前説

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ある程度、長い期間音楽を聞き続けていると、アーティストが紡ぐ言葉自体でドキッとすることは減ってくる。

今更「諦めずにがんばれよ」なんて言われたところで、そのメッセージ自体は響いてこない。

だってバンドマンにそう言われたところで、確かにお前も頑張ってきたのかもしれないが、俺だってそれなりにやってきたつもりなんだけどな〜みたいな気分になってしまう。

「悪いのは大人だ!」みたいなことを言われたとしても、よく考えたら俺ももう大人側の人間だしな〜みたいな気分になるし。

まあ、綺麗事は言うなよとは言わないまでも、その言葉に安易に乗っかれるほどピュアではなくなっちゃうわけだ。

とはいえ、当然ながら音楽の場合、単に言葉が並べられるんじゃなくて、メロディーがあってサウンドがあって成立するわけで、言葉だけなら凡庸なものだとしても、この3つが化学反応を起こせば、ありきたりなメッセージだとしても、胸に突き刺さることがある。

特に、ライブだと五感がフル動員されているから、思いもよらなかった言葉が胸に突き刺さることもある。

んだけど、やっぱり普段の生活だけで言えば、言葉のメッセージそのものでグッとくるそとは少ないわけだ。

でも、例外もいる。

言葉が放つメッセージで考えさせれるバンドもいる。

そのひとつが、amazarashiなのである。

本編

amazarashiの魅力について

まあ、amazarashiにおいても、単なる言葉だけじゃなくて、秋田ひろむのボーカルや、フォークもパンクも取り込んだバンドサウンドと、統一されたビジュアルと、それらが化学反応を起こした鬱蒼とした世界観そのものが魅力のバンドではあるんだけど、シンプルに言葉やメッセージだけを引っこ抜いてみても、amazarashiって魅力的だよなーと思うのだ。

だって、amazarashiが紡ぐ言葉って、秋田ひろむが紡ぐ言葉って、切迫したものを感じるから。

歌詞で言及する内容が当たり障りのないものではない。

その辺にいるロックバンドがよく歌う、手垢がついたメッセージじゃない。

生きていくうえで感じる不条理なものや、社会性のセンシティブな話題、あるいは人間が持ちがちなネガティブな側面と切実に向き合い、それを言葉にして、表現に落とし込む。

そういうテイストの楽曲だから、ハッピーな気持ちとは対極にあることも多い。

音楽を客商売と考えているならば、わざわざ言及しても得をしないことを言葉に紡ぐことも多い。

そのため、amazarashiの世界観って暗いし、怖いし、あまり良いイメージを歓喜させるものではない。

ただですら辛い現実世界で、音楽くらいは現実逃避したいし、ハッピーになりたいと考えるリスナーが多い中で、希望とは違うベクトルの歌を容赦なく歌うことも多い。

もちろん、ネガティブに向き合ったロックバンドは多いけれど、多くのバンドはバランスを取ることが多い。

歌詞はネガティブだけど、踊って楽しむことができる曲調とか、歌詞の前半くらいけれど、後半はきちんと希望を描いてくれるとか、そういう感じで。

インディーズの頃は排他的だったバンドも、メジャーになってタイアップソングを作るようになると、いつのまにか友愛を歌っている、ということも珍しくはない。

でも、amazarashiはそういうバランスの取り方はしない。

どんなタイアップが付いたとしても、amazarashiの世界観を大きく脱却するような作品は作らない。

amazarashiの場合、単にロックバンドのトレンドに抗うというわけでなく、そもそもトレンドとか客商売として音楽を売る、という感覚とは違ったところで、音を鳴らしているように感じる。

お客さんに喜んでもらうとか盛り上げようというような、相手ありきの音楽ではなく、自分が思っていることを言葉にして、自分が良いと思うものを形にする、という表現者としての側面が強いように感じる。

この態度を通底させるバンドは珍しいと思う。

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ポルカドットスティングレイのようなバンドを挙げずとも、多かれ少なかれ、多くのバンドは相手の反応を伺っているし、その反応に合わせた楽曲を作っているよう感じるし、SNSで自分たちの作品や発信したメッセージの受け止め方が可視化される世の中だからこそ、どうしてもそこに影響されがちのように感じる。

だが、amazarashiは人の言葉に影響されたとしても、そこに安易なコミットはしない。

「表現」をするバンドであり続けているように思う。

あえて言葉にするならば、エンタメではなく、アートであることに拘っているように感じる。

もちろん、amazarashiの場合、表現したいものを完璧な形で届けたいという情熱が半端ないからこそ、切迫した作品が生まれている、という背景もあるだろう。

単に自分のやりたいことをやりきる、というレベルのバンドではない。

だからこそ、たくさんの人が魅力されるし、こういうやり方でもたくさんの人が魅了できているんだろうなーということは感じる。

まとめ

おそらく今後もマジョリティーになることはないバンドだと思うし、暗いバンドの代名詞としてキャリアを積んでいくのだと思う。

だからこそ、今後のamazarashiには素直に期待できるし、他のロックバンドとは違う軸で心を突き刺す音楽を作って欲しいなーなんて思う。

どれだけ音楽のトレンドがどう変わろうとも、きっとamazarashiの美学が変わることはないのだろうし、クラスの中に一人いるかいないかくらいの人にとって宝物となるような、そして、単にそれは内側に留まるんじゃなくて社会的な問題にも立ち向かう外側へエネルギーが向かうような、強い力を持った音楽と言葉を紡いでほしいなーなんて、そんなことを思う。

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