前説

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当方、大阪在住の人間である。

大阪も含めた関西は日本でも有数のインディーズシーンが盛り上がっている場所だと思っていて、良い音を鳴らすインディーズバンドがたくさんいる。

このブログでも、なるべく広くインディーズバンドを取り上げるようにしているが、なかなか「深い」ところまで話を広げることができない実態がある。

そこで、コロナ期であるこのタイミングで、インタビューという形で、バンドのことを掘り下げることにした。

コロナ期というなかで、今、バンド側は何を考え、次にどういうリアクションを取っていくのか。

そこにスポットを当てながら、ドラマストアのボーカルの海さんにインタビューを実施しました。

本編

今年の活動について

──今年はこんな状況になってしまいましたけど、現状の時点で今年の活動に点数をつけるとしたら何点くらいでしょうか。

海:20点30点くらいじゃないかな?三分の一、四分の一くらいしか、そもそも期間としても動けていなかったし。もう自分たちの自己満足だけでバンドが動いていくような状態じゃなくなってしまったので。(バンドによっては)YouTubeを頑張ってみたり、配信を頑張ってみたり、あとはネットラジオという施策もあったと思うんですけど、僕らはあんまり配信は好きではなくて。ライブの熱量の伝わらなさがあるじゃないですか。(だから、)そこに回るのがちょっと後手になってしまったところもあって、若干出鼻くじかれてしまったみたいな状態になってしまったっていうのが、大きく減点の理由ですかね。

──なるほど…。

海:逆に良かったところは、ドラマタイアップがあったり、ロッキンやモンバスなどの大きなフェスにオンラインで出演したり、レギュラーのラジオ放送が定期的にあったりと、飽きさせないようなトピックを出せていたというのは、バンドが動かせないという状況の中でもすごく良かったのではないかなと思います。

──ちなみに、最初は配信のライブとかはしたくないっていうのがあったと思うんですけど、(その後)なんでやろうと思ったのか教えていただきたい。

海:やっぱりドラマストアがこんなに潜っているのもよくないなというところが一つと、待ってくれているファンに届けないとダメだよなというのが一つと、あとは単純に、画面越しでもみんなが喜んでくれるなら嬉しいし、僕らも僕らで寂しがりなんで。自分の好きな人とちゃんと繋がっておかないと困るみたいな気持ちもあって。

──やってみて、違いとか改めてありましたか。

海:ありました。(まず、お客さんとして)配信ライブを覗きに行ったときに感じたのは、どうしてもその…温度差だったんですよ。顕著だったのは、すごく珍しい曲をやってイントロが流れてきたときに、ライブハウスやったら、「え、マジで!?あの曲やんの!?」みたいな固唾を飲む緊張感が(配信ライブによるネット上のコメントだと)ニコ動みたいな感じで、軽く見えちゃったんですよね。

──なるほど。

海:(でも、いざライブをやってコメントをみると)むしろ普段のライブではこんな野次飛ばされへんやろうなという子たちが頑張ってコメントしたりするのを見ると逆に愛おしくなっちゃったり。

──普段からお客さんの反応はよくみるんですか?

海:めっちゃ見てます。ありがたいことに大きなところでやらせてもらう機会が多くなってきたんですけど、1000人だったら(お客さんを)探せますね。「あ、あの子あんな後ろにおる!」とか「めっちゃ前まで来てくれてるやん!」だったり。最終的にはみんなが米粒みたいになって(しまうような規模感に)なるのは仕方がないのかなとも思ってるんですけど、ギリギリまでやみんなの顔を見ながらやりたいし、届けたいしと思ってるので。「あの子初めましてやろうなぁ」という子がすごく真剣な目で聴いてくれていたり、女の子に囲まれている中の男の子が堂々と手を挙げていたりするのを見ると自分が泣きそうになって、歌詞飛んじゃうとかザラにあるくらいお客さんのことを見ているんですよ。だから、余計に配信は苦手意識があったのかもしれないですね。

──そうなんですね。ちなみに作品を作るときもファンの方の顔を想像したりするんですか?

海:たぶん、和也君はしていますね。和也君はけっこうライブのこととちゃんと盤になったときのこととの両方を想定して考えているんですよ。あと、MVあるんだったらMVも。だから、この曲のアレンジは、ほんまにライブで再現性があるのかとか、逆にライブでやったときのインパクトの強さとCDで聴いた時のインパクトの強さにズレがあるのかないのかとか。多分彼の中では一曲作る中でこれがセットリストの恐らくどこかの位置に来て、ワンマンなら外れるかもしれなくて、これくらのキャパならどういう反応が返ってきてとか、全部イメージしながら作っていると思いますよ。僕は逆に自分の中の世界に入って、むしろお客さんのことというよりは、自分が自分の話に出てくる子たちとどういう風に物語を進めていきたいかみたいなことを考えながら作るんで、けっこう映画的かもしれないですね。

今年リリースされたミニアルバムを通しての、作品の作り方について

──今年リリースされたミニアルバムの「Invitations」は、6曲中に入ってきたじゃないですか。それぞれ意図的色分けして作ったんですか?

海:そうですね。僕らは10曲20曲作った中からどれを入れる?という感じではなくて、6曲だったら6曲をバーンってタイプの制作の方法なんで。まず、ミュージックビデオがどんなサムネイルでどんな曲が入るのかな?から始まって。で、和也君が「女の子のインフルエンサーに踊ってもらうMVを作りたいから、この要素で海君なんか面白いの作って!」みたいなところから始まる、というような制作だったんですよね。

──ほう。

海:あとは、この曲ができてこの曲できたから、あとはこんな曲で埋めていかないかんなあみたいな。「ラブソングはいらない」があって「可愛い子にはトゲがある?」があって、「東京無理心中」があって、残り3曲どうする?みたいな。ちょっとギターロックっぽい外し曲がほしいよなって思って「Dancing Dead」が入って、ちょっと縛りとかなしでちょっと楽しさだけ追及してやってみいひん?みたいな感じで「グッデイ、グッナイ」ができて…みたいな感じだったので。(制作だと)イメージの共有に多くの時間を使ってますね。

──イメージの共有?

海:めちゃくちゃ抽象的な話をしたり、逆にアホほど具体的な話をしたり。え、これバンドマンの制作か?っていうことまで話をしたりします。

──今回だったら、どのようなエピソードだったりするんですか?

海:特に「可愛い子にはトゲがある?」をやったんですけど、僕はメンバーと一緒にスタジオ入って、オケができてたから、オケの上のメロディと歌詞を考えながら平行して、監督側にどんな作品になるか、どんなキャストの子を使うかみたいな脚本の打ち合わせをして。どっちかが先に決まってくれたら、どっちかに合わせて進むんですけど、どっちも平行して進んじゃったので、(楽曲の)制作も曲を作りましたというよりは、Aメロの尺ってこれでいいと思う?いいんじゃない?でも映像の上になったときに、例えばAメロでA対Bで戦うやん?そのあと、女の子A対Cで戦うやん?この尺って一緒じゃなくていいのかな?って。ちょっとここの尺が短すぎるとか、そういう映像になったときのことを仮定して考えたり。あるいは監督側から「サビで手拍子とか入ったら、ここで場面カットしやすいです」みたいな「そういうギミックがあれば、画的には面白くなるかもしれないです」とか。だから、めちゃくちゃ時間かかりましたし、超しんどかったです(笑)。

──なるほどですね。

海:それこそ監督側にMV撮るにあたっても、アーティスト側でここまで映像やったり脚本やったり、原案固めてきてくれる方って少ないから、やっててすごい撮り甲斐があるし、楽しいってことを言っていただけているので、自分としても作詞作曲以外にも任せてもらった新しい分野なのかなと思って、精一杯頑張りました。

──ちなみに今作っている次の作品とかもそんな感じなんですか?

海:はい、もうMVを撮る度、ずっと続いていくんだと思うんですけど、もう回を重ねるごとに和也君からのオーダーが難しくなっていくんですよ・・・。ドラマストアって、みんな、バンドマンっぽくないんですよね。

──そうなんですか。

海:僕はめっちゃ求められたがり屋なんですよ。いろんなところをいろんな分野で求められる人間になりたいなと思いました。だから、音楽だけじゃないかもしれへんなって思いました。もちろん、今はその中でも一番楽しいのが音楽ですし、ここは自分と戦って死ぬ場所だと思ってるので、音楽でまずは結果を出したいと思ってますけど、そこで終わらへん人間力をこれから付けていきたいなって思っていますね。他分野で培ったことを全部ドラマストアに還元したら、ウィンウィンだし、そういう風に将来的に活動できたらいいなと思っていますね。

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プライベートや楽曲の着想の話

海:プライベートではめっちゃ羽目を外してるタイプなんですよ。もう1日ゲームしたり、映画観にいったり、お友達とごはん行ったり。ずっとスタジオ籠るのが好きなタイプじゃないし、集中力が続かないので。パッとやってパッと帰るみたいな。

──ちなみに最近、日々の生活でめちゃめちゃいい刺激を受けたなっていうのはありますか?

海:ありますあります!コンフィデンスマンJPという映画を観てきて、ものすごく良かったんですよ。最近、芝居だったり、その作品を作ってる音楽だったり、カメラワークだったり、日本人ならではの雑な脚本に対しての監督側が俳優さんにゆだねてしまう部分だったりをすごく見るようになって。もしかして(これって)こういうことだったのかなと紐解いてるうちに、こんな曲書きたいとか、こんな映像でMV作ってみたいとか閃くことが多いですね。それでいうとほんまに、ヒゲダンすごいなって思うんですよ。その映画で「Laughter」っていう曲が流れたんですが、すごく良かったんですよ。思った以上に「うわこんな歌詞かきよるんださとっちゃん・・・うわこれはやられた」っていうのを思っちゃいましたね。悔しい通り越しちゃいましたね。認めざるを得ないって思っちゃいました。同い年なんですよ。

──そうなんですね。

海:それもあって、けっこう僕と和也君は嫉妬してて。でも、ほんまに認めるしかないって思いました。

──なるほどですね。

海:負けたくないとか、そういうテンション感で曲を書くときとかもありますね。ヒゲダンとツーマンしたときの曲とか、Mステでタモリさんにこんな振り方をされてやる曲とか、そういうテーマでも曲をかいたりしますね。

──ちなみに実際に今リリースされている曲で、この曲はこのシチュエーションで作ったみたいな曲ってありますか。

海:「至上の空論」は朝井リョウ先生の「何者」っていう映画からインスパイアされましたし、「ラブソングはいらない」もプロポーズソングは溢れているけど、逆プロポーズソングってあんまないなって思ったときに、ドリカムさんの「大阪LOVER」を目標にしてみたり。インスピレーションを受けた作品をみんなで共有しますし、あるいは逆にMVの監督にこんなものにしたいという提示をしたりしますし。

 

──他にも、曲に対して「仕掛けていること」ってあったりするんですか?

海:例えば今作では「チョコレートボックス」という曲が入ってるんですけど、(この歌は)今まで出てきた人物っぽい、それを連想させるっぽい言葉を入れてみようかなってことで、そういう言葉を多く入れてみたりしています。

──他の歌に出てくる主人公が出てくるみたいな?

海:そうそう!っぽいなみたいな。「未来へのブーケトス」が失敗したバージョンの主人公なんじゃないかな?という歌詞とか、教科書という言葉を入れて「青い栞」を彷彿させるような感じなのかな?みたいのを書いてみたり。そういう昔のキャラ大集合みたいな曲でしたね。

──そうなんですね。

海:そういう仕掛けで楽しかったのは「秘密」かな。「秘密」出して、僕が入院して、そのあとに「ガールズルール」、「Stand by You」、「Lostman」という3部作をシングルでリリースしたんですけど、「秘密」という曲に対しての前日からその最中、後日談で分けてみました。自分が伏線はるのが楽しい、伏線が好き、伏線が自分でもはれるんや、回収できるんやっていう楽しさがあって。なんか構成作家じゃないですけど、映像的に曲を書くことが沢山増えました。自分の気持ちで曲を書くことがかなり減りましたね。

──そうやって改めて話を聞くと面白いですね。

海:一番思うのは、ドラマストアっていうバンド名で良かったって思いますね。全てが物語です!って言ってしまえば成立しますし、僕の妄想が、妄想力がすごく生きるバンド名だなって思います。何があってもドラマになるから、泣けるドラマもあれば、ヒューマンもあればコメディもあるわけじゃないですか!サスペンスもあるし。・・・サスペンスやりたいですね。曲の中で誰か死んで、その中で犯人探すようなものとか。

言葉のチョイスと、これからについて

──ドラマストアって、コピーのチョイスが良いですよね。

海:「君を主人公にする音楽」とかですか?

──それですね。あれは誰が考えて、どういう感じで決めてるのかな?って。

海:ツアーのタイトル「可愛い子にはワンマンさせよ」とか、(配信ライブのタイトルの)「リハビリ」とか、あれはけっこう和也君が遊びで考えています。

──雑談の中で決めるんですか。

海:そうです。肩の力抜く系はだいたい和也君が決めることが多いですね。だけど、ちゃんとしたキャッチコピーとか、あるいはアルバムの帯とかは全部僕ですね。だいたい3つ、それこそほんまに会社のコンペとかプレゼンとかと一緒なんですけど、3つ4つ考えて、LINEならLINEで、ミーティングならちゃんとパワーポイントまで作ってプレゼンするんです。

──で、投票とか話し合いをして…

海:そうですね、ほんまに話し合いですね。これがいいんじゃないとかちょっとわかりにくいんじゃないとか。アルバムのタイトルとかもそうですね。歌詞については校正とか全くされないんですけど、タイトルは言われることがあります。もうちょっとA面っぽいタイトルがいいとか英語がいいとか。でも、「君を主人公にする音楽」は、サッと決まりましたね。今やからこれ言えますけど、鳥が入って、改めてミーティングをやったときに、ギターロックじゃなくて、やっぱり俺と和也君ないし全員のルーツってポップスだったよね?ってなって、僕はずっとかねてからピアノと一緒にやりたかったんですよ。前のバンドもギターだけやったんで。だからポップスでいいのでは?ってなったときに、じゃあどうする?みたいな。前みたいに「何気ない日常にドラマを」みたいなそういう渋いかっこいいみたいなのじゃなくて、もう少しなんか寄り添える感じのがいいかな、「海君考えて!」って。「君を主人公にするはどう?」みたいな感じで、和也君がそれで!って(笑)決まるときは秒です。だいたい和也君が「それで!」って言ったら終わりです。

──(笑)

最後にファンに一言

海:この記事が届くときにどうなっているかわからないですけど、この苦しかった期間すら、無かったことにするのは僕はナンセンスだと思っているので、もちろんこの期間に離れていってしまった子も少なからずいるかもしれないですけど、またお互いこのコロナに耐えてきた頑張ってきた時間があったからいい景色が見れたよねっていう日を僕らも必ず作りたいと思ってるし、みんなも必ず力を貸してほしいと思ってるし、これからもそういう付き合いをしていきたいなと、強く思っているので、しっかりと一緒に寂しがっておきたいですね。ちゃんと会いたいな、会いたいなって言いながら、次会える日を待ちたいなと思っています。お互いのことを忘れずに遠距離のカップルみたいな感じで飽きることもなく、ネット上にはなってしまいますが、好きってお互い言いながら、その時のためにお互いフォローアップしてね、より強い愛を育むために頑張りましょう・・・って感じですかね。

ライブ情報

ドラマストア4th Mini Album「Invitations」リリースツアー
「可愛い子にはワンマンさせよツアー」

【延期公演】10/17(土)大阪:梅田CLUB QUATTRO

開場:17:30/開演:18:00
チケット:
【全自由】¥3,500(ドリンク代別)
【全自由】¥5,000(Invitationsスペシャルセット付き / ドリンク代別)

【配信】¥2,000
【配信】¥3,500(Invitationsスペシャルセット付き / ドリンク代別)

【延期公演】11/18(水)東京:渋谷TSUTAYA O-EAST

開場:18:00/開演:19:00
チケット:
【全自由】¥3,500(ドリンク代別)
【全自由】¥5,000(Invitationsスペシャルセット付き / ドリンク代別)

【配信】¥2,000
【配信】¥3,500(Invitationsスペシャルセット付き / ドリンク代別)

詳細はこちらから

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