スピッツの「夢じゃない」について書いてみたい。

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作詞:草野正宗
作曲:草野正宗

1番の歌詞について

まず、最初に頭に浮かぶのが「暖かい場所」ってどこだろう?という疑問である。

「暖かさ」とは、物理的なものを指しているのか、それとも精神的なものを指しているのか。

それで、その後の歌詞の受け止め方も大きく変わってくる。

仮に「物理的な暖かさ」を指しているのだとすれば、「暖かい場所」とは、「常夏の島」みたいなものを連想することになると思う。

一方、「精神的な暖かさ」を指しているのだとすれば、「暖かい場所」とは、君の側にいるみたいなことを連想することになると思う。(気温的な意味での暖かさと人肌的な意味での暖かさで違いがあるとも言える)

ただし、「最後の離島」というフレーズからもあるように、もしかしたらその二つのイメージを込みにして「暖かい場所」という表現を使っている可能性もある。

次に出る疑問が、じゃあ「最後の離島」の「最後」とはどういうことなのか?ということである。

これは、君という「暖かい場所」を見つけることができたから、この歌の主人公は島から島へと漂う必要がもうなくなったということを意味しているかもしれない。

であるならば、なぜ君と落ち合う場所を「離島」と表現しているのかも疑問になってくるし、そう簡単には意味づけできないことがわかる。

とりあえず、ここは置いといて、次のフレーズをみていくと「同じリズムで揺れてるブランコ」というフレーズが出てくる。

これもパッと見るとなんだかよくわからないフレーズであるが、「同じリズム」という言葉から、穏やかなイメージだったり、秩序立っているイメージだったり、安心や安定をイメージするフレーズになっている気がする。

だから、あくびをしちゃいたくなるくらいに浮舟を漕ぐわけだ。

このフレーズは最終的に「君」に繋がるわけだが、これらのフレーズから「君」は純粋無垢な存在だということ、とてもピュアな存在として描かれていることがわかる。

後ろの歌詞を見ればわかるが、一方、主人公は醜さや汚れ、歪さををイメージさせるキャラクターとして描かれていることがわかる。

君と僕は対象的な存在なのである。

言わば、美女と野獣のような感じ。

また、サビをみるとわかるが、夢じゃないし孤りじゃないのは君が側にいる限り、と限定していることがわかる。

逆に言えば、君がいなくなると、それは夢になるし、主人公は孤りになってしまうわけだ。

それくらい、主人公にとって君という存在は大切であり、だからこそ、そんな君を僕は守りたいと言うわけだ。

ただし、そんな君を守る力のことを「いびつな力」と表現してしまうところに、ある種の歪みが見え隠れする。

だって、君を守るという気持ちはすごく真っ直ぐなものであるし、ピュアなものであるはずなのだ。

ならば、わざわざ「いびつ」なんて形容詞を使わなくてもいいはずである。

君に優しい言葉をかけておけば、簡単に股を開いてくれる、だから君に優しくするんだ、みたいな論理展開ならば、「いびつな力」と表現してもいいはずである。

けれど、今のところ、主人公はそんな邪な奴には見えない。

なぜ君のために使う力が「いびつ」になるのだろうか?

そこに疑問を持ちながら、続いて2番の歌詞を考えていきたい。

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2番の歌詞

丘っていうのは人生の縮図でいう苦難的なモチーフだと思う。

山あり谷ありで言うところの丘だと思うのだ。

じゃあ、その後に見る「いつか見た景色」とは何だろうか?

苦難の先に見る景色なのだから、幸せに感じる景色という想定はできる。

この歌の主人公にとって、それは君と巡り会えたことに他ならないわけで、それを裏付けるかのように「君にうもれていた」というフレーズを連呼する。

ただ、「いつか見た」という言葉からもあるように、過去にも同じような景色を見たことを匂わせる。

もしかすると主人公は、昔は純粋に人を愛していたのだが、大人になっていくなかで人を簡単に裏切ったり、浮気をしたら、身体だけの関係になってそのままその人をやり捨てたりするような大人になってしまったのかもしれない。

けれど、君と出会って、純粋に人を愛する気持ちを取り戻したのだ。

そう考えると、1番で出てきた「離島」というのは恋人のモチーフであり、今まではすぐに他の人に乗り換えていたけれど、君を最後の恋人にしようと思った、死ぬまでこの人のことだけを愛そうと本気で思ったからこそ、君のことを「最後の離島」と表現したのかもしれない。

また、今回の歌詞でも君に魅力されることを、「魔法」と表現しているが、これは草野歌詞におけるお家芸みたいなものである。

草野歌詞における「魔法」という言葉は、非常に収まりの良い言葉なのである。

さて、サビの歌詞は一番とまったく同じフレーズである。

このフレーズを繰り返すことで、主人公にとって君がどれだけ大切なのかが述べられるわけだ。

3番の歌詞について

基本的に一番と同じフレーズの繰り返しなわけだけど、ワンフレーズだけ初登場のフレーズがある。

それは「汚れない獣には 戻れない世界でも」だ。

当然ながら、汚れない獣とは主人公のことであろう。

ただ、汚れた獣ではなく、汚れない獣、と表現しているのがすごくポイントである。

汚れた獣とかなら、意味がすーっと入ってくると思うのだが、「汚れない」とはどういうことだろうか?

もう汚れまくったからこれ以上は汚れないということなのか、君に出会ったから「もう汚れない」ということなのだろうか?

仮に後者であるとすれば、「戻れない世界」とは何を指すのか?

論理的に考えるなら、恋人にひどいことばかりしていて「汚れたことをしていた自分がいた世界」のことだろう。

そういや、サビの末尾を「守りたい」という言葉で括っているが、それは君のことを指している、という根拠はどこにもない。

実は守りたいのは「君といるこの世界」だけであり、本質的には自分本意の欲望の可能性だってあるわけだ。

だからこそ、その力のことを「いびつな力」と形容しているのかもしれない。

ピュアなようにみせて、どこか邪さも感じさせるからこそ、スピッツの歌詞は人縄筋ではいかないわけである。

そもそも、君がいる限り夢じゃない、というのも変なフレーズである。

君がいなくなると、何が夢になってしまうのだろうか?

そして、この主人公にとって夢じゃないこととは何なのか?

この歌は簡単に意味がわかりそうで、実は考えれば考えるほど路頭に迷ってしまう。

そんな歌詞なのである。

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