BUMP OF CHICKEN「アリア」について

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『アリア』というタイトルは旋律のariaなのか、
それとも空気のariaなのだろうか。

音楽のタイトルなのだから旋律と捉えるのが自然ではあるが、私はこの曲の歌詞の行間にある、歌詞としては表していない見えない空気感を指しているように思えるのだ。

吹奏楽部の高校生を主役にしたTVドラマ『仰げば尊し』の主題歌として作られたこの楽曲は青春時代の瑞々しさ、幼さ、純粋さ、迷い、別れを多分に含んでいる。

「僕らはおそろいの服を着た別々の呼吸 違う生き物」これは制服のことだと思えるし「夕焼けとサイレン 帰り道」これは帰りの通学路のことだと捉えればしっくりとくる。

10代にとっては現役ではあるが、もう少し大人の世代にとってはノスタルジックな要素を多分に含んだ音楽性は藤原基央の得意とする分野のひとつでもあると言えよう。

このようにごくパーソナルな個々の郷愁に彼の歌は容易に触れてくれるからこそ、青くさくもリアル感のある
“ざわめきにのまれて迷子になった些細な溜息”
“気持ちの側まで近付けるのに同じにはなれなかった言葉””もう痛まないけど直らない傷”も自分が抱いた感情とシンクロするのではないかと思う。

さて、アリアとはそんな懐かしい風景と青くさくピュアな感情をどう導いた歌なのだろうか。

「あの日の些細なため息は
ざわめきに飲まれ 迷子になったよ」

初めに登場するのは、ため息だ。

それもありふれた類い、日常と言っているくらいだから、ため息をつくのはこの曲の主役である”僕”にとっては当たり前な光景らしい。

さらには

「言葉は上手に使ったら気持ちの側まで
近付けるけれど同じものにはなれない
抱えているうちに 迷子になったよ」

と、またしてもなんだかネガティブである。

藤原基央はインタビューなどでよく“どんな言葉を選んでも、感情に一番近い服を着せたものが言葉なのであって、感情そのものを完璧にあらわすことはできない”というようなことを言っているのだが、まさにその事だと感じる。

そして、そんな体験は私たちの日常生活でもままあることでもある。

想いやって共感したつもりでも、痛みは二等分できないのだ。

言葉を尽くしても同じものにはなれない君、おそろいの服を着ていても別々に呼吸をする違う君。

君と僕は違うものなのだ、という事実が並べられていく。

それでも、他人だからこそ

「見つけたら 鏡のように 見つけてくれた事
触ったら 応えるように 触ってくれた事」

という事実が愛しいのだ。

同じじゃないのに見つけてくれること、応えてくれること、そんな小さなことが愛おしいのだ。

そんな二人は鏡のように映しあって日常を過ごしてきた過去があったのだ。

さらには、二番では「名前を呼んでくれただけで 君と僕だけの世界になったよ」とまで歌っているが、それにもかかわらず、その直後には「僕らの間にはさよならが 出会った時から育っていた」と繋がっていく。

どんなに愛しいか、どんなに幸せだったかを行間にたっぷりと含ませておきながら、次には”出会った時からさよならが育っていた”と極度のネガティブさを展開するのである。

ため息をつきながら、迷子になりながらも築かれていった二人だけの世界、そしてそれは終わることが決まっているという現実。

この曲から感じる圧倒的な寂寥感は、上述したとおり君と僕の絆が確かに育っていたからこそ色濃く感じるのだと思う。

「さよならが 出会った時から育っていた」
「笑うから 鏡のように 涙がこぼれたよ」
「冷えた手が 離れたあとも まだずっと熱い事」

このように対比する言葉を選んだのも、全ては表裏一体であるということ─

鏡のように反転して写しあっていること─。

悲しさや寂しさといった感情でさえどれも二人で共鳴しあった愛しくて大事な記憶なのだと思う。

そしてそのすべてが形のないもの─

ため息も、さよならも、ざわめきも、君と僕だけの世界も、全てがそこに漂う空気感=アリアの中での出来事なのだ。

そういえば、アリアのジャケットは2016年ツアーBFLY日産スタジアムの光景を円形にしたデザインだが、一見すると瞳のようである。

アリアの歌詞中に

「見つけたら鏡のように 見つけてくれた事」
「見つめ返せなかった まっすぐな瞳」
「見つめ返せなかった 忘れたくなかった」

このように”見つめる瞳”と”見つめ返せなかった瞳”が存在していることは偶然ではないと思う。

そして、アリアのジャケットの瞳はこちらをまっすぐに見つめている。

まるで、鏡のように。

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筆者紹介

ちょの(@nagitan2)

BUMP OF CHICKENを愛する千葉県民。 地味で臆病でマジメだと思って生きてるが、リア友にはトガってて大胆でおもしろ変人と言われる謎。ビールが好き。

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