIPHOPの文脈をなぞるようなナンバーを歌いこなすこともあれば、SUPER BEAVERの柳沢亮太が楽曲提供したハートフルなロックバラードである「つばさ」を歌う。

そう。

この振り幅の広さが、ジャニーズWESTの魅力となる。

アルバムを通して、楽曲を聴くからこそ感じることができる、そんな魅力のように思うのである。

まとめ

ライブでノリノリになるようなアッパーなダンス・チューンを歌うかと思えば、メロディーが美しいポップス色の強いナンバーを歌う。

かと思えば、郷土性を大切にしたユーモア曲を全力で歌いこなすし、感涙のバラードもロックソングも＜自分の歌＞にしていく。

ジャンルを横断するだけの話ではない。

ジャンルを横断するだけでは横断できない要素も横断しているところに、ジャニーズWESTの魅力が宿っているように思うからだ。

アルバムのタイトルどおり、まさに＜Mixed Juice＞された作品であるといえよう。

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