三浦大知の「飛行船」の話の前に

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ブログで作品を取り上げると、ついつい褒め言葉のインフレーションが起こりがちである。

・過去最高
・圧倒的なクオリティ
・唯一無二の世界観
・他を寄せつけない存在感

褒め言葉の常套句を引っ張り上げたら枚挙にいとまがない。

いや、もちろん嘘を言っているつもりはない。

ひとつひとつの作品に対しては、素直に「素晴らしい」の想いを込めている。

でも、撒き散らした褒め言葉をひとつひとつ拾い上げてしまったら、褒め言葉のインフレーションを起こしてしまっていることに気づいてしまうのだ。

本当に<他を寄せつけない存在感>とまで言うべき内容だったのか、みたいなことはどうしても起こってしまうのである。

自分における<本当に凄い>とは、一体何だったのだろうか、と思ってしまうこともあるわけだ。

・・・なんてことを勝手ながらに反芻してしまっている自分がいたのが、ここ最近。

しばらくは安易にそういう類の褒め言葉を作品やパフォーマンスに投げないでおこうかな・・・なんてことを考えていたのだった。

そんな矢先に、ある動画と出会うことになる。

三浦大知 – 飛行船 / THE FIRST TAKE

自分は三浦大知の作品の中でも特に「飛行船」が好きで、そんな「飛行船」のTHE FIRST TAKEともなれば、視聴するの一択しかない。

しかも、ただのTHE FIRST TAKEではない。

なんと、ライブツアーを共に回る最高峰のダンサー6名と「THE FIRST TAKE」史上初となる”一発撮りダンスパフォーマンス”なのだ。

THE FIRST TAKE初のダンスパフォーマンス。

しかも、THE FIRST TAKEはソニー・ミュージックエンタテインメントが管理しているコンテンツのため、ソニーに所属していない三浦大知がTHE FIRST TAKEに出演するというのも、けっこうな<例外>といえそうな状態。

逆に言えば、それだけ気合いの入れたパフォーマンスになっているとも言えるわけだ(事務所とかの関係性で行われる、プロモーション先行の動画というわけではないから)。

とは言いながらも、TVパフォーマンスを中心に、常にダンスパフォーマンスで大きな話題を集めた三浦大知である。

どうしても、期待値は大きくなる。

そもそも、冒頭で述べたような<褒めの言葉>を、全てパフォーマンスで覆し、体現してきたような人間である。

インフレーションしたはずの言葉を、文字通りに置き換えてきた(と自分では思っている)数少ないアーティストなのだ。

そんあ三浦大知のパフォーマンスが、どんなものになっている。

果たして、その完成度はいかなるものか。

期待はいろんな想像を組み立てることになる。

そして、動画を観た。

・・・思った。

三浦大知は、どこまでも三浦大知だった、と。

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三浦大知 – 飛行船 / THE FIRST TAKE の話

ボーカルの魅力

やはり、最初に特筆すべきは、アグレッシブなダンスを披露しているのに、一切ボーカルが乱れない三浦大知のパフォーマンスであろう。

この<歌いながる踊る>あるいは<踊りながら歌う>においては、三浦大知の安定感は日本一といってもいいのではないだろうか。

6人のダンサーと動きをシンクロさせながらも、メリハリをつきながら甘い歌声を解き放つ。

物語性の強い「飛行船」の言葉の意味もきちんとボーカルで浮き彫りにさせながら、丁寧かつ大胆に歌い上げていくのである。

なので、変な言い回しになってしまうが、ダンスを観なくても成立する動画になっていたのだ、このTHE FIRST TAKEが。

ボーカルが安定しているから、耳だけで聴いても、そのワクワクが削がれることは一切ない。

いわゆる<映像のない音楽>としても、高いレベルで完成されていることに気づくわけだ。

こういう魅せ方もできるのは、三浦大知だからこそだよなあと思うし、ボーカリストとしても技術を研ぎ澄ませてきたからこその境地と言えそうだ。

ダンスの魅力

当然ながら、ダンスも魅力的である。

引きの映像と寄りの映像を丁寧に使い分けることで、ダンスの躍動感がダイレクトに届く。

ところで、三浦大知(とそのチーム)のダンスが素晴らしいのは、動きの止めが綺麗だからだ。

ピタッと動きを止めるところで綺麗に動きを止める。

動き出しと動き終わりの表現が的確で、ボーカルが乱れないのと同様、動きにおいても一切の乱れが生じない。

だからこそ、ダンスの躍動感が際立つし、フォーメーションを作るときの<描き>も美しくなる。

「飛行船」において特にダンスが激しくなるのは間奏の部分だけど、「飛行船」のアレンジってけっこう独特で、この間奏の部分では打楽器(リズムを打つパート)がなくなる構成になっている。

尺八のような和楽器がメロディーを紡ぎ、鍵盤がコードを紡いでいく、そんな構成になるのだ。

間奏では他のパート、音の集まり方が変わっている、と言ってもいいかもしれない。

それにより、音全体にも変化が生じる。

今回の動画でよくわかるのが、間奏のパートだと、ダンサーが一斉に足音を鳴らすときの音もダイレクトに伝わっているというところ。

間奏で音を削いでいるからこそ、こういう部分の音mもクリアに聞こえてくる。

で、ポイントなのは、本来であれば楽器ではないはずの音すらも演出に変えていっているということ。

ダンサーの足の音が間違いなく演出の中に組み込まれていき、ダンスの躍動感にシンクロしていく。

こういう部分でも<魅せていく>辺りに、三浦大知(とそのチーム)のダンスの真骨頂が際立っているように思う。

まとめると・・・

この<細かい音が聞こえる>も動画における高揚感に大きく繋がっているなあと思っていて。

それが「飛行船」のTHE FIRST TAKEの<一発撮りだからこそのかっこよさ>を際立たせている。

この人たちにしかできないやり方で、この人たちだからこそのパフォーマンスを最大限に引っ張り上げていく。

そりゃあこんなのかまされたら「凄い・・・」の言葉しか出なくなるよなーと思うわけである。

全体のまとめ

個人的にぐっときたのは、この動画のコメント。

というのも、日本のファンのみならず、英語を中心に海外の言語でのコメントがたくさんあったのだ。

三浦大知というアーティストの素晴らしさが、国を越えて伝わっている瞬間を、このコメントから垣間見ることができて、勝手ながらにそこにジーンをきたのである。

三浦大知は、日本のみならずもっと広いフィールドで評価されるべきアーティストだと思っている。

だからこそ、こういう形で少しでもたくさんの人に届くことは、素晴らしいなあとただただ思ったのである。

しかも、「飛行船」という素晴らしい楽曲のパフォーマンスだからこそ、なおのこと。

褒めのインフレーションを変えていく先にある、唯一無二の音楽を生み出す人間のパフォーマンスだと思うからこその喜びなのだ。

末永く、凄いパフォーマンスが純粋な形で色んな人に届いたら良いなあと、改めてそんなことを思うのである。

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